鏡視下手術用空調システム(T-Fogless Flow)を開発

—腹腔鏡の曇りを防ぎ、患者にも執刀医にも快適で効率的な空間を提供—

2012年6月29日
大成建設株式会社

 大成建設(株)(社長:山内隆司)は、腹腔鏡を用いる鏡視下手術に適した空調システム『T-Fogless Flow』を開発しました。このシステムは、従来の手術室空調システムと比べ、患者の身体的負担のみならず、執刀医や看護師の身体的負担や精神的ストレスの軽減に貢献します。

 従来の手術室空調は、医療機器からの発熱を抑えるため16℃から20℃に設定した空気を、衛生度を保つため上部から吹き出すシステムとなっています。しかし、こうした低温の空気にさらされ続けると腹腔鏡レンズが曇り、処置の最適性を確保するために手術時間が延長してしまうことがありました。対策としては、腹腔鏡本体を加温したり、曇り止め剤を塗布したりすることがあげられますが、確実な解決策とはなっていませんでした。また、手術室全体の温度を上げて(30℃程度)手術を行う方法も考えられますが、この方法だと執刀医や看護師の身体的な負担が増え集中力の持続が阻害される危険性もありました。

 大成建設は、「平成のブラックジャック」こと金平永二(現メディカルトピア草加病院院長)先生からの要望を受け、上記の問題点を克服する空調システムを開発いたしました。
本システムは、腹腔鏡を挿入する腹部まわりに高温となる領域を形成することで、腹腔鏡レンズの曇りを防止し、患者への負担を和らげながらも、看護師エリアに快適な手術環境(約24℃)を提供することが可能となります。実際に上尾中央医科グループのメディカルトピア草加病院にて導入され、100件以上(5月末時点)の手術に適用。手術時間の短縮にもつながり、本システムの開発に際し、ご指導ご助言等をいただきました金平院長先生からもご好評をいただいています。
大成建設は、患者にも執刀医にもより快適な医療環境を提供する本システムを、今後も積極的に提案してまいります。

T-Fogless Flowの特長

  1. 1腹腔鏡を曇らせない空調システム
    手術台天井部から吹き出すクリーンな空調空気の一部のみをヒーターにより昇温し、術野(手術する部位まわり、以下同義)である患者の腹部まわりへ温風を当て、腹腔鏡の低温化によるレンズの曇りを防止します。また、曇りによる手術時間延長の危険性を排除することにより患者の身体的負担を軽減します。
  2. 2患者にやさしい空調システム
    患者の腹部まわりへ前述の温風を送風することにより、患者の低体温化を抑制し、患者の身体的負担を軽減します。
  3. 3執刀医、看護師にやさしい空調システム
    術野部分とは温度の異なる低温の空気を吹き出すことにより、執刀医エリアを快適な温度(約24℃)に保ちます。本システムの採用によって、執刀医、看護師の身体的負担、精神的ストレスを軽減することで、正確な手術を支援することが可能となります。
  4. 4術野の陽圧を確保
    高温吹き出し空気の稼働・停止や吹き出し温度調整に関わらず、手術室全体での空調空気量を確保して、術野をプラス圧に保ち、クリーン度を確保することにより、腹腔鏡手術以外にも様々な手術環境に対応可能なシステムです。
T-Fogless Flowの仕組み