社外取締役・取締役会議長座談会
“大成建設の「これから」”のために
目指す姿の実現に向けて、企業風土改革をはじめとする変革と
さらなるコーポレート・ガバナンスの高度化を進める大成建設グループ。
社外取締役5名と取締役会議長が、今後の課題とそれぞれの役割について語り合いました。
上段左から
- 社外取締役 役員人事委員会委員長 報酬委員会委員長
大塚 紀男 - 日本精工(株)元取締役代表執行役社長として、企業経営や財務分野等に深い知見を有する
- 社外取締役 サステナビリティ委員会 委員長
國分 文也 - 丸紅(株)元代表取締役社長として、グローバルな企業経営の豊富な経験と国際事業・事業投資等に幅広い見識を有する
- 社外取締役
上條 努 - サッポロホールディングス(株)元代表取締役社長として、多業種における企業経営に卓越した見識を有する
- 社外取締役 ガバナンス体制検討委員会 委員長
西村 篤子 - 元外交官としての豊富な国際経験に基づく国際情勢に関する幅広い見識を有する
- 代表取締役会長 取締役会議長
田中 茂義 - 当社代表取締役副社長を経て現職。昨年まで土木学会会長も務め、社会課題の解決に貢献する建設業界の発展に取り組む
- 社外取締役
小出 寛子 - 多様なグローバル企業の経営に携わり、経営戦略やマーケティング分野において豊富な経験と幅広い見識を有する
企業風土改革の「これまで」と「これから」

- 田中企業風土改革の背景には、当社が大切にしてきた「自由闊達」が薄れ、現場が上層部に意見を言えず、一昨年の不適切事案につながったという危機感があります。現在、全役職員が“人生を尊重する企業風土”に向けた改革に取り組み、職場の雰囲気は着実に改善しています。分け隔てない対話が広がり、課題であったエンゲージメントも向上しています。これまでの取り組みをどう評価し、今後に何を期待されていますか。
- 西村経営陣が自ら変わる必要性に気づいたことは大きな一歩でした。社長の覚悟と社員の声に耳を傾ける姿勢が浸透し、「皆で会社を変える」という意識が高まっています。エンゲージメントサーベイにも成果が表れており、社員が手応えを感じているのではないでしょうか。
- 大塚
経営陣が真剣に取り組んだ成果が、エンゲージメントスコアの向上という形で表れています。
今後は、「自由闊達」を現場の隅々まで浸透させることが重要です。ものづくりの現場では、安全・品質に妥協は許されず、規律が不可欠です。この規律と自由闊達の両立は大きな挑戦です。当社は150年かけて現場と協力会社が一体となり、TAISEI QUALITYを実現する仕組みを築いてきました。その価値を再認識し、絶対に譲れないものを明確にして改革を進める必要があります。
これは2、3年でできることではなく、目指す姿を実現するまで、粘り強く取り組み続けることが大切です。社外取締役として、全力で支援していきます。
- 西村企業風土は常に変化するもので、完成形はありません。大塚さんのおっしゃるとおり、長期的な取り組みになるからこそ、緊張感と熱意を持ち続けることが大切です。取締役会で定期的に報告を受けていますので、今後も社員がより強い手応えを感じられるようフォローしていきます。
- 小出昨年就任したため、以前の状況を直接は体感していませんが、経営陣の強い覚悟を感じています。掛け声だけで実態が伴わなければ社員に見透かされ、改革は進みません。当社からは、改革への本気度が伝わってきます。ただし、皆さんがご指摘されたとおり、改革には時間が必要です。全員が心から「変わる」と思い続けることが大切であり、そのエネルギーをどう維持するかが鍵です。

