財務責任者メッセージ

グループの企業価値向上に挑戦し続けます
副社長執行役員
管理本部長
2024年度業績の振り返り・評価
2024年度のグループ業績は、売上高2兆1,542億円(前年比+22.1%)、営業利益1,201億円(同+353.8%)、当期純利益1,238億円(同+207.5%)と、大幅な増収増益を達成しました。建築事業において首都圏の大型案件が工程の最盛期を迎えたことによる出来高の増加に加え、受注時採算の改善や追加工事・物価スライドの獲得が進んだことが増益要因となりました。
また、政策保有株式売却の進展やM&Aに伴う負ののれんの一括償却も当期純利益の押し上げに寄与し、中期経営計画の初年度として好調なスタートとなりました。
一方、国内建築事業については、引き続き収益体質の強化が必要と認識しています。
財務政策の進捗・評価
2024年度は「ROE10%程度の継続的な確保と最適資本構成の追求」及び「投資基準と資金配分政策に基づく成長投資の実施」を柱として、財務政策を進めました。
政策保有株式売却の進展は資本効率の改善に貢献し、自己資本比率35.7%・ネットD/Eレシオ0.02倍と健全性を維持しつつ、ROE13.8%を達成しました。株主還元においては、2024年度の1株当たり配当金を前期比80円増配の210円とし、2025年度からは下限付き配当性向30%(下限150円)を導入しました。また、2024年11月から1,500億円の自己株式取得を実施中であり、中期経営計画期間(2024-2026)3カ年の総還元性向は82.8%となる見込みです。
これらの取り組みにより、PBRは1.3倍へと改善し、企業価値向上に一定の成果を示した一年となりました。
現在の課題と今後の方策
中期経営計画の達成に向けては、国内建築事業の収益体質強化が喫緊の課題であり、利益重視の受注姿勢の堅持や、生産体制の最適化を通じた消化能力の向上に取り組んでいます。加えて、2024年度から適用された時間外労働規制に対応するため、工程管理と省人化の高度化を図っています。また、自己株式消却による発行済株式総数の縮減を重視しているため、配当性向が同業他社と比較して相対的に低い点も課題と認識しており、今後の配当方針についても検討してまいります。
新事業の進捗と事業ポートフォリオの充実
当社グループは、持続可能な社会の実現を目指す成長戦略の一環として、再生可能エネルギー分野における取り組みを加速しており、フィリピン太陽光発電事業への参画や、浮体式洋上風力発電への技術開発投資を進めています。また、グループ次世代研究所の新設をはじめグループ横断的な研究開発体制を整備し、中長期的な成長基盤構築に注力しています。加えて、新規事業創出支援プログラムにより革新的な技術やビジネスモデルの具現化を図っており、今後も事業ポートフォリオの充実を通じて、企業価値の持続的向上を目指します。
財務政策達成に向けた決意
ROE10%以上の継続的な確保、資本効率の改善、そしてステークホルダーの皆様との対話を通じた信認の獲得こそが、当社グループの財務政策の中核です。
2024年度に高い実績を上げたこともあり、ステークホルダーの皆様の期待水準が一層高まっていると感じています。財務責任者として、【TAISEI VISION 2030】の達成に向けて、今後も成長投資と株主還元のバランスを取りながら、PBRのさらなる向上を目指し、財務政策の推進による企業価値向上に挑戦し続けます。

「資本コストや株価を意識した経営の実現」に向けた取り組み
(1)収益体質の強化
上図のPBRロジックツリーにおけるROE向上の鍵となる「売上高当期純利益率」の改善に向け、グループ国内建築事業の収益体質強化を最優先課題と位置付けています。
消化体制の拡充に向けた要員数の確保は順調に進んでおり、また、適正な工期と価格を前提とした受注時の採算管理強化により、中長期的な目標である売上総利益率10%以上の確保に向けて順調に改善しております。
特に、物価高騰に対する適切な価格転嫁については、時にはトップ交渉も辞さず、お客様と対話を続けてきた結果、建築事業の受注時採算は大きく回復しております。
併せて、リニューアルやエンジニアリング分野など強みのある高採算案件への経営資源集中も図っています。
これら一連の取り組みにより、建築事業が安定的に利益を創出することで、ROEの持続的な向上と企業価値の最大化に貢献することを目指します。
(2)資産の圧縮・入替
ROE構成要素の一つである「総資産回転率」の向上を目的とし、資産の圧縮・入替を戦略的に進めています。
中でも、政策保有株式の縮減は重要課題であり、2026年度末までに連結純資産比20%未満への圧縮を目標としています。2024年度末時点で29.4%まで低下させており、売却応諾済かつ未売却のものを加味すると21.5%となります。
なお、縮減計画達成に向けて追加的に稼得が見込まれる資金1,500億円を原資として自己株式の取得を実施中であり、縮減計画の達成に向けた強い意志表明とご理解ください。
また、統合リスク管理に基づく総量規制のもと、リスクアセットを連結株主資本の一定割合に抑制し、バランスシートの健全性と効率性を維持しております。
2024年度の総資産回転率は0.9回となり、1.0回には届かなかったものの、成長投資による収益拡大と資産構成の最適化を両立させ、ROEの持続的向上を目指してまいります。
〈政策保有株式の縮減目標〉2026年度末までに連結純資産額の20%未満とすることを目指す
(3)最適資本構成の追求
ROE構成要素の一つである「財務レバレッジ」の適正管理を通じて、資本効率と財務健全性を両立させる最適な資本構成を追求しています。
2024年度末の財務レバレッジは2.8倍となり、目安とする2.5倍を上回りましたが、自己資本比率35.7%、ネットD/Eレシオ0.02倍は健全な水準と認識しています。
なお、資金配分においては、まず成長投資・事業投資を最優先とし、余剰資金については株主還元へ充当する方針としております。
今後も、格付維持(R&I:A+ /JCR:AA-)を前提とし、財務レバレッジ2.5倍程度(=自己資本比率40%程度)、ネットD/Eレシオ0.4倍以下を目安とする資本構成を継続し、成長投資や株主還元を着実に進める基盤としてまいります。


