特集2 SDGs × ZEB

社会にポジティブなインパクトをもたらす
国内初ZEB化テナントオフィスビル

大成建設のZEBへの取り組みは、SDGs達成にも大きく貢献するものと位置づけられています。
2018年完成のJS博多渡辺ビルをはじめ、当社のZEBへのイノベーティブなアクションの種や成果について、
当社のエネルギー戦略を牽引している加藤エグゼクティブ・フェローにお話を伺います。

JS博多渡辺ビルは、国内初のZEBテナントオフィスビル。
大成建設にとってどのような意味がありますか?

エグゼクティブ・フェロー(エネルギー・環境担当)加藤 美好
エグゼクティブ・フェロー(エネルギー・環境担当)
加藤 美好

エネルギー問題やCO2排出量増大による地球温暖化が深刻化するなか、大成建設では早い時期からZEBの普及を目指してきました。ZEBとはNet Zero Energy Buildingの略称で、快適な室内環境を保ちながら省エネに努め、太陽光発電などの創エネを組み合わせて、建物全体での年間エネルギー消費の収支をゼロにする建物のことです。
2014年に閣議決定されたエネルギー基本計画では「2020年までに新築の公共建築物等で、2030年までに新築建築物の平均で、ZEBの実現を目指す」ことが示され、大成建設は、そのロードマップに準拠してZEBの普及を目指して来ました。
具体的には、2014年に大成建設技術センター内にZEB実証棟を建設し、効果的な技術の組み合わせや新技術の開発を進め、2016年に大成札幌ビル(札幌市中央区)のZEB化リニューアルを実現しました。
今回竣工したJS博多渡辺ビル(福岡市博多区)は、ZEBの実現が難しいとされたテナントオフィスビルで、国土交通省が主導する建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)における「ZEB Ready」(エネルギー消費量を50%以上削減)と「最高ランク☆☆☆☆☆(5つ星)」の認証を国内で初めて取得しました。いわば、当社のZEBへの着実な取り組みとイノベーティブな技術の積み重ねが、成果として開花したものです。

ZEBで使われている基盤技術について教えてください。

JS博多渡辺ビルでは、汎用技術と大成建設の最新の技術を組み合わせて初期費用をできるかぎり抑え、標準ビルに比べて消費エネルギーの52%削減を実現しています。
例えば、高遮熱型のLow-E*1ペアガラスや硬質ウレタン断熱材により窓や外壁からの熱の侵入や損失の抑制、自然採光の積極的な取り込みと高効率型LED照明の全館採用等でエネルギー消費量を低減しました。
さらに空調機器には高効率ビルマルチ空調機や、高効率チラーによる外気処理を採用、ブレーキ時の回生電力*2を活用するエレベーターも導入しています。
当社の独自開発技術としては、次世代の人検知システム「T-Zone Saver」の導入があります。このシステムにより人の在席情報に応じて照明器具を1灯ごとに制御するだけでなく、外気条件や室内の負荷状況に応じて空調機を最適に制御することができ、エネルギーを効率よく削減できます。
また、設備の制御情報はリアルタイムで見える化し、エネルギーデータをBEMS*3で収集して専門の技術者が管理し、省エネルギー運用をサポートする体制を整えています。

  • *1 Low-Eペアガラス:Low Emissivity(低放射)の略。ペアガラス(複層ガラス)のうち、その内面部に特殊な金属膜を設けたもの
  • *2 回生電力:機器で発生する余剰エネルギーを電気に変換して再利用する技術のこと
  • *3 BEMS:Building Energy Management Systemの略。ビルの照明・空調等の電力や熱等のエネルギーを効率的に管理するシステム

ZEBの新定義

2015年12月17日に経済産業省資源エネルギー庁より公表されたZEBの定量的な判断基準の定義として、年間の一次エネルギー消費量に基づきZEBレベルの考え方が示されました。

ZEBの新定義

ZEBの価値はエネルギー削減のほかに何がありますか?