- 上條不祥事を防ぐには、社員が自分の仕事に誇りを持っているか、大成建設に勤めていると胸を張って言えるか、がポイントです。当社は、「地図に残る仕事。®」の担い手として社会から期待されています。社員がそれを誇りに感じていきいきと働き、能力を発揮するための改革が着実に進んでいます。
- 田中適正な仕事量を念頭に、働き方の変革も進めています。これは単なる労働時間削減ではありません。将来のありたい姿を描き、それに向かってやり方を工夫し、必要に応じて別の方法でチャレンジする。柔軟な姿勢で成長につなげていきたいと考えています。
- 國分
就任して7年目になりますが、役職員の皆さんの能力や自己管理力の高さを実感しています。これは、150年以上続く当社のDNAによるものでしょう。
働き方の変革も、社員一人ひとりのモチベーションを高める取り組みにしていかなければなりません。上からの一律の押し付けでは、ゆがみが生じます。長い人生の中で、自分の意思で、仕事をやりたくて仕方がない時期は必ずあります。そのような個人の意思を尊重し、社員と会社がともに成長できる風土を築くことが大切です。そのためには、心理的安全性を確保し、自分の意思で発言・行動できる環境が必要です。
- 上條当社は、業界をリードする立場にあり、建設業の働き方を突き詰めていく責任があります。時間外労働上限規制に対応しつつ、技術開発によってさらなる生産性向上を実現する。「技術の大成」として積み重ねてきた知見を活かし、業界を変えるという意気込みで取り組むべきです。
- 小出外資系企業での経験から、日本人は真面目で、何事もきっちりやり過ぎる傾向があると感じています。この改革も「やることリストを全部やる」では息が詰まります。また、平等主義が行き過ぎて、「皆が同じようにやる」となってもいけません。私はこうしたい、という一人ひとりの意思を尊重して、楽しく働ける環境をつくることが大切です。この会社で働き続けたいと思えるようになれば、未来のために努力し、大変なことも乗り越えられます。
さらなるコーポレート・ガバナンス高度化のために
- 田中取締役会の議長として、自由な雰囲気の中で本質的な議論を促すことが私の使命です。社内の取締役の率直な意見を引き出し、社外取締役の知見を活かして、コーポレート・ガバナンスの高度化につなげたいと考えています。皆さんはどのようにお考えでしょうか。
- 西村
私が委員長を務めるガバナンス体制検討委員会は、取締役会の実効性向上に取り組んでいます。昨年度は、各取締役会委員会の審議内容を整理し、規程を整備しました。今後も継続的にモニタリングを行い、課題に対応していきます。
また、執行側への権限委譲も進め、中長期的な課題の審議充実を図っています。今後、次の中期経営計画に向けた議論も始まります。より本質的な議論ができるよう、取り組みを深めていきます。

- 大塚
役員人事委員会と報酬委員会の委員長を務めています。役員人事委員会においては、サクセッションプランを策定し、次の世代、さらに次の次の世代の育成について議論しています。
報酬委員会では、社長の強い想いを受け、執行役員の個人別業績評価制度を導入しました。この評価制度において行われる社長と各役員との対話は、経営幹部の育成にもつながると考えています。役員報酬の総額の妥当性や、インセンティブ効果の高い報酬構成にしていくための議論なども進めています。
今後も両委員会での議論を一層深め、ガバナンスの高度化につなげていきます。
- 國分
就任当初と比べ、組織や制度が大きく整備され、議論も形式的なものから本質的な内容へと変化しています。私が委員長を務めるサステナビリティ委員会でも、形式的な報告はやめ、昨年度のマテリアリティ改定のように、会社の成長に関わる本質的な議論を重視していきます。
今後は、大きな流れとして、単体ではなく連結ベースで物事を考えること、請負だけでなくM&Aも含めた事業投資を考えること、より川上でビジネスを行うことなどが重要になります。こうした感覚を持つ経営人財を育てるために、足りない部分をどう補っていくかを考え、育成を支援していきます。
- 上條当社には、完璧なルールを求める傾向があると感じています。これからの時代は、一定の決まりごとのもとで素早く動き、運用で対応する術を磨いていくことも重要です。「企業は社会の公器」という視点に立てば、将来のために取り組むべき課題は自ずと見えてきます。

