高密度市街地で威力を発揮する都市型小変位免震を開発

−機械式の免震用切替型オイルダンパーの大臣認定を取得し実用化−

2014年3月3日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:山内隆司)はこのたび、従来の半分程度の小さな免震クリアランス(注1)でも最適な免震効果を発揮する「都市型小変位免震」を開発しました。これにより免震機能を有しながら、都市部など密集した敷地においても、有効に建物を建てたいという建築主の要求に応えることができるようになりました。
「都市型小変位免震」は、揺れの大きさに応じて抵抗力を切替える新開発の「切替型オイルダンパー」により、免震クリアランスを30cm以内に抑え、建築面積を最大限に確保しながら、「大地震時の安全性と建物の機能維持」と「中小地震時の居住者の安心感」を確保する高密度市街地に適した免震構法です。

 一般的な免震建物では、建物の周囲に60cm程度の免震クリアランスが必要ですが、都市部などの市街地では、敷地面積の制約からクリアランスの確保が困難な場合が多くなっています。そのような場合は、免震層のダンパー数を増やして抵抗力を高めて免震層の変位を小さく抑えますが、免震層の動きが制限されるため、発生頻度の高い中小地震に対して、一般的な免震建物と比較して居住性が損なわれるという課題がありました。

 この課題を解決するため、「都市型小変位免震」では、揺れの大きさに応じて自動的に抵抗力が小さな低減衰モードから、抵抗力が大きな高減衰モードに切り替わる「切替型オイルダンパー」を開発しました。
すなわち、発生頻度の高い震度5強程度までの中小地震に対しては、低減衰モードで一般の免震建物と同等の免震性能を発揮し、万が一の震度6〜7クラスの大地震に対しては、高減衰モードに切り替わって、免震層の変位を抑制することで、揺れによる近接建物との衝突を防ぎ、安全性を確保します。「切替型オイルダンパー」は、ダンパー変位が設定変位を超えると機械式のシャットオフ弁がオイル流路の一部を塞ぎ、高減衰モードに切り替ります。「切替型オイルダンパー」は、切替装置に電気などのエネルギー供給を必要としないため、免震装置の能力が発揮される有事の際にも、確実に作動します。また、高機能でありながら電機部品を用いていないため、メンテナンスフリーです。

 「切替型オイルダンパー」は、大成建設(株)とカヤバシステムマシナリー(株)が共同開発し、国土交通大臣の免震材料認定を取得しました(2013年10月23日)。また、地震の揺れの大きさに応じて減衰力の切り替えが可能な機械式の免震用切替型オイルダンパーの免震材料認定の取得は日本で初めてです。今後、銀座や新宿などの高密度市街地を中心に積極的に「都市型小変位免震」の営業展開を行って参ります。すでに今春竣工予定の当社技術センターZEB実証棟へも適用予定です。

切替型オイルダンパー
都市型小変位免震の仕組み
  1. 注1免震クリアランス・・・免震建物の地震時の可動範囲として、建物周囲に確保しておくスペース。一般的には幅60cm程度の確保が必要。