大成建設は、国際労働機関(ILO)が示す「ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)」の概念を尊重し、働きやすい職場を促進する公正な雇用関係の維持や、多様な人材を活かす職場環境の実現に努めています。過重労働の抑制・時間外労働の低減、社員のワークライフ・バランスや健康維持・増進に配慮し、過重労働を抑制し、時間外労働を低減することを労務管理の基本的な考え方としています。近年ではスマートデバイスを活用した業務の効率化や、ソフト・ハード面にも注力して労働時間の削減を図り、ワーク・ライフ・バランスの実現に向けて取り組んでいます。
ワーク・ライフ・バランス推進の取り組み一覧表
推進項目 | 活動内容 |
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時短推進 |
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長時間労働の是正 | |
育児支援 |
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介護支援 |
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休暇 |
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その他 |
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大成建設は、会社の基本姿勢を示すため、社長メッセージを定期的に全社員宛に配信しているほか、協議機関として労働時間短縮委員会及び働き方改革会議を設置しています。
2018年には「『長時間労働是正』に向けた2024年までのロードマップ」を策定し、「健康管理残業時間*」「休日+代休」「作業所閉所」について、年度ごとに段階的な目標を定め、中期経営計画に明示しているとともに、協議機関として労働時間短縮委員会及び働き方改革会議を設置し活動を推進しています。休日の作業所閉所に関しては、(一社)日本建設業連合会(以下、日建連)会員企業として、業界全体で力をあわせて取り組んでいます。
また、社員の意識改革や行動変容を図るため、全社員がそれぞれの職場の状況に応じた具体的なアクションを議論・実行し、労働時間短縮に効果のあった活動については、全社への水平展開や、継続的活動としての定着を図る取り組みを実施しています。
「休日+代休」を年間104日(4週8休相当)取得できた社員は、全体の91.8%まで増加(前年度91.1%)しました。また、作業所の4週6閉所の達成状況は、建築73.5%、土木75.8%となりました。今後も、社員の意識改革や行動変容を図るため、全社員がそれぞれの職場の状況に応じた具体的なアクションを議論・実行し、労働時間短縮に効果のあった活動については、全社への水平展開や、継続的活動としての定着を図る取り組みを実施しています。
健康管理時間:健康障害防止措置(医師の面接指導等)を講ずるかの判断に用いる残業時間。(法定時間外労働時間と法定休日労働時間の合計)
(単体)
大成建設では、社員が安心して子どもを育てることができるよう育児休業制度、育児短時間勤務などの様々な制度を整備しています。休職と復職を支援する育児サポートプログラムや育休者ミーティング、保活相談会、両立支援セミナーなど、両立を支援するための情報提供を行っています。
2016年度からは男性の子育て支援にも注力しており、男性の育児休業取得率100%を働き方改革の一策と位置づけ、所属部門や上司を巻き込み全社的に取り組んでいます。2017年4月には、イクボス*企業同盟に加盟したほか、これまでにも、「イクメン企業アワード2016」の受賞とともに、次世代育成支援対策促進法に基づく認定も受けています。社長メッセージ発信や制度拡充などの施策により、対象となる男性社員の育休取得率は100%、平均取得日数は7.9日(2020年3月末)に達しました。
仕事と介護の両立を支援する取り組みとして、介護休業や介護休暇など法定を上回る柔軟な支援制度を整備するほか、介護のしおりの配布や仕事と介護の両立について不安を感じる社員のために、家族と一緒に参加できる「バーチャルリアリティ体験型介護セミナー」や「WEB配信型セミナー」を実施しており、相談受付も全支店で行うなどきめ細やかなフォロー体制を整えています。
*イクボス:男性の従業員や部下の育児参加に理解があり積極的に支援する経営者や上司のこと
大成建設では、現在、作業所勤務が多い建設技術者や建設技能者は遠距離介護になるケースも多い中、特に、高い技術・技能を持つ人材が長く働けるよう、働く人の介護支援を推進しています。
社員、協力会社職員の介護離職を防ぐ目的で、セミナー開催などの支援策を拡充し、2010年から本社で開催していた介護セミナーを、2014年から要望に応じ地方にも拡大し、現在まで延べ約1,800人の社員等が参加しています。
