トップコミットメント

大成建設株式会社 代表取締役社長 村田誉之

人がいきいきとする環境を創造する

大成建設グループは「人がいきいきとする環境を創造する」をグループ理念に掲げています。グループ全役職員が業務の中で絶えず追求している、大成建設グループの「目指す姿」でもあります。
グループ理念を実現するためには、パリ協定やSDGsなどの世界共通の社会的課題の解決に向けた動きに対し、イノベーションを通じて、国内だけではなく世界をフィールドに事業を展開する企業としての使命を果たしていくことが必要です。
新中期経営計画では、当社グループが特に重要と考える8つのESG課題(マテリアリティ)を特定しました。このマテリアリティへの取り組みは、当社グループの土木、建築、開発という中核事業を通じて、SDGs達成に貢献するものです。
本計画に掲げる経営課題・重点施策を確実に実行し、当社グループの社会的価値を高め、また、株主還元と財務基盤の強化を同時に追求することで、すべてのステークホルダーの皆さまから信頼をいただけるよう、役職員一丸となって目標達成に向けて邁進いたします。
ステークホルダーの皆さまにおかれましては、さらなる発展に向けた取り組みにご期待いただくとともに、今後とも変わらぬご支援を賜りますようお願い申し上げます。

2018年8月31日
大成建設株式会社
代表取締役社長
村田 誉之

社長×投資家対談

社長×投資家対談

グループ理念「人がいきいきとする環境を創造する」に
魂を吹き込み、世界へと羽ばたく企業へ

2018年度からスタートした中期経営計画や中長期目標など今後の大成建設グループの新たな姿について、
ESG専門アナリストの櫻本惠氏と意見交換を行いました。
大成建設グループの社会的価値を向上させる取り組みについて投資家の視点から切り出していただきました。

持続可能性を中核に据えた経営を

櫻本氏 長らく資産運用の世界に身を置いてきて、投資家が高く評価する企業と評価されない企業の差は何かを常に考えてきましたが、経営者の課題認識の妥当性や将来見通しなどの先見性が非常に大きなポイントだと考えています。
そこで今回は、村田社長が考える将来の大成建設の姿を教えていただければと思っています。
まず大成建設は今回の中期経営計画において8つのESG課題、マテリアリティ(下表参照)を設定されたわけですが、そこには自ずと優先順位が出てくるのではないかと思います。

村田 まずはガバナンスに関する「コンプライアンスの推進」です。企業が存続する上で利益は不可欠ですがそのためにも社会的信用は重要となります。そこが欠落すると会社の持続的な成長が困難となります。
続いて人材確保に関する「働きがいのある魅力的な職場環境の実現」も重要なテーマです。快適な労働環境を作ることで優秀な人材が集まり、結果として「技術者の育成・担い手の確保」「品質の確保と技術の向上」へと続いていくものと考えています。

櫻本氏 私も最終的に企業は人材だと思っています。優秀な人材がどれだけ集まるか、また優秀な人材を多く育成できるかが、将来の企業価値を高める上で重要だと思います。

村田 「技術者の育成・担い手の確保」ですが、今後建設技能者が高齢化により大量退職する時代を迎えますのでその対策も重要です。
今年度から、国土交通省とも連携し、建設技能者の資格や社会保険加入状況などを登録する「建設キャリアアップシステム」の導入を業界全体で推進しています。
建設技能者の処遇改善につながる制度であり、これを導入・推進していくことで、この業界の魅力が高まり、建設業界への入職者増加にもつながるものと期待しています。
また、入職者の増加への取り組みと並行して、建設作業における生産性向上に向けた技術開発に取り組むことが大切です。AIやIoTを活用した建設用ロボットなど、省力化・省人化への取り組みが大きなイノベーションになると思います。
さらに、アライアンスやオープンイノベーションなどを通して他業種の方々とのコラボレーションにより新しいビジネス領域を創ること、これもポイントだと思っています。
また、私の趣味は山歩きと渓流釣りで、自然に触れる機会も多かったのですが、一個人として自然との調和の大切さを肌で感じています。
環境問題の重要性を認識し、環境の保全と創造に積極的に取り組むことは建設会社の使命であり、マテリアリティの一つである「持続可能な環境配慮型社会の実現」ということにつながっていくものと認識しています。
これらのESG課題、マテリアリティに取り組むことで、大成建設の利益創出と同時に、社会の持続的発展にも貢献できると考えています。

櫻本氏 将来の持続可能性を考え、ESGやSDGsを中核に据えて経営されているということなのですね。

村田 そうです。SDGsは2030年の社会のあるべき姿に向けた社会のニーズですが、そこには多くのビジネスチャンスがありますし、経営戦略や企業活動に組み込むべき課題だと考えています。

大成建設グループの重要なESG課題(マテリアリティ)

守りのガバナンスと攻めのガバナンス

櫻本氏 アナリストとして注視するのはやはり企業のガバナンスです。先ほど、「コンプライアンスの推進」ということで、いわば守りのガバナンスの重要性を指摘されました。一方で、持続的な成長を目指した攻めのガバナンスも知りたいというのが投資家の視点でもあります。

村田 海外事業については前回の中期経営計画(2015-2017)でも経営課題としましたが、依然として成功体験が不足しているのが現状です。しかし、今回の中期経営計画で、海外事業の持続的な成長と海外市場において真に通用する企業体質への転換を最重要課題とし、合計3,000億円の成長投資のうち、1,500億円を海外事業及び注力分野の強化のために配分していきます。海外市場に企業の成長を求める上で、過去の教訓を踏まえた実効的な攻めのガバナンスが必要不可欠だと思います。

