世界初 圧縮強度300N/mm2 クラスの
超高強度コンクリート実用化

−「大成スーパーコンクリート」を用いた柱の製造並びに
耐火性能の実証−

2011年3月8日
大成建設株式会社

 大成建設(株)(社長:山内隆司)は、このたび、自社のプレキャストコンクリート工場(PC工場)で、300N/mm2クラス(280〜300 N/mm2)の圧縮強度を有するプレキャスト柱の実用レベルでの製造手法を確立しました。実際の火災を模擬した実験による耐火性能についても実証済で、今後の省資源かつ長寿命なサステナブル建築を推進するための先進コンクリート技術 T-RC における最高ランクの製品、技術と位置付け「大成スーパーコンクリート(TAISEI sustainable and permanent concrete)」として、実物件への普及を図ってまいります。

 当社での超高強度コンクリートの施工は、Fc100以上で25,000m3超(超高層建物24棟)、Fc150以上で1,500m3(3棟)など、業界トップの実績を有するとともに、本年1月には、超高層マンションとしては国内初となるFc200のコンクリートを用いたプレキャスト柱の実施工を実現しました。
大成スーパーコンクリートは、Fc200までの超高強度コンクリート技術とはまったく異なる調合・製法とした新しい技術です。大きなブレイクスルーは、コンクリートをより緻密なものとするため、化学反応性を改良した環境配慮型の新しい結合材を開発したことと、従来よりも高温での養生方法を開発したことです。さらに、超高強度コンクリートでは、火災時のコンクリートの爆裂対策が不可欠ですが、従来の有機繊維による対策だけでなく、独自の手法(特許出願済み)を採用することで爆裂防止を図りました。300N/mm2クラスのコンクリートの爆裂対策に関する国内外の研究例はなく、部材製造技術も含めて、その実現及び実プレキャスト部材による実証は世界初となります。

 大成スーパーコンクリートの特長は、

  1. 1強度レベルは鉄の領域に達していますが、鉄と異なり耐火被覆は不要となるため、柱や梁の構造体を仕上げ材で覆うことなしに、軽量かつスリムな構造体コンクリートの素材表面を活かした機能性の高い魅力的な空間を創造できます。
  2. 2現在普及している免震や制振技術と組み合わせることによって、断面が劇的に縮小した超軽量な部材(部材の重量や断面が一般の半分以下)を積極的に採用した省資源かつ長寿命な建築物が実現できます。
  3. 3軽量な部材を多用することにより、建設工事における大型揚重機や部材搬入用大型トラックなどの使用も削減できます。

(1)自社工場におけるプレキャスト部材の製造実証

圧縮強度が200 N/mm2を超える超高強度コンクリートでは、強度増大とともにセメントを含めた粉体状結合材に対する使用水量が減り、それに伴いコンクリートの粘性が極めて高くなるため、部材製造時の施工性の改善が大きな課題でした。また、従来技術である耐火対策用の有機繊維の多量混入は、コンクリートの性能・品質のみならず施工性を大きく損なうことになります。
そこで、セメント以外の粉体成分やその他の使用材料を厳選し、養生方法についても十分な検討・分析を行い、コンクリートの高強度化と施工性ならびに耐火性の全てを満たす製造技術を確立しました。
また、千葉PC工場で、部材断面の最外径400〜600mm(正方形、円形)の実柱部材を、一般のプレキャスト部材の製造と同様に部材を横置きにした横打ちと、約5mの高さからコンクリートを流し込む縦打ちの二つの打設方法で製作しました。コンクリートの充填性・施工品質に関しての検討結果は問題なく、コンクリートの打設時期(季節)や打設方法に関わらず、高品質なプレキャスト部材を製造できることを確認しています。

(2)実部材による耐火性能検証

PC工場で製造した柱部材に対して、実際の火災を模擬した載荷加熱試験を実施しました。実験では、設計で想定される柱の長期許容圧縮荷重(建物重量により柱に加わる設計荷重)が作用した状態で、最高火災温度1000℃を超え、かつ3時間以上の加熱時間という条件で実施したところ、部材表面のコンクリートが爆裂することなく十分な耐火性能を有することを確認しました。コンクリートは水とセメントの水和反応によって強度発現します。通常、コンクリート中には反応しきれずに残った余剰水があり、火災時にはこの余剰水が水蒸気となり、その蒸気圧によってコンクリート表面が爆裂すると言われています。スーパーコンクリートではこの余剰水を一般の超高強度コンクリートよりも低減することに成功しました。

(3)コンクリートの各種構造特性データの整備

スーパーコンクリートを使用する部材は、地震などの外力に対してひび割れを生じさせない弾性設計を基本としますが、長期クリープ試験や乾燥収縮試験などの耐久性評価に必要な各種耐久性試験だけでなく、今後の多様な用途展開(極細または扁平な柱・梁、長スパン床、耐震補強部材など)を視野におき、コンクリートのせん断強度及び曲げ強度、鉄筋とコンクリートの付着強度など、様々な基本構造特性データの整備も進めております。

スーパーコンクリートは更なる高強度化の可能性を秘めており、当社ではスーパーコンクリートを、先進コンクリート技術 T-RC の核となる戦略技術の一つとして位置付け、更なる技術開発並びに実プロジェクトへの適用を積極的に推進します。現在、都内大型プロジェクトを中心として適用物件を検討中です。
また、スーパーコンクリートだけでなく、当社独自の様々な新技術を活用して、環境負荷を低減し持続可能な社会資本の構築に貢献すべく、材料・構造分野における技術開発を加速させる所存です。

  • 300N/mm2とは、1cm四方(サイコロ大)の範囲で3tの重さに耐えられる強度を示します。
  • サステナブル建築とは、建築物のライフサイクルを通して、省エネや省資源などの環境配慮的な視点と、人間生活の質の向上という視点の両者を満たすことができる建築物を言います。構造設計分野では、建築物に使用する材料や部材の省資源化や長寿命化(高耐久)、部材のリユース(再使用)などが大きな視点となります。
大成スーパーコンクリートのプレキャスト柱