「坑内回収型上向きシールド工法」を開発

地下埋設物の影響を受けず、連絡立坑の築造が可能

2017年2月2日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:村田誉之)は、共同溝や下水管渠などの地下埋設物の影響を受けず、連絡立坑の築造が可能な「坑内回収型上向きシールド工法」を開発し、この度、施工現場に適用しました。
 従来の上向きシールド工法は、本線シールドトンネルから掘り上げてきた掘進機を連絡立坑の最上部に到達後、地上部からクレーンなどにより吊り上げて回収し、本線シールドの発進立坑まで運搬・搬入して次の上向き掘削に再利用していました。(図-1)しかし、施工区間の立坑到達部の上部に迂回できない地下埋設物などがある場合には、地上部から回収作業を行うための上部空間が確保できず、上向きシールド工法を用いた連絡立坑の施工は困難でした。
 そこで当社は、上向きシールド工法を適用した工事で、地下埋設物の影響を受けず、到達後に掘進機を本線シールドトンネル坑内に吊り下して再利用する「坑内回収型上向きシールド工法」を開発しました。

 本工法に用いる掘進機は、先端部のカッターおよびカッター駆動部を一体化した内筒部と、駆動部を収める外筒部から構成され、掘進機が連絡立坑の最上部に到達後(図-2・左)、ピン構造で接続された内筒部と外筒部を切り離し、先に内筒部を本線シールドトンネル坑内に吊り下ろして回収し、引き続き外筒部も分割して吊り下ろして再利用します。(図-2・右)

本工法の特徴は以下のとおりです。

  1. 1地下埋設物の影響を受けずに連絡立坑を築造することが可能で、地下埋設物下部の狭隘な空間でも掘進機の解体・吊り下ろし作業ができます。
  2. 2掘進機を内筒部および外筒部に容易に分割解体でき、チェーンブロックなど簡易な吊り下し装置を用いて、本線シールドトンネルまで吊り下して回収した後、トンネル内軌道上を次の発進立坑まで移動して再利用するため、工事費を低減できます。
  3. 3外筒部の寸法を変更することで、掘削径を任意に変更することができ、下水道や共同溝など使用目的に見合った内径の連絡立坑を築造することができます。

 また、本工法を、大阪市の新今里〜寺田町幹線下水管渠築造工事で連絡立坑3本の構築に適用し、施工を完了しました。
 今後、当社では、掘進機が自ら降下して本線シールドトンネル内に戻るなどの機能拡張や施工性の向上を図り、従来施工が困難であった地下埋設物が多い地点での立坑築造に対して適用を進めていく予定です。

  • 連絡立坑:
    下水の流入や作業員が共同溝など本線シールドトンネルへの出入りに用いる立坑で、使用用途に応じて適切な掘削径で構築される。
「坑内回収型上向きシールド工法」を開発
「坑内回収型上向きシールド工法」を開発