大規模・大水深下でも適用可能な空洞充填材の活用

2011年12月6日
大成建設株式会社

 大成建設(株)(社長:山内隆司)は、大規模・大水深下でも適用可能な空洞充填技術「T-PLUS工法」を確立しました。今後、各種海洋工事ならびに震災復旧を含む耐震補強工事への積極的な展開を進めます。

 空洞充填材として用いる可塑グラウトは、もともとシールドトンネルの裏込め注入材料として用いられてきたもので、近年では、構造物直下に発生した空洞の充填等にも用いられています。重力を受けて自然に流動するモルタルや流動化処理土とは異なり、空洞部の上方や狭い部分にも押込まれていくため、未充填部を残しにくいのが特徴です。
当社ではこれに加えて、大規模・大水深下対応として、
・より長い可塑保持時間を確保するために3液混合型の可塑グラウトを配合
・3液を注入孔直前で効率的に混合するダイナミックミキサーを用いた供給システム
を開発・考案。複数の大規模充填実験を経て実用化に至りました。

 代表的な事例として、ボスポラス海峡横断鉄道トンネルで、全長1,400mに及ぶ海底トンネル部の基礎地盤構築に用いました。この工法は、混合前の3液状態では粘性が低く、注入孔直前で混合することで配管での長距離輸送に適した粘度を保持でき、充填中は適度な圧力を加えることで隅々まで充填できるといったメリットがあります。このメリットを活かし、従来手法である砂吹き込み方式やコンクリート充填方式の適用が困難な、水深60mにおよぶ大水深下で、かつ黒海からの強潮流下での施工に適用しました。可塑グラウト部分の施工は、2008年9月に完了しています。
先の震災に際しては、地盤の沈下に起因した地下室の漏水処置に同材料を用いて修復を行った事例もあります。
近年では捨石からなる護岸マウンドの間隙を充填して耐震補強を行う利用方法についても、実物の実験を行い、意図した範囲に充填できることを確認しています。

 この技術は、構造物や護岸、擁壁部周辺などの小規模施工や発電所取放水路等の海洋構造物での活用が可能で、今後需要が高まる構造物の基礎の維持・補修分野、さらには耐震補強工事への適用も期待されており、当社としても積極的に営業展開を進めていきます。

  • 可塑とは、圧力を加えない状態ではそのままの形を保持しますが、適度な圧力を加えた時のみ流動する性状のことを言います。