(単体)
大成建設グループでは、グループ行動指針の社会的責任の遂行において、グローバルな事業活動の取り組みを掲げ、各国・地域の法令を遵守を徹底しています。持続的な成長のために、優秀な人材の獲得と定着を図るため、給与や労働時間等の労働基準においては、各国の最低賃金を定めた法令に従い、それ以上を上回る賃金を支払うことを順守しています。なお、当社グループの2019年度の平均年間給与は、10,103千円となっています。当社の人材獲得においては、2019年度は計365人と積極的な採用を行いました。また、従業員一人ひとりが、長期にわたって高いモチベーションを維持し、能力を発揮していけるよう、社内公募制度など従業員の就業継続をサポートする各種制度の充実を図っています。
採用選考の過程において業務内容を詳細に説明し、ミスマッチの解消に努めています。また、入社後は若年社員の面談などを実施し、一部ではメンター制度を試行的に導入するほか、隔年で従業員満足度調査(2019年度満足度は80.8%)を実施するなど従業員満足の向上にも努めています。
(単体)
* 対象は新卒総合職社員及び専任職社員
大成建設は、結社の自由と団体交渉の原則を尊重し、従業員の代表が会社経営に対話できる労使交渉の仕組みを設けています。毎年定期的に、取締役と労働組合と協議を実施し、賃金の管理、労働条件などに関する諸施策などをテーマに、大成建設労働組合であると当社の代表従業員が、十分に協議を実施し、健全な労使関係を構築しています。
当社社員組合とユニオンショップ協定を結んでおり、管理職などを除くすべての正社員7,715名が組合員となっています(組合員の資格のある者の加入率100%)。労使関係や会社の事業活動の円滑化を目的に、毎年労使間でアンケート調査や様々な対話を実施しています。労働条件の変更などは労使で協議する事項としてあらかじめ労使間で決定しています。
大成建設は、グループ行動指針で「一人ひとりが自らの心身の健康づくりに努め、職位は部下の心身の健康に配慮します」と明記し、様々な健康支援策を実施するとともに、本社・支店の従業員の労働衛生および労働時間の短縮に関する事項について調査・審議し、健康障害の防止及び健康の保持増進等を図ることを目的に、本社、支店ごとに衛生委員会を設置しています。委員会は、委員長(本社 人事部長/支店 支店長)のもと、産業医、衛生管理者、各部門の衛生推進担当職位者、社員組合支部執行委員等からなる衛生委員会を月に1回開催し、産業医の助言を得ながら、社員の健康を支える仕組みや職場の環境改善等について協議しています。衛生委員会の議事録は、イントラネットに掲載し、全従業員に発信しています。
大成建設は、教育基本理念として「時代の変化とニーズを把握し、変革に挑む独創性に富んだプロフェッショナルを育成する」を掲げ、多彩な人材育成策を実施し、マネジメント力や各種スキルの向上のための資格取得支援や、専門性の強化につながる多彩な人材育プログラムを実施しています。2019年度の全従業員の能力開発にかかる総研修受講時間は、261,059時間となりました。なお、新型コロナウィルス感染拡大防止策のため、一部研修は2020年度に実施する予定としています。
専門性や創造性などを有する人材の育成を図るため、入社後の各フェーズにおいて、さまざまな研修を実施しています。
内定者からマネジメント層に至るまでの部門横断的な階層別研修に加え、各部門において、専門的知識を習得するための研修や先輩社員から学ぶOJT等を実施しているほか、若年社員層を対象とした年次研修、マネジメント、グローバル人材育成、女性社員のリーダーシップ開発などの研修を行い、社員の能力向上を図っています。2019年度の一人あたり研修時間は30.5時間となりました。主要な研修の受講者数、受講率と延べ受講時間は以下の通りです。
人材キャリア形成イメージ
主要研修受講実績(2019年度)
研修名称 | 対象別区分 | 受講対象者数(名) | 受講者数(名) | 受講率(%) | 総受講時間(時間) | 一人当たり受講時間 (時間) |
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新入社員導入研修 | 全員 | 279 | 279 | 100.0 | 10,811.25 | 38.75 |
管理職ステップアップ研修 “Step-Up Training” for managers |
昇格者対象 | 148 | 148 | 100.0 | 3,441.00 | 23.25 |
パワーアップマネジメント研修 | 昇格者対象 | 55 | 55 | 100.0 | 1,278.75 | 23.25 |
新任部長研修 | 昇格者対象 | 83 | 40 | 48.2 | 620.00 | 15.50 |
