生物多様性向上に向けた緑地計画ツール
「森コンシェルジュ」を開発

地域の環境向上に貢献する緑地の創出を実現

2017年7月4日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:村田誉之)は、生物多様性向上に配慮した緑地の創出を実現する計画ツール「森コンシェルジュ」を開発しました。本ツールの活用により、生物多様性の向上を目指す計画地に対し、最適な緑地の構成要素を速やかに提案することが可能となります。

 近年、緑地計画において、生物多様性に対する要望が高まっており、緑地の創出に使用する植物の構成についても、地域本来の生態系を乱さないよう、在来種※1の活用を求められるケースが増加しています。しかし、地域での緑地計画にあたり在来種について容易に得られる情報は、いわゆる「鎮守の森」※2に生育する植物構成が中心であるため、植物の種類を選択する際の自由度が制限されていました。
 そこで、当社では、裸地から「鎮守の森」ができるまでの過程で見られる多様な植生及びその主な植物の種類を地域ごとにデータベース化し、地域性に考慮した植生やそこに用いる植物の種類を、迅速に提案できる緑地計画ツール「森コンシェルジュ」を開発しました。このツールに、緑地計画地の住所とその要望(森を創りたい、草地を創りたい、生垣を創りたい 等)を入力すれば、瞬時にそれぞれ最適な構成要素となる植物を提案することができます。

「森コンシェルジュ」の特徴は以下のとおりです。

  1. 1地域に適した植物の種類を容易に選定し、地域性に配慮した緑地計画を実現
    地域によって異なる「鎮守の森」ができるまで(植生遷移※3)のプロセスを踏まえることにより、その地域に適した植物の種類を容易に選定できることから、地域性に配慮した緑地計画の策定が可能となります。
  2. 2様々な緑地構造を創出し、多様な生態系を構築
    植生遷移の考え方を用いることにより、草地、落葉樹林、常緑樹林など、様々な構造の緑地を計画することができ、より多様な生態系を構築することが可能になります。
  3. 3緑地計画を迅速に提案
    当社独自の植生遷移を踏まえた在来種に関するデータベースの活用により、緑地計画の迅速な提案が可能です。

 今後、当社は、本ツールをさまざまなプロジェクトで積極的に展開することにより、地域に適した多様な緑地の創出を支援し、豊かな生物多様性を備えた社会の実現を目指してまいります。

生物多様性向上に向けた緑地計画ツール「森コンシェルジュ」を開発
  1. ※1在来種
     ある地域に従来生息・生育している固有の植物の種類。
     地域の固有の種ではない「外来種(植物の場合は帰化植物ともいう)」に対して用いられます。一般的に、災害や人為などによって壊れた自然の回復には、気候風土に合っているこれらの種類を用いるのがよいとされています。
  2. ※2鎮守の森
     日本において、神社と一体になって祀られてきた境内の森。
     古くからその姿を変えずに保存されてきたと考えられており、その森林の植生はその地域本来の植生、すなわち人為的な影響を受けていない植生を残しているものが多いと考えられています。
     自然本来の姿の破壊が進んでしまった現在では、鎮守の森がその地域のかつての自然を知るための数少ない手掛かりとなっていることが多いのが実情です。
生物多様性向上に向けた緑地計画ツール「森コンシェルジュ」を開発
  1. ※3植生遷移
     植物の群落が時間とともに一定の方向性をもって変化していくこと。
     植物の群落は、周囲の環境と互いに影響しあいながら変遷(遷移)していきます。その変遷の最終段階である極相林では、群落と環境の間に一種のつり合いのとれた状態が成立し、群落は安定して構造や組成が変化しないようになります。