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- 活動報告(ISO26000中核主題別活動報告)
- 人権デュー・ディリジェンス
建設業は、様々な業種の技能労働者や原材料の調達、加工、運搬企業等から構成される、国内外をまたぐ重層的なサプライチェーンを企業活動の根幹としており、大成建設にとっても、関与する社員、技能労働者及び地域コミュニティを含む、サプライチェーン全体での人権の尊重・配慮は重要な課題です。
今般、当社の事業活動により与える人権への負の影響を特定・評価し、優先的に対処すべき重要な課題を特定するため、「国連ビジネスと人権に関する指導原則」の定める人権デュー・ディリジェンス(以下、「人権DD」)を導入し、外部有識者の助言を得て、サプライチェーン上の人権リスクを特定しました。
大成建設は、特定したリスク、及びその予防・軽減に関する施策については、経営会議、サステナビリティ委員会での審議を経て取締役会に報告するとともに、今後も当社グループにおける人権リスクの予防・軽減につながる施策を継続していきます。

1. 人権への悪影響の特定(指導原則18)
- 人権に関する国際的ガイダンス(UNEP FI:国連環境金融計画 Human Rights Guidance tool)に基づき、産業全般に共通する人権リスクに加え建設業特有のリスクを抽出のうえ、「人権への影響」と「自社との繋がり」という2つの側面から点数評価しました。
- さらに「人権への影響」の大きいリスクを優先(追加)し、結果として下図の着色部分を「優先的に対応する人権リスク」として特定しました。
- リスク抽出とマッピングにあたっては、外部コンサルタント会社(SOMPOリスクマネジメント)の助言を基に、「サステナブル調達協議会」にて精査を行いました。なお、今回のプロセスについては、外部の弁護士のレビューも受けています。

優先的に対応する人権リスク
影響を被るグループ | 優先課題 | リスク |
---|---|---|
専門工事業者等の労働者 (国内・海外工事共通) |
健康と安全(安全衛生) | 作業所における事故等への安全配慮やメンタル対策等の不足による死傷 |
賃金及び福利厚生 | 労働時間に見合った適正な賃金が支払われないことによる金銭的損失 | |
差別・ハラスメント(就業時) | 就業時の不適切な発言や嫌がらせ、昇進や昇給等の機会の不平等、賃金の不平等 | |
(国内工事) | 長時間労働 | 短期間での受注対応による長時間労働の常態化・過重労働による死傷 |
個人情報・プライバシー | 個人情報の漏洩やプライバシー侵害による精神的苦痛 | |
(海外工事) | 差別(採用時) | 採用時における合理的な要素以外の不採用、採用後の差別的な配置 |
移民労働 | 債務労働、劣悪な労働環境や賃金不払い、パスポート取り上げによる移動の自由の制限等による隷属状態 | |
結社の自由 | 労使協議手段の未整備による金銭的損失 | |
資材、原材料の 採取・製造・輸送に係る サプライヤーの労働者 |
健康と安全(労災事故) | 自社工場や輸送中の労災事故による死傷 |
移民労働 | 債務労働、劣悪な労働環境や賃金不払い、パスポート取り上げによる移動の自由の制限等による隷属状態 | |
強制労働・人身売買 | 本人の意思に反する就労や離職の自由を制限する労働、強制的な残業等による隷属状態 | |
地域社会 | 治安(地域住民の安全) | 海外作業所での過剰警備、海外作業所を対象としたテロ行為等による死傷 |
賄賂と腐敗 | 外国公務員等への不正な利益供与、犯罪組織への資金の流入等による金銭的損失 | |
紛争鉱物 | 紛争鉱物の含まれた原材料の調達・利用等による死傷 | |
紛争国における事業 | 軍事勢力等の人権侵害を行う組織への利益供与による死傷 | |
反社会的勢力との関係 | 反社会的勢力との取引による隷属状態 |
2. 人権に関する悪影響の予防・軽減(指導原則19)
- 今回特定した人権リスクに係る予防・軽減策を「大成建設グループサステナブル調達ガイドライン」に反映し、サステナビリティ経営推進本部のもとサステナブル調達協議会が主体となり、グループ役職員およびサプライヤー(協力会社)を対象にeラーニング等を活用した啓発活動を継続的に実施していきます。
3. 対応の実効性の追跡調査(指導原則20)
- 調達ガイドラインの遵守状況を確認するアンケート調査に加え、ヒアリング、先進事例の水平展開、外国人技能実習生のインタビューなどを通じて人権DDプロセスの実効性を担保するとともに、サプライチェーン全体のレベルアップを目指していきます。
4. 情報発信と外部とのコミュニケーション(指導原則21)
- 人権DDの実施状況につき、経営会議・サステナビリティ委員会・取締役会へ定期的に報告するとともに、オフィシャルサイトや統合レポートにて開示していきます。