ビジネスリーダー研修 | 部門推薦 | 27 | 23 | 85.2 | 891.25 | 38.75 |
グローバルⅠ研修 | 部門推薦 | 46 | 46 | 100.0 | 713.00 | 15.50 |
グローバルⅡ/Ⅲ研修 | 部門推薦 | 7 | 7 | 100.0 | 217.00 | 31.00 |
担当職新入社員PC研修 | 全員 | 13 | 13 | 100.0 | 302.25 | 23.25 |
外国籍新入社員1年次日本語研修 | 全員 | 2 | 2 | 100.0 | 139.50 | 69.75 |
※新型コロナウィルス感染拡大防止策のため、一部研修は2020年度に実施
語学力や異文化理解力等を磨く研修や海外作業所研修を実施するなど、グローバルな人材育成にも取り組んでいます。また、国内外の大学院等への留学や企業への派遣等も実施しています。
特に、海外事業担当部門では、独自に下記の研修を実施し、人材の育成強化を推進しています。
海外事業に係わる基幹人材の育成
大成建設は、中期経営計画における最重要課題である海外事業の持続的な成長、海外市場において真に通用する企業体質への転換を図るため、海外事業に係わる基幹人材の育成を進めています。
「人材」こそが、海外事業を推進していくために最も重要なリソース(経営資源)であるとの認識の下、日本とは異なる環境の中で、自らの専門技術・知識を生かし、海外で建設ビジネスを行っていくため、人材育成方針・育成体系を策定し、語学/契約/マネジメントといった分野における教育を行っています。その他に、外国大学への留学や他企業への派遣など、多岐にわたる研修を通じて、社員のグローバルな感覚の醸成や、能力の向上を図っています。
また、海外プロジェクトに従事する優秀な外国人スタッフを「グローバル人材」として、将来の海外プロジェクトにおけるプロジェクトマネージャーなど重要な役割を担う人材に育成すべく、「育成方針」・「育成体系」を策定し、教育を行っています。毎年、集合研修を東京で開催しており、2019年度は8国籍、計20名の「グローバル人材」を対象に、当社グループの理念や工程管理・コスト管理などの実務に関する研修、日本国内の作業所視察などを行いました。また、2018年度より国際営業を担う人材を育成することを目的とした国際営業研修を事務社員を対象に実施しています。
専門性の高いエンジニアやマネジャーなどを育成するため、全社員を対象として資格取得を支援し、職務分野におけるスキルアップを図っています。
業務遂行に必要として定めた資格について、合格時に受験料、登録料、更新費用等を会社が助成しているほか、特に必要な資格に対しては更に報奨金を支給しています。
建築施工 | 土木施工 |
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設計 | 国際 |
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開発部門 | エンジニアリング部門 |
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管理部門 | |
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大成建設は、グループ行動指針で「安全で衛生的な職場環境を維持し、労働災害の防止に努めます」と掲げ、「安全第一主義」のもと、事故・災害の撲滅、第三者災害の防止を目的に「労働安全衛生マネジメントシステム(TAISEI OHSMS)*」という形に体系化・組織化し、社長が示す「安全衛生方針」に、安全衛生に関する年度目標を掲げています。2020年度は、重要課題を特定し、「死亡災害『ゼロ』の達成」全ての「事故・災害の撲滅」目指すことを明記し、当社社員はもとより、グループ会社、協力会社が一丸となって、日々安全を形にするための取り組みを推進しています。
労働安全衛生の取り組みとして、社長が委嘱する委員で構成する中央安全委員会(委員長:取締役副社長)を設置し、安全管理・環境事故防止及び専門工事業者の安全・衛生・環境に係る事項を審議し、社長への答申を実施するとともに、拠点(支店)ごとの総括安全衛生管理者・従業員・労働組合で構成する支店安全委員会を開催し、定期的に労働組合との協議を実施しています。死亡災害、重大な第三者事故・災害が発生した場合は、速やかにコンプライアンス報告がなされ、適切に対処する体制とし、再発防止に努めています。
*ILOや厚生労働省のガイドラインを参考に策定した当社独自の労働安全衛生マネジメントシステムです。2020年現在、OHSAS18001は取得していません。
