独自発見した分解菌による
1,4-ジオキサンの生物処理プロセスを構築

実化学工場排水の高効率な処理方法を実証中

2017年11月17日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社 (社長:村田誉之) は、2015 年に当社が独自に発見した分解菌を用いて、排水中の1,4-ジオキサン※1 を排水基準以下まで安定的に処理するプロセスの構築に成功しました。また、本プロセスによる性能を検証するため、稼働中の工場排水を用いた長期検証を行っており、実用化の前段となる本実証実験※2 を経て、2018 年度中を目標に実用化する予定です。

 1,4-ジオキサンは、一般的な排水処理法の活性汚泥法や活性炭吸着法では処理が困難なため、これまでは複数の酸化剤を併用する促進酸化法などの化学的処理が行われてきましたが、コストがかかり環境への影響が大きいといった課題がありました。
 今回、当社が発見した1,4-ジオキサン分解菌(Pseudonocardia sp. N23 株)は、現在、認知されている分解菌の中では最も分解速度が速く、分解可能な1,4-ジオキサン濃度の範囲が非常に広いという特徴があります。この分解菌を用いた処理プロセスを検討した結果、バッチ式の生物処理プロセスにより、従来技術が抱えるこれらの課題を解決することが可能となりました。

本処理プロセスの特徴は、以下に示す通りです。

  1. 11,4-ジオキサン濃度が数mg/L から数百mg/L までの幅広い工場排水に対応することができます。
  2. 2上記の濃度範囲の1,4-ジオキサンを、24時間以内に排水基準値:0.5mg/L 以下まで処理することができます。
  3. 3分解菌(Pseudonocardia sp. N23 株)は、排水中に含まれる1,4-ジオキサンだけでなく、1,3-ジオキソラン等の環状エーテル類など難分解性の化学物質も分解するため、有機物による水質汚濁の指標である化学的酸素要求量(COD)も大幅に低減することができます。
  4. 4本処理プロセスは、代表的な1,4-ジオキサンの処理法である促進酸化法と比べ、処理に伴うLCCO2(ライフサイクルでのCO2 排出量)で50%、ランニングコストで50~75%の削減が見込まれます。

 本排水処理法の実用化に必要な分解菌の大量培養と製剤化については、すでに開発を完了しており、本技術の適用範囲を拡大すべく、バッチ式処理法に加えて連続式処理法についても開発を進めています。

 今後、当社はこれらの技術を用いて1,4-ジオキサンを始めとする難分解性化学物質を含む工場排水を効率よく、低コストで処理可能な施設の早期実現を目指します。

  1. ※11,4-ジオキサンは、人の健康に係る被害を生ずる恐れがあるとして、2012年に排水基準の規制対象に追加された有害物質で、主に化学工場の排水に含まれています。非常に安定した分子構造のため生分解性が低く、物理吸着性も極めて低いことから、分解が困難な化学物質として知られています。
  2. ※2本実証実験は、国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)(課題番号:AS2715159U)の助成を受けて、大阪大学及び北里大学と共同で実施しました。
独自発見した分解菌による1,4-ジオキサンの生物処理プロセスを構築
独自発見した分解菌による1,4-ジオキサンの生物処理プロセスを構築