日本の近代土木を築いた人びと
解説
近代の夜明けに日本ほど短期間に近代科学技術をマスターし、土木技術の自立を成し遂げた国は世界史に例がない。それをやり遂げたのが幕末の動乱期に生まれ、新時代の土木技術に挑んだ若き技術者たちであった。近代の黎明期に彼らが築き上げた近代土木技術は、その後に展開されたわが国の国土開発の出発点となったのである。
登場人物
- 井上勝
- 幕末の文久3年、イギリスへ密航した5人のうちの一人であった彼は、近代土木技術の自立を成し遂げた先駆者となった。お雇い外国人に頼らず日本人だけで逢坂山トンネルを完成し、日本全国に鉄道を敷設、後に「鉄道の父」と呼ばれるようになった。
- 田辺朔郎
- 東京遷都で衰退した京都を活性化させる総合開発事業として、琵琶湖疏水工事をてがけた。京都と琵琶湖を水運で結び、わが国初の公共用水力発電所を建設、その電力で、インクラインが稼働し、京都市内には路面電車が走った。
- 古市公威
- 現在の河川の骨格は明治改修によって形成された。古市は洪水氾濫を繰り返す河川改修の行政基盤を作り、木曽三川工事など全国の河川改修事業を技術官僚の首脳として精力的に推し進めた。
- 沖野忠雄
- 国家事業である、河川の改修事業を技術者集団の中核となって推進した。世界最先端の近代土木機械を駆使して淀川改修事業を行い新淀川も開削。淀川の洪水氾濫は激減、その後の河川改修の指針となった。
- 廣井勇
- 海に囲まれた日本にとって近代港の建設は緊急課題であったが、厳しい気象条件や地形に阻まれ明治中期になっても築港技術は確立されていなかった。そんな時代に冬には猛烈な激浪が押し寄せる小樽に東洋一の長大な防波堤を築き、北の玄関口を造ったのが廣井であった。
ギャラリー
受賞歴
- 第39回日本産業映画ビデオコンクール・日本産業映画・ビデオ大賞
- 2001年教育映画際・最優秀作品文部科学大臣賞
- 平成13年度文化庁映画ビデオコンクール・文化庁優秀映画賞
- 第11回TEPIAハイテクビデオコンクール・経団連会長賞
- 2001年度第75回キネマ旬報ベストテン・文化映画部門第1位
日本の近代土木を築いた人びと
2001年/カラー/16ミリ/58分
- 監修
- 高橋裕(東京大学名誉教授 工学博士)
清水慶一(国立科学博物館 工学博士)
- 監督
- 田部純正
- 撮影
- 高橋愼二
- 制作
- 日本映画新社 日映企画