「信頼性設計法に基づく耐震設計システム」を開発

−地震時の構造物の損傷確率を高精度に短時間で算定−

2015年4月3日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:村田誉之)は、地震時に構造物が損傷する確率を精度よく短時間で算定し、構造物の安全性を評価する「信頼性設計法※1に基づく耐震設計システム」を開発しました。

 設計の想定以上の大地震に対して、構造物の安全性を評価することは、地震防災対策を立てる上で重要です。特に発電施設や公共インフラ施設など、万一地震被害が発生すると社会に大きな影響を与えることが懸念される施設では、想定以上の大地震による構造物への影響を的確に評価することが必要となります。

 現在の構造物の耐震設計には、非常に「まれ」にしか生じない想定以上の大地震による被害を計算する手法として信頼性設計法があります。信頼性設計法では、確率論的方法※2に基づいて地震時の構造物の損傷確率を算定しますが、計算の精度※3を向上させるためには、数万回に及ぶ膨大な繰返し計算を必要とし、多くの労力と時間を要します。そのため、現状の実務設計では部分的に安全係数を用いて簡略化された設計法を適用していますが、この設計法では構造物の損傷確率を算定するのが困難でした。

 今回開発した「信頼性設計法に基づく耐震設計システム」を適用することで、想定以上の大地震に対する構造物の損傷確率を精度よく短時間で算定することが可能となります。

このシステムの特徴は以下のとおりです。

  1. 1大成建設が開発した既往の構造物耐震解析プログラム「TDAP III」に、並列分散処理、統計分析などの機能を新たに整備し、計算処理時間を大幅に短縮しています。例えば従来1か月程度を要する計算を1日程度で実施できます。
  2. 2地震の大きさや地盤、コンクリート材料などの特性のばらつきを考慮し、地震により構造物に発生する力、変形量や構造物の強度などを組み合わせた数万回レベルの計算を高速で繰り返すことにより計算精度を向上させ、構造物の損傷確率を算定します。

 このシステムの適用により、構造物の受ける損傷の度合いから安全性を精度よく評価するとともに、設計条件の様々なばらつきと構造物の損傷確率との関係を分析することで、地震時に構造物の安全性に影響を与える条件などを特定し、合理的な対策を検討することができます。

 今後は、発電施設、公共インフラ施設などの重要な構造物の耐震設計に本システムを適用し、より安全で安心な構造物の構築を目指していきます。

  1. ※1信頼性設計法
    設計対象の構造物が所定の機能を発揮するための信頼度を評価する設計法。地震時の安全性評価では、確率論に基づき地震時に構造物が損傷する確率を信頼性設計の指標として用いる。
  2. ※2確率論的方法
    不確実性や偶然性の高い現象の発生確率を算定するための数学的手法。代表的な手法として、確率論に基づいて数千から数万回の繰返し計算を行い、計算精度の向上を図り、構造物の損傷する確率などを近似的に算定するモンテカルロシミュレーションがある。
  3. ※3計算の精度
    例えば1/100の確率を求めるためには最低でも100回の繰り返し計算が必要で、数万回の繰り返し計算を行うことで数万分の1の確率まで算定することが可能となる。
「信頼性設計法に基づく耐震設計システム」を開発