マスコンクリート打設温度制御システムの開発

— 冷風・冷水を用いて手順ごとにプレクーリング —

2010年7月20日
大成建設株式会社

 大成建設(株)(社長:山内隆司)は、断面寸法が大きく、セメントの水和熱によるひび割れを生じやすい「マスコンクリート」の打設時の温度管理手法「冷風水プレクーリングシステム」を開発いたしました。本システムは、生コンプラントにおける材料の保管・製造・運搬・打設の各々の過程で、冷風・冷水を使い、打設時の生コンクリートの温度が目標の温度になるよう統合的に制御するものです。
コンクリートの品質管理については、セメントの水和熱により、強度発現の過程でひび割れを生じさせる一因となることが知られています。それがマスコンクリートのような大型構造物になると温度上昇も大きく、ひび割れ等品質に与える影響は顕著となるため、液体窒素や砕氷によって冷やすなどの対策がとられてきました。しかし、液体窒素は値段が高いことと、減水剤などの混和材料への影響も憂慮されていました。
今回、本システムをLPガスの国家備蓄を行う愛媛県の波方基地プロパン貯槽工事(発注者:独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構)のマスコンクリート打設に適用し、事前の解析で求められた最適打設温度を36時間維持した打設を実現することで有効性を検証しました。打設を行ったのは、約30万tのLPガスを備蓄する貯槽の栓(プラグ)に相当する約520m3のマスコンクリートで、ひび割れ等によるガス漏れが許されないこと、また鉄筋の他、多数の配管や計測機器なども埋設された重要度の高いもので、低発熱収縮補償型の高流動コンクリートを採用しました。
事前に三次元温度応力解析を行い、その結果に基づいて打設時及び打設後のコンクリート温度の管理と制御を実施し、打設後においても、要求される品質が確保できていることを確認しています。
冷風及び冷水によるプレクーリング温度制御システムの概要は以下の通りです。
(1)生コンプラントにおいて骨材ビンの建屋を密閉して冷風を送り、使用材料を目標温度まで冷却します。(2)練混ぜ水には冷却水を使用し、生コンクリートの練り上がり温度を制御します。(3)使用する生コン車は使用前に冷水で洗浄するとともに、運搬中はドラム全体を保温シートで覆って運搬中の外気温や直射日光による影響を排除します。(4)打設場所では、ポンプ車から打設場所までの配管に冷水噴霧を実施し、コンクリート圧送時の温度上昇を抑制します。
現地には司令室を置いて出荷時、現着時、打設時の生コンクリート温度を集約管理し、製造、運搬、打設現場の各段階で管理(温度)値を指示することにより、生コンクリートの打設温度を最も適切な目標温度に制御しました。
本システムは、日中の気温が上昇するような環境においても、安定した設定温度でのコンクリート打設が可能なだけでなく、液体窒素や砕氷を使用しないため、全ての材料が一度も過冷却(凍結)状態になることがなく、高性能減水剤、分離低減剤、膨張材などの混和材料を複数使用する特殊コンクリートについても、均質で安定した品質を保証することが可能です。液体窒素を使用したプレクーリング手法より温度制御に要するコストを約20% 削減できます。
大成建設では、今後、原子力発電施設や地下タンク施設など、重要コンクリート構造物等への適用拡大を図っていく予定です。

温度制御システム概要図

マスコンクリート打設温度制御システム