- 小出本質的な議論に、より十分な時間を割けるよう、取締役会のアジェンダや、その前提となる執行側への権限委譲の範囲は、引き続き見直していく必要があると感じており、取締役会の在り方についてもっと議論してもいいと思います。執行側には、社外取締役がビジネスのスピードと成功確率を高めるための存在であることを理解していただき、もっと活用してもらいたいと考えています。意味のある議論を適切なタイミングで行い、執行側が動きやすくなるよう、協力して改善していきます。
持続的な企業価値向上と安定的成長に向けた自身の役割
- 田中
私の役割は、グループ全体を俯瞰し、中計などの方針や施策が、持続的な企業価値向上と安定的な成長に本当に資するかを見極めることです。過剰なリスク管理で挑戦が妨げられないよう、執行側をサポートし、健全なバランスを保つことを意識しています。成長に向けた戦略的投資と、資本効率を意識したステークホルダーへの還元を両立させ、企業価値向上につなげていきます。
皆さんは、ご自身の役割をどう捉えていらっしゃいますか。

- 西村当社は、誠意を持って社会インフラの整備に取り組み、「地図に残る仕事。®」として多くの実績を築いてきました。しかし、今後、まちづくりに求められる価値は大きく変化していきます。現在の強みが将来も通用するとは限らないという緊張感を持ち、社会の変化に柔軟に対応していくことが必要です。外交官としての経験を活かし、多層的でグローバルな視点から、適切な提言を発信していきます。
- 大塚企業価値の向上には、「TAISEI QUALITY ~品質は私たちのプライド~」という理念に全員が共感することが重要です。ものづくり企業にとって、品質の向上は企業価値の向上そのものです。社外への情報発信も含め、企業活動全体の品質を高めるために、アドバイスと対話を重ねていきます。
- 小出就任に際しゼネコンについて学ぶ中で、人々の安全・安心な暮らしを支えている、何て格好いい仕事なんだろうと実感しました。社員には、社会を支えているというプライドを持って、自分の仕事の価値を積極的に発信してほしいと思います。そうしなければ、建設業が持つ魅力、醍醐味が世の中で十分に理解されず、建設業についての誤った認識から人財採用が難しくなることも起きかねません。もっと胸を張って当社の魅力と社会的意義を伝えていこう、と言い続けていきます。

- 國分経営の視点が単体から連結へ、請負から投資へと移行する中で、失敗も含めた私自身の経験を活かし、的確なアドバイスをしていきます。企業価値が高まるとき、その会社は社員がいきいきと夢を描ける状態になっています。会社をプラットフォームとして、そこで社員が夢を実現していくことが、企業の成長につながります。それを目指して、積極的に提言していきます。
- 上條これまでは、新しいものを「つくること」に成長の機会がありました。これからは、社会に本当に必要なものかを見極めながら、既存のインフラを維持、再生していく視点が求められます。官民が一体となり、社会インフラの持続可能性について議論を深めることが重要です。当社には、もっと積極的に考えを発信して、「技術の大成」として業界をリードしていくことを期待しています。そのために、社外の視点から意見を伝えていきます。
- 小出今後は、イノベーションを生む「人財」がますます重要になります。企業風土改革を通じて失敗も評価される文化を築き、挑戦を促す環境を整え、会社の成長につなげていってほしいと思います。「やってみたい」という前向きな気持ちを大切にする企業になれば、それに共感して入社する人も増え、イノベーションの好連鎖が生まれます。私の多様な組織での経験を活かし、「人財」の面からも企業価値向上に貢献していきます。
- 田中私たちの仕事は人々の生活のあらゆる場面に関わっています。皆さんのご意見を活かし、「人財」「技術」「協力会社をはじめとするパートナー」という競争力の源泉に磨きをかけながら、当社が創り出す価値を積極的に発信していきます。そして、社員が「この会社で働いて良かった」と思える、事業に関わる全ての人がいきいきとする大成建設グループをつくっていきます。本日はありがとうございました。