大成建設では、労働安全衛生マネジメントシステム「TAISEI OHSMS」に基づく計画―実施―点検―改善(PDCA)のサイクルを適切に実施・運用し、リスクアセスメント(特に工事入手時検討会後の、施工安全・衛生計画書作成時や災害防止協議会等)を行っており、結果に対する必要な措置(着工後は作業を行う全拠点にて本支店が安全衛生パトロールなど)により、リスク評価を行い、職場内の残留リスク低減を推進しています。また、重大な災害が生じた場合には、再発防止のために、災害分析を実施し、イントラネットなどで情報を水平展開するとともに、作業所関係者の安全教育を行い、作業員の安全遵守の徹底を図っています。
TAISEI OHSMS
2019年の当社の安全成績は、休業災害が77件発生し、休業4日以上の災害が60件、発生度数率は0.62となりました。2020年も継続して、TAISEI OHSMSに基づく安全衛生管理を徹底するため、作業所パトロールや、従業員や作業員の安全教育を実施するほか、様々な施策を進めていきます。
※度数率,強度率,災害件数,死亡者数,延労働時間についてはESGデータを参照ください
労働災害発生度数率の推移
2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | |
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建設業度数率 | 1.61 | 1.65 | 1.66 | 1.83 |
当社度数率(単体) | 0.47 | 0.41 | 0.42 | 0.62 |
(単体)
大成建設では、建設作業所の安全衛生管理状況を確認するパトロールを実施しています。社員や協力会社等の安全スタッフによるパトロールとは別に、「安全第一主義」に対する会社トップの強い決意を社員・作業員一人ひとりにまで浸透させるため、全国安全週間には社長自身が作業所を巡視する社長パトロールも実施しています。2019年7月に行われた社長パトロールでは、専門工事業者事業主および作業員約600名を前に「日々緊張感をもって安全管理に取り組み、皆さん一人ひとりが『自分の身は自分で守る』という強い意識を持って仕事をしてください」と訓示を行いました。
事故災害の防止、安全衛生意識の向上、安全に関する法令などの理解を深めるため、社員研修に取り組んでいます。入社年次、職能等に応じて、業務上必要な基本知識習得のため、階層別の教育を行っています。また、毎月「事故・災害報告書」をイントラネットで発信し、災害分析や災害事例やその防止策など情報共有しています。
2018年度の実施状況
教育の種類 | 対象 | 人数 |
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新⼊社員受⼊(雇⼊)研修 | 新⼊社員 | 254名 |
安全基礎研修 | ⼊社2〜3年 | 361名 |
安全実務研修 | ⼊社4〜5年 | 201名 |
統括管理研修 | ⼊社6〜7年 | 119名 |
統責・統管・元管者研修 | ⼊社8〜10年 | 90名 |
大成建設では、安全衛生の質の向上を図るため、社長顕彰などの表彰制度を設けており、2019年度は3つの作業所が安全衛生に関わる優良事業場として選ばれました。
大成建設は、全国の協力会社で組織する「大成建設株式会社安全衛生環境協力会」と密接に連携し、事故・災害の防止に努めています。また、協力会会員は、大成建設が毎年開催する1月の「安全徹底大会」、6月の「安全推進大会」に参加し、大成建設の「安全衛生管理方針書」の内容を伝達するための機関誌「協力」や災害事例集などを利用し、事故・災害の防止に努めています。
大成建設では、「将来の担い手確保と育成」および「建設技能者の処遇改善」の推進にむけて、認定制度(土木優良技能者報奨制度、建築一級職長及び特級職長制度)を導入しています。
土木分野では、品質、安全、技術などを含めた総合力の向上を目指し、大成建設の現場施工に貢献する優秀な建設技能者に対して報奨金を支給する土木優良技能者報奨制度を導入しています。
建築分野では、生産体制の強化を図るために職長の品質・技術力および安全を含む施工管理力のさらなる向上を目指し、1995年4月より一級職長制度の運用を開始し、2015年度には制度の一部を改定しています。更に2015年11月には、ものづくりのプロとしてより高い施工管理力を有し、技術の伝承や人材の育成も担う特級職長の制度を新設し運用を推進しています。
分野 | 制度名 | 支給額 (日額) |
認定回数、 累計者数 |
対象 | 制度の開始時期 |
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土木 | 土木優良技能者報奨制度(BMT*) | 2,000円 | 年1回 781名 |
資格保有などの一定の要件を満たす建設技能者/全国展開 | 2013年1月 |
建築 | 一級職長制度(一部改定) | 1,000円 | 年1回 854名 |
1995年4月 | |
建築 | 特級職長制度 | 3,000円 | 年1回 67名 |
2015年11月 |
* BMT:Best Meister of Taisei