防火扉の開閉障害を解消する
『加圧排煙用薄型圧力調整ダンパー』を開発
防火対策の合理化と安全な避難を実現
2016年3月30日
大成建設株式会社
大成建設株式会社(社長:村田誉之)は、火災発生時において防火扉の開閉障害を解消する『加圧排煙用薄型圧力調整ダンパー』を開発しました。これにより、避難者が付室の防火扉をスムーズに開放して、付室へ迅速に避難することが可能となります。
現在、15階建以上の建物には、避難スペースや消防活動拠点となる付室が避難階段の手前に設置されており、この付室への煙の侵入防止対策として、加圧排煙設備の設置が有効であるとされています。加圧排煙設備は、給気ファンにより付室内に空気を送り込み、圧力を高めることで、廊下から付室内への煙の侵入を防ぐ仕組みですが、廊下と付室間の防火扉に過剰な圧力がかかり、扉が開放しにくくなるという課題がありました。この課題を解消する対策としては、圧力上昇に応じて羽根が回転し、空気流出口を形成する圧力調整ダンパーが有効となります。このダンパーは、平常時は閉鎖状態を維持し、火災時には給気ファンの作動による付室の圧力上昇に応じて羽根が回転して空気を流出させ、扉に掛かる圧力を低減させます。その後、さらに火災が進展して廊下が高温になった時は、給気ファンを作動させた状態でも羽根が閉鎖し、付室内への漏煙を防ぎます。
しかし、こうした従来方式は羽根や回転調整用の錘機構の稼働エリアが大きいため、装置の奥行が50cm程度必要となり、壁内に設置できずに付室の床面積を減じていました。
そこで、当社では、圧力調整ダンパーの羽根を小さくし、さらに羽根の回転機構を工夫することで、壁内への設置が可能な厚さ10cmの『加圧排煙用薄型圧力調整ダンパー』を開発しました。また、この度、圧力上昇に伴う羽根回転機構の作動確認、および一般財団法人建材試験センターの品質性能試験において、本ダンパーの羽根閉鎖時の漏煙防止性能(5m3/m2/min以下)を確認しました。
本ダンパーの特徴は以下のとおりです。
- 1ダンパーの厚さを50cmから10cmとコンパクト化したため、従来できなかった壁内にダンパーを埋め込むことが可能となり、付室の有効スペースが増大します。
- 2本ダンパーは壁埋め込みが可能となるため、従来必要であったダンパーの回転機構を保護する化粧板が不要となり、設置に関わる施工の簡素化やコストが削減されます。
- 3従来は大きな回転羽根を連結して空気流出口を形成していましたが、本ダンパーは2枚1対の小さい羽根で開度を調整できるため、現場の状況に応じて空気流出口の面積を細かく調整することができます。
今後、当社では、合理的な防火対策と安全な避難を実現する装置として、本ダンパーを付室加圧排煙設備が設置されるオフィスや公共施設などに、積極的に提案、適用を進めてまいります。