九州支店
熊本325号災害復旧 阿蘇大橋上下部工事作業所

熊本復興のシンボルとなる橋梁を
阿蘇の大地に築く

2020年度内の開通を目指して、今、阿蘇大橋の架替え工事が進んでいる。2016年4月に発生した熊本地震による崩落から3年半。阿蘇への観光ルートでもあり、地域の生活道路でもあるこの橋の再建は県民待望の一大プロジェクトだ。その重みを深く胸に刻み、橋梁建設に邁進する作業所を訪ねた。
(2019年10月24日取材)

高難度な大深礎工を
豊富な知見と密な連携で完遂

 一級河川黒川をまたぐ国道325号阿蘇大橋。現在、地震で崩落した旧橋から約600m下流に新たな阿蘇大橋が着々と築かれている。深礎杭最大径16m、橋脚最大高さ97m、最大支間長165mと、PC3径間連続ラーメン箱桁橋としては国内最大級の規模だ。
「本橋梁は、熊本市内から阿蘇へと至る主要ルートにあたり、その完成は地元の悲願です。2017年3月の着工以来、阿蘇ならではの急峻な地形や強風などの気象とも対峙しながら、重責を果たすべく、迅速かつ安全に施工を進めています」と園部文明作業所長は語る。

完成予想図
現地の俯瞰写真
阿蘇大橋は、黒川の渓谷をまたいで架橋される
PR2橋脚躯体工事風景
半円形の土留め壁構造を採用し、柱状節理への影響を最小限に抑え、高い掘削技術で慎重に施工した

 下部工の基礎工事では、PR1〜PR3の3つの橋脚で大口径深礎杭を施工。そのうち最も高難度だったのが、黒川直近を水面から14m下まで掘り進めて、杭径16m、深さ29mもの大深礎を構築するPR2の基礎工事だ。施工箇所には、阿蘇山の溶岩から生まれた柱状節理が存在する。万全な止水対策を施しつつ、自然環境への影響を最小限に抑えることも求められた。そのため、半円形の土留め壁構造で、掘削範囲を狭小化。また止水対策の知見が豊富な技術センターや、土木本部土木技術部トンネル技術室、地盤・環境技術室の協力を得て、最善の掘削方法を探究した。水と反応して硬化するウレタン系樹脂を地盤に注入しながら掘削することで、振動を抑制して柱状節理の剥落を防ぎ、同時に浸水防止も図ることができた。

 PR2工事を担当する草野瑞季工事係は、「想定より固い岩盤が続いたり、雨量によって湧水が増加するなどの状況にも遭遇しましたが、専門工事業者の皆さんと緊密に連携して細かな工程調整を図り、無事期日内に掘削を終えました」と振り返る。

  • 溶岩が冷え固まる際、収縮して生じた柱状の割れ目
工事現場全景
ACS工法を用いたPR2の橋脚施工が進行中だ。厳しい地形と気象条件が施工の遅れにつながらないよう、両岸には資機材運搬のためのインクラインを整備した。

徹底した合理化により急速施工を実現

施工ステップ
工事は順調に進展し、現在STEP2を迎えている

 2019年10月からは、PR2の橋脚施工が始まり、PR3の上部工も進展中だ。

 早期の供用開始が期待される本プロジェクトにおいて、工期短縮は至上命令。受注に際しても、急速施工を実現する各種の技術提案が最大の決め手となった。橋脚や橋桁の構築には、最新設備の導入や重機の大型化など、徹底した施工の合理化を図って臨む。

 足場と型枠を一体化させたユニットを油圧駆動装置で上昇させる、オートクライミングシステム(ACS)工法もその一つだ。クレーンによる型枠の揚重作業が不要なため、スピーディーな施工はもとより、省力化や安全性の面でも威力を発揮する。

 また片持ち張出架設工法による橋桁の施工では、超大型移動作業車を投入する。「移動作業車は、同規模工事では通常200tm。その3倍の600tmもの大型機械を使用することで、順次張り出していく橋桁のブロック数を21から15にまで削減でき、施工日数の大幅短縮を可能にします」と園部所長は説明する。

阿蘇大橋の建設工事は夜間も続けられる

厳しい気象条件を克服すべく、巨大インクラインを整備

 課題は工期短縮だけではない。急峻な地形や年間を通して吹き渡る強風の対策も必須だった。
「強風下でのクレーン作業を極力削減できるよう、風雨の影響を受けにくく、急斜面でも大量の資機材を運搬できるインクラインを両岸に整備しました。当社でも初の規模となる、台車面積9m×14m、最大積載量60tもの巨大インクラインの設置により、より安全かつ効率的な資機材運搬が可能となりました」と長尾賢二工務課長。大量の資材や車両を載せた巨大インクラインが、険しい斜面を昇降するさまは壮観だ。

働き方改革にも注力。大成の名にふさわしい施工を貫く

 昼夜施工で取り組まれている本プロジェクト。作業所では、業務効率を維持しつつも、皆がしっかり休暇を取得できるよう、働き方改革にも注力している。

「1カ月ごとに全員の休暇日が分かるシフトスケジュールを作成。併せて昼夜のシフトも、経験値のバランスを考慮し、必ずベテランと若手が組むようにしてローテーションさせています。現時点は4週6休ですが、4週8休を視野に、さらなる取り組み改善を進めています」と長尾工務課長は強調する。

 工事は、2020年9月、いよいよ橋桁の中央閉合を迎える予定だ 。
「最後まで、所員、協力会社を含め、現場で働く全員の安全を守ることが私の使命。当たり前の作業こそ絶対手を抜かず、緊張感を持って行うよう、ことあるごとに伝えています」と園部所長は力を込める。
「新たな阿蘇大橋は、熊本復興のシンボルと目されています。発注者からも、地域の皆さまからも、大成に任せて本当に良かったと言われる『地図に残る仕事。』を工期通り、高品質かつ絶対安全に成し遂げます」と、力強く前を見据えた。

Message from Client

国土交通省 九州地方整備局
熊本復興事務所建設監督官
重草 通様

熊本復興へ!その「架け橋」の完成を目指して

阿蘇大橋建設は、熊本城修復と並ぶ、熊本復興プロジェクトの2大シンボルです。県内最大の観光地、阿蘇への重要なアクセスルートであり、また市民生活の重要インフラでもあるこの橋の供用開始を、関係者は心から待ち望んでいます。大成建設からいただいた技術提案によって、工期は大幅な短縮が図れました。また昼夜を分かたず高品質かつ安全に工事を推進されており、そのリーダーシップには大きな信頼を寄せています。当県にとってまさに未来への「架け橋」となる新たな阿蘇大橋。全面開通に向け、無事故で竣工の日を迎えましょう。

工事概要

工事名称 熊本325号災害復旧 阿蘇大橋上下部工事
発注者 国土交通省九州地方整備局(熊本復興事務所)
関連コンサルタント 関連コンサルタント
施工者 当社・(株)IHIインフラ建設・(株)八方建設 地域維持型建設共同企業体
工期 2017年3月17日~2020年9月30日
工事内容 下部工工事(橋台1基、橋脚3基)上部工工事(橋長345.0m)仮設工事(インクライン2基、作業構台工一式)
橋梁形式 PC3径間連続ラーメン箱桁橋
所在地 熊本県阿蘇郡南阿蘇村河陽

ギャラリー

Photographs by Yukiko Koshima