集合住宅を模擬した『床衝撃音実験施設』が完成し、運用開始

振動特性の異なる2つの実験室を併設し、床仕上げ材などの性能を評価

2017年1月31日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:村田誉之)は、技術センター内に業界初となる集合住宅を模擬した『床衝撃音実験施設』を完成させ、この度、運用を開始しました。この実験施設は、実際の集合住宅と同じ規模、構造で造られた、振動特性の異なる2種類の実験室を併設し、床衝撃音に対する床仕上げ材などの仕様を容易に変更でき、部材や工法の性能を評価することが可能です。

 集合住宅では、上階の居室から発生する衝撃性の騒音(床衝撃音)が問題となることがあります。特に、重量床衝撃音は居住への影響が大きく、床にカーペットを敷くなどの簡単な対策では効果が得られないため、床仕上げ材や天井仕上げ材などの対策が不可欠となります。しかし、仕上げ部材の性能を確認する場合、重量床衝撃音がコンクリート床の寸法や床を支える梁や柱など建物構造に大きく影響を受けるため、これまでは実際の集合住宅の建設現場で検証する必要がありました。

 そこで当社は、実際の集合住宅と同じ規模や構造で、異なる振動特性を持つ2種類の実験室を用い、建設現場と同様の条件で床仕上げ材などの性能を比較検証できる『床衝撃音実験施設』を構築し、運用を開始しました。

『床衝撃音実験施設』の主な特徴は以下のとおりです。

  1. 1実験施設では、実際の集合住宅と同じ規模・構造を模擬し、実際の建物と同様の重量床衝撃音を発生させることができ、実際の集合住宅で実験を行わなくても床仕上げ材などによる重量床衝撃音対策工法の開発や対策効果の確認などの検証を効率的に行うことができます。
  2. 2実験施設では、建物構造により異なる振動特性を持った床衝撃音の発生に対応するため、2種類の実験室を備えています。躯体の床には、通常の鉄筋コンクリートスラブと、当社と株式会社栗本鐵工所が共同開発した振動低減スラブ「T-Silent Slab」を採用し、同一の床仕上げ材による重量床衝撃音対策などの効果を確認、比較することができます。

 今後、当社では、本実験施設を快適な居住空間の構築を目指した床衝撃音対策工法の開発だけでなく、設備機器や地下鉄軌道などからの振動により発生する固体伝搬音の低減工法の開発にも活用していきます。

集合住宅を模擬した『床衝撃音実験施設』が完成し、運用開始
  • 振動低減スラブ「T-Silent Slab」
     当社と株式会社栗本鐵工所が共同で開発した振動を低減する中空スラブで、中空部に粒状体の袋が挿入されている。粒状体袋による振動(質量(粒状体)、バネ(袋)、抵抗(粒状体中)からなる振動系)がコンクリートスラブの振動とは逆向きに作用する機構によって対象とする周波数の振動を減衰し、床衝撃音や固体伝搬音を低減させる仕組みである。振動系に粒状体を用いることで、より広い周波数帯域にわたって低減効果を発揮する。
重量床衝撃音実験施設の仕様
実験施設全体寸法 奥行9.5m×幅13m×高4.5m(実験室2室合わせて)
構造 鉄筋コンクリート造ラーメン構造(柱と梁で構造の枠組みを作る構造)
床面積 6m×6m/1室
適用スラブ A室/通常コンクリートスラブ
B室/振動低減スラブ「T-Silent Slab」