超高強度繊維補強コンクリートを世界で初めて鉄道橋に適用

〜 鉄橋とコンクリート橋の双方の利点をもつダクタル橋を推進 〜

2010年9月15日
大成建設株式会社

 大成建設(株)(社長:山内隆司)は、この度、三岐鉄道(株)の「萱生川(かようがわ)橋梁」改築工事で、世界で初めて鉄道橋に超高強度繊維補強コンクリート(UFC)のダクタルを適用しました。

国内の橋梁は高度経済成長期に集中的に整備され、その多くが老朽化による更新期を迎えます。今後は維持管理や更新コストの急速な増加が想定されます。昨今は、鉄橋に比べ高耐久でメンテナンスコストがかからないコンクリート橋のニーズが高くなっています。しかし、活荷重や耐震設計基準の見直し等により、コンクリート橋への更新は、橋桁や橋脚のサイズアップが必要となり、老朽化した橋梁と同じ規格に出来ないケースもあります。

萱生川橋梁は、四日市市の河川改修計画に伴い、既存の鉄橋を更新することとなりました。設計者の全日本コンサルタント(株)は、コンクリート橋への更新を検討していました。関係法令に基いて河川の計画高水位・余裕高と鉄道の既存軌道高を計算すると、橋梁の床版厚を極めて薄くする必要がありますが、コンクリート橋では床版厚が厚くなるため、橋梁前後の軌道を盛土工事で嵩上げしなければならず、更新コストが割高になります。

ダクタルは、圧縮強度が200N/mm2と、通常のコンクリート強度の約7倍あり、高靭性が確保されているため、鉄筋を一切必要としない画期的なコンクリートです。そのためダクタル橋は、床版厚をコンクリート橋より薄く、鉄橋とほぼ同じ厚さにする事が可能です。土木学会『超高強度繊維補強コンクリートの設計・施工指針(案)』において、UFCの標準耐用年数が100年に設定されており、耐久性も極めて高く長寿命で、メンテナンスコストが不要となります。
高耐久でメンテナンスフリーであるコンクリート橋、及び低桁高である鉄橋の双方の利点を活かせるダクタル橋が今回適用されました。

ダクタル橋はコンクリート橋より軽く、鉄橋とほぼ同重量での架け替え更新が可能で、既設の橋脚を使用できる可能性があり、更新コストの低減が期待できます。
また、鉄道通過時の騒音を計測し、三岐鉄道の路線上の同程度の規模で同じ下路桁構造の鉄橋と比較しましたが、対象の鉄橋は無道床のため、条件は多少異なりますが、騒音レベルは鉄橋よりも約10dB小さい測定結果となり、騒音対策でも効果が見られました。

ダクタルは歩道橋や道路橋、桟橋式空港滑走路における床版、建築部材などで採用実績が広がっています。
今回、鉄道橋における適用の第一号が実現されたことで、今後この分野でのUFCの展開を積極的に推進するとともに、維持管理費が少なく高耐久で優良な社会資本の整備に貢献していきます。

工事概要
橋梁名 萱生川橋梁
路線名 三岐鉄道三岐線
施工場所 三重県四日市市
橋長 15.86m(支間長15.70m)
幅員 4.00m
構造形式 単径間PC下路桁橋
発注者 三岐鉄道株式会社
設計者 全日本コンサルタント株式会社
施工者 大成建設株式会社
指導 財団法人鉄道総合技術研究所