大成建設では、今回のJS博多渡辺ビルのような「ZEBテナントオフィスビル」について、省エネといったエネルギーコスト低減による事業性の向上だけでなく、“省エネ=我慢”という概念を払拭する快適性の向上や付加価値向上を図っています。
同ビルでは、働く人の心身の健康増進を図り、生産性を高める「ウェルネス」を重視し、快適なオフィス環境づくりにも取り組んでいます。共用スペースを有効活用して、ゲストのためのラウンジや社員同士が交流できるラウンジを設置。執務室には自然光を部屋の奥までもたらす採光装置「T-Light® Blind*4」や、潜熱蓄熱材を利用した空調システム*5などを採用し、快適性を向上させています。
いま日本の企業は、さまざまな領域で「働き方改革」に取り組んでいます。ZEBは、省エネルギーだけでなく、「働く場所」を快適化することで、企業の知的生産性に結びつく「健康経営」に寄与するものでなければならないと考えています。オフィスビルの多くを占めるテナントオフィスビルのZEB化は、そこで働く人の健康増進、快適な職場環境を提供できる新たなオフィスビルの価値を創出すると言ってよいでしょう。

  • *4 T-Light Blind:採光と遮光を同時に行う新型ブラインド。自然光を導くことで、快適性と省エネ性が向上する採光装置
  • *5 潜在蓄熱材を利用した空調システム:OAフロア下に潜在蓄熱材を敷設し、暖房温熱や外気冷気を蓄熱することで、快適性と省エネ性が向上する空調システム
TAISEI Wellness Office

ZEBがもたらす社会的なインパクトと
その未来についてどのようにお考えですか?

いま、人間の営みが地球環境に与える影響が大きな問題になっています。その解決のために、2015年に国連でSDGsが採択され、日本政府も「SDGsアクションプラン2018」を作成しました。優先課題として省エネ・再生可能エネルギーがあり、ZEBはその主な取り組みとして位置づけられています。また同年採択されたパリ協定でも、2030年度の温室効果ガスの排出を、2013年度の水準から26%削減することが目標として定められており、ZEBの普及は喫緊の課題となっています。
実際に海外では、すでに建物における省エネルギー性能表示制度の普及によって、省エネルギーレベルに応じて賃料の差が生じるなど、資産価値との連動が確認されています。今後日本でも環境性能の高い不動産の資産価値が向上し、テナント誘致に関しても有利になることが予想されるため、テナントオフィスビルにおけるZEB化の推進が期待されます。
今回のJS博多渡辺ビルに続き、高層ビルで「ZEB Ready」を目指す「近畿産業信用組合本店」(大阪市中央区)や、公共施設で全国トップクラスのZEBを目指す「愛知県環境調査センター・愛知県衛生研究所」(名古屋市北区)を受注し、市場性のあるZEBの普及を加速しています。

TAISEI Wellness Office

併せて、エネルギー分野をとりまく事業環境や社会的課題に柔軟かつ効果的に対応するため、ZEBの効果を単一の個々の建物だけで活用するのではなく、スマートコミュニティへの活用(下記コラム参照)など、街全体でのエネルギーの効率化も進めています。
大成建設のZEBへの取り組みは、SDGs達成につながる取り組みとして位置づけられています。また、将来的には成長市場として期待できる分野として、今後もZEBの進化・普及に全力で取り組んでいきます。大成建設のZEB情報サイトhttp://zeb.librarytaisei.jp/

大型燃料電池のスマートコミュニティへの活用

地域全体のエネルギーの最適利用や災害時のエネルギー融通を実現するYSCP実証事業に参加し、地域のエネルギーマネジメントシステムと連携し、技術センター内でエネルギーの効率利用と快適性の両立を図るシステムを実証しました。(株式会社東芝と共同実施)
2017年度からは、次世代燃料電池(SOFC)を国内で初めてスマートコミュニティのエネルギーとして活用する実証実験を技術センターで開始しています。エリアエネルギーマネジメント(AEMS)を開発・導入し、エリア全体のエネルギーの最適化を目指すほか、敷地外社有施設への電力融通(自己託送)を実験するなど、スマートシティの実現に取り組んでいます

* YSCP実証事業:横浜市が2010年に経済産業省の「次世代社会エネルギー・社会システム実証地域」に選定され、民間企業と共同で取り組んだ、横浜スマートシティプロジェクト実証事業

大型燃料電池のスマートコミュニティへの活用