B/S投資(貸借対照表上の投資):将来キャッシュ創出を見込み、資産として計上される投資
株主還元への資金配分にあたって、配当性向30%程度とする方針に基づき、2024年度は1株当たり配当金を前期比80円増配の210円としました。
2025年度からは「下限付き配当性向30%(下限150円)」を導入し、中期経営計画の業績目標実現と配当政策の遵守に対する強い意志を表明しております。
また、自己株式の取得については、財務政策に基づき従来と変わりなく機動的に実施します。2024年11月には上限1,500億円の自己株式取得を公表し、2026年度までの政策保有株式売却目標額を原資として着実に実行中であり、中期経営計画(2024 -2026)の3カ年における総還元性向は82.8%を見込んでいます。
なお、自己株式消却による発行済株式総数の縮減を重視しているため配当性向や配当利回りが他社に劣後していることは認識しており、発行済株式総数をおおむね1.4億株※まで縮減する見通しがたった段階において、配当性向の引き上げなど、配当を重視した還元策を導入する予定です。
- ※2025年11月末発行済株式総数の予定:1.6億株(実施中の自己株式取得完了後)
(4)市場(投資家)に対する魅力度醸成
PBRの向上には、ROEの改善に加え、もう一つの構成要素であるPERの引き上げが重要となります。PERは、企業の成長性に対する市場の評価を示す指標であり、単に現在の利益水準だけではなく、将来の収益力や非財務的要素など、定量化が難しい「魅力度」が反映される指標です。
こうした「魅力度」を高めるため、IR活動やSR活動を強化し、ステークホルダーの皆様との信頼関係を深め、当社グループの価値創造ストーリーや社会における存在意義への理解と共感を広げてまいります。
また、サステナビリティ経営の推進、コーポレート・ガバナンスの強化といった非財務分野における取り組みを通じて、当社グループの持続可能性や社会的信頼への評価を高め、PER 及びPBRの継続的なさらなる向上と企業価値の最大化を目指します。

当社グループの将来性が適正に反映されたPERによる企業価値の向上を実現するため、経営トップを含むIR活動のさらなる強化に取り組み、投資家の皆様との信頼関係構築と中長期戦略への理解促進を図ってまいります。
具体的には、定常的な決算説明会や1on1ミーティングにとどまらない、経営陣と少人数の投資家との対話の充実、注力分野に関する定量情報の開示、経営層や担当役員を交えた説明などの多種多様な機会を設けることを検討してまいります。
また、資本市場の視点や評価をより適切に取締役会の議論へ反映していくため、社外取締役のIR活動への参加についても今後検討を進めます。

当社グループは、株主の皆様との信頼関係をさらに深め、企業価値の継続的な向上につなげるため、SR活動を単なる情報提供ではなく、皆様からのご意見やご期待を真摯に受け止め、経営にフィードバックする「対話の場」と位置付けております。
今後も、個別面談に加え、情報開示のより一層の充実を図ることにより、当社グループの持続的成長・企業価値の向上に向けた取り組みや事業戦略などへの理解を深めていただく機会を拡充してまいります。
双方向の継続的なコミュニケーションを通じて株主の皆様との信頼関係を深めることにより、当社グループの魅力度を高め、企業価値の向上を実現してまいります。
当社グループは、PER向上に寄与する非財務価値の強化に向け、【TAISEI VISION 2030】達成計画において、「サステナビリティ戦略」を策定し、サステナビリティ経営を中核に据えた取り組みを推進しています。
継続課題である「情報開示レベルの向上」「ESG外部評価の向上」「サプライチェーン全体における取り組み向上」に努めてまいります。
情報開示においては、統合報告書やWebなどでの先進的かつ体系的な開示を継続し、ステークホルダーの皆様への透明性を一層高めてまいります。
また、ESG外部評価においては、各評価機関の基準に対応した施策と開示を通じて、ESGインデックスへの継続採用と投資対象としての魅力度向上を目指します。
そして、サプライチェーンとの共創による先進的な環境関連技術と強固な生産体制は、当社グループの強みです。
「グリーン・リニューアルZEB」「木質建築」「ゼロウォータービル」「T-ZCBⓇ」「T-e ConcreteⓇ」など、当社独自の環境技術の普及を進めるとともに、当社グループの人権及び環境デュー・ディリジェンスをさらに進化させ、健全で多様な生産体制を確保してまいります。
当社は、企業としての持続的な発展を図り社会からの信頼を獲得するため、経営における意思決定の迅速性、的確性、公平性及び透明性を確保することをコーポレート・ガバナンスの基本的な考え方としております。
2020年3月に、取締役会の監督機能の強化と審議の活性化、業務執行の意思決定の迅速化を目的として、取締役会付議事項の見直しや、それに伴う執行サイドへの権限委譲範囲の拡大など、ガバナンス体制の見直しを行いました。また、業績連動報酬(株式報酬)を導入するなどコーポレート・ガバナンス強化に向けた取り組みを実施しております。
今後も、取締役会の実効性について分析・評価を行い、さらなる企業価値の向上に努めてまいります。