芝生育成環境シミュレーションシステム
「T-Heats® Turf」の機能を改善

夏期の芝生品質向上のための換気計画を適切に立案

2017年10月18日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:村田誉之)は、この度、日射、風、気温、湿度といった芝生育成環境に関する総合的なシミュレーションシステム「T-Heats® Turf」の機能を改善しました。これにより、シミュレーションの予測精度向上、時間短縮に加え、スタジアム形状を踏まえた芝生品質向上のための換気計画を適切に立案することが可能となります。

 近年、スポーツスタジアムでは、収容人数の増加に伴うスタジアムの大型化や施設の多目的利用のための観客席上部への屋根設置など、スタジアム形状が、芝生面への日射量や風通しに及ぼす影響が大きくなってきています。そこで当社は、2015年に「T-Heats® Turf」を開発し、スタンド配置による開口部や屋根設置等のスタジアム形状設計に利用してきました。

 従来の「T-Heats® Turf」では、日射やスタンド等からの輻射による熱放射解析と同時に芝生表面の熱収支解析を行い、さらにスタジアム内外の気流・温湿度解析を手作業で連成させながら順次行っていました。今回の機能改善では、上記の解析を自動的に連成させて実行させることで、全ての環境要素が相互に影響する、より現実に近い状態を短い時間で解析できるシステムを構築しました。これにより、芝生コンディションを維持するために重要な指標の1つである芝生表面温度分布※1を、スタジアム内での気流、温湿度分布を考慮して予測することが可能となりました。

 「T-Heats® Turf」の機能改善により、以下のような検討が可能となります。

  1. 1スタジアム設計段階での芝生育成環境への影響を検証
    本システムは、シミュレーション精度の向上だけではなく、モデル作成を含め従来週単位であった計算時間が約5分の1程度に短縮され、スタジアム設計段階において形状変更により芝生育成環境に及ぼす影響を繰返し検証することが可能です。
  2. 2既存スタジアムの芝生品質改善を検討
    夏期の風通しの悪さや芝生表面の高温状態など、芝生育成に不適切な環境などが点在するような既存スタジアムに対し、本システムではグラウンド内の芝生品質に影響を及ぼす環境を詳細に把握でき、その要因を検証して対策案を立案することが可能です。
  3. 3維持管理段階での芝生専用大型送風機の運転計画を立案
    本システムにより、芝生専用大型送風機の首振り運転によるグラウンド上での風の変化を捉え、送風機の活用で芝生表面温度がどの程度低下するかを検討できるため、送風機の適正配置や省エネルギー運転計画の効果的な立案が可能です。

 今後、当社は本技術の活用により、計画から維持管理まで一貫した適切な換気計画を立案し、芝生品質の向上および維持管理業務の軽減に向けた技術提案などを積極的に進めていく予定です。

  1. ※1夏期に芝生表面温度が上昇すると、高温障害により根系の活性が低下し芝が衰退するため、健全に育成させるための維持管理コストが増加するとともに、踏圧に対する耐性の低下やスパイクのかかり具合が悪くなる等の品質低下が生じます。
芝生育成環境シミュレーションシステム「T-Heats® Turf」の機能を改善
芝生育成環境シミュレーションシステム「T-Heats® Turf」の機能を改善