国立競技場について

プロジェクト

新しい国立競技場は、
こうして完成を迎えた

2016年12月に本体工事を着工し、2019年11月に竣工を迎えた国立競技場。
この、日本のスポーツの新たな聖地の誕生を支えたのは、建設工事の最前線に身を置く社員たちだった。
累計約150万人、ピーク時には1日約2800人が働く大現場を束ね、多くの関係者と手を携えて工事を率いた作業所長と設備長が
竣工に至る軌跡をたどりながら当時の思いを振り返った。

1.
設計・施工一貫の強みを活かし、
オール大成の力を発揮

当社は、2015年に実施された設計・施工一貫公募型プロポーザル方式によって選ばれました。
9月の公募から11月の締め切りまでわずか2カ月半。
設計と施工の両チームが協働し、短期間でまとめ上げた緻密な技術提案書は、高い評価を受けました。

伊藤

技術提案書は、日本中に開示され、コミットメントするものです。竣工時の姿をイメージし、あの短い期間で、工期短縮やコスト、要求水準を満たす方策や工夫を数々盛り込み、極めて精度の高い提案ができたことが、高評価の要因だったと思っています。

八須

設計・施工一貫の強みを活かして、設計と施工の両チームが双方の知見を持ち寄り、安全、品質、施工性を確保しつつ短工期を実現する方策を考えました。
複雑な形状や納まりを避けた、同心円・同断面の構造形式の採用もその一つです。同一フレームを周方向に施工していくため、資機材の繰り返しの活用や習熟効果によって、工程促進や品質・安全性の向上につながります。
また、公募条件で定められた竣工日である2020年4月よりも5カ月前倒しした、2019年11月末竣工を掲げました。これを実現するため、公募では設計業務完了後にII期事業の契約をするスケジュールでしたが、I期事業期間中である2016年9月にII期事業を契約し、10月から資機材の調達等に着手することを盛り込みました。

スタンドは同一フレームを周方向に繰り返すシンプルな架構。屋根も単フレームごとに自立できる片持ち形式のトラスを周方向に繰り返す架構とし、スタンド工事の進捗に合わせて効率よく施工できる。

伊藤

そこは重要なポイントでしたね。
今回は、早期にII期事業契約に向けた図面等を取りまとめ、発注者とII期事業に係る価格等の交渉を行い、技術提案等審査委員会による確認等を経て、II期事業の契約を、I期事業期問中である2016年10月初めに行いました。
これによって、専門工事業者の早期参画が可能となり工事計画や施工図面を早期に完成することができました。
また本体工事の着工前に資機材調達や専門工事業者との契約も行えました。

八須

物量が的確に把握できて、調達もスムーズにいき、明確な工事条件や内訳が準備できた結果、価格だけではなく、条件にかなう対応力や生産能力を持つ最適な専門工事業者を選べましたね。

木村

短期間に概算から事業費を算出してくれた積算部や、作業所に常駐して臨機応変に対応してくれた調達本部の皆さんの力添えは大きかったです。

伊藤

設計段階から施工チームが参画するフロントローディングや徹底したPCa化も盛り込みました。とはいえ「言うは易し」で、設計期間中に大量の施工図を作成し、本体工事着工に間に合わせるのは大変な作業でしたね。

市川

国立競技場のスタンド基礎は、工場製作のPCa部材が7割を占めます。
2016年12月に本体工事着工、翌年4月に基礎躯体工事開始という工程のため、短期間でPCaの作図・承諾・製作を行い、かつPCa部材を工場に最低限ストックしておく必要がありました。Ⅱ期事業契約前だったことから、当社に千葉PC工場があるメリットが活かせました。実大試験体をつくるなど、建築本部技術部や東京支店建築部技術部、技術センターのメンバーと納まりや施工性の検討を行え、短期間で着手前の準備ができました。また部材数が膨大なため、手際よく施工できることもポイント。この時点で実際に作業する職人さんに見てもらったことも良かったですね。こうしたフロントローディングによって、後々のリスクを回避できたと思います。

「PCa化」とは

PCaはプレキャストコンクリート(precast concrete)の略称で、コンクリート部材をあらかじめ工場で製造し、工事現場で据え付け・接合をすることにより、工程促進などが図れる工法です。