  • * 注力分野:「エネルギー・環境」「都市開発・PPP」「リニューアル」「エンジニアリング」

海外事業の持続的な成長

櫻本氏 今回の中期経営計画の中で、大成建設らしい、村田社長のこだわり、思いというものはどの辺りでしょうか。

村田 今回の計画策定にあたっては、取締役会で幾度も議論を重ねました。出席されている社外取締役は経営者として、あるいは外交官として幾重もの経験と知見を有している方々です。その方々からも大成建設の将来のあるべき姿について忌憚のない意見を出してもらいました。その成果として、中長期目標の「事業規模2兆円」を掲げた意義というのは大きいと思っています。
それと同時に、「海外事業の持続的な成長」が第一の経営課題であると社内外に意思表示したことも、将来の当社のあるべき姿を明確に示した点で大きなことだと思います。
今後の事業環境を考えてみると、国内建設市場は縮小傾向にあると想定せざるを得ません。その環境下で「事業規模2兆円」という目標は、国内市場の中だけで達成するのは困難だと思っています。私が先頭に立ち、役職員一丸となってやり遂げたいと思います。

櫻本氏 海外プロジェクトは、発注者と受注者が阿吽の呼吸で工事が進められる国内のプロジェクトとは異なる難しさがあります。社長が特にこだわりを持って取り組む海外展開では、どのような方法論を考えておられるのでしょうか。

村田 これまでも海外の工事に携わってきましたが、その規模や収益力で同業他社に見劣りしていることは否めません。ですから、この3年間で他社に追いつくために各国の現地ゼネコンとパートナーを組む、また海外開発案件への事業投資も必要です。そういう投資をもとに、将来は世界のコントラクターの中に、日本のゼネコンとして上位に名前を連ねるぐらいのレベルまで到達したいと思います。

櫻本氏 確かに日本のゼネコンは、まだ世界で目立つ存在ではないですね。

村田 海外の事業も発注者満足が最終目標であり、発注者と協議しながら安全・安心な建造物を完成させて引き渡すという点では国内の事業と何ら変わりはありません。これまでの海外事業で学んだ教訓を活かし、リスク管理を徹底したうえで、発注者に寄り添った日本流の良さを海外に広めていけば、もっと収益性の高い仕事が出来ると思います。

価値創造プロセスと経営の一貫性を感じる情報開示の重要性

櫻本氏 多くの投資家にとって、今回の中期経営計画の一番の関心事はサステナビリティ(持続性)にあって、中長期的な企業価値向上の可能性を注視しています。
今回の中期経営計画でも、村田社長は将来に向けての布石であるという言い方をされています。これが達成できれば、市場関係者が期待している中長期での大成建設の成長へとつながっていくイメージが生まれます。
多くの経営者と会って感じるのですが、価値創造プロセスやマテリアリティと実際の経営に乖離があり、一貫性や整合性が感じられない企業が少なくありません。もちろん、時々の環境で変化するのは当然ですし、無理に合わせる必要もありませんが、一貫性や整合性が外部からも判断できる情報開示があると、非常にありがたいと思うのですがいかがでしょうか。

村田 今回の中期経営計画は、社会的課題の中から有識者の意見を踏まえたマテリアリティを特定し、それを具体的な施策立案のプロセスに落とし込んで作成しています。社会的な課題は絶えず変化していますが、その変化にいかに即応した政策を実施し、それを社内外にわかりやすく発信していく姿勢が重要だと考えています。

櫻本氏 絶対に押さえるべき肝になる部分があり、その部分さえ外さなければ企業価値向上へつながるマテリアリティが具体的にイメージできると思いますし、そこに一貫性と整合性が現れてきます。実際に必要だからこそマテリアリティが選ばれているし、実際の経営がそこから逸脱するはずがありません。

村田 他産業とは異なる我々ゼネコンがステークホルダーの皆さまに示せることといえば、施工実績と人材です。営業担当者から始まって、プロジェクトに関係する全ての人間が発注者から信頼される関係にならなければいけません。たとえば数年前から、アニメーション作家の新海誠さんに監督をしていただきテレビCMを作っていますが、若い社員が海外でいきいきと仕事をするイメージを実際に認知していただくということなのでしょう。

櫻本氏 海外で働く社員をテーマにしたCMは、まさに若い人に訴求できる内容ですし大成建設というブランドは、一般社会にも十分に浸透していると思います。
ところが建設業界全体のイメージがあまり芳しくないところがあって、優秀な若い人材が他業界を選択してしまうということが起きています。社会のサステナビリティを考える上で、建設業こそまさに不可欠な存在です。やはり大成建設が率先し、建設業界のイメージアップに力を注いで欲しい。それをぜひ社長に期待したいと思います。

大成建設グループが「選ばれる」ために必要なことは

櫻本氏 私はESGアナリストとして市場全体の課題を解決し底上げを図るということを任務として与えられていますが、建設業界すべての会社の底上げを図るのはなかなか困難で、今後は徐々に選別・淘汰されるのではないかと感じています。

村田 我々としても「選ばれる」ということは、今後さらに重要になってくると思っています。発注者はもちろん、専門工事業者からも「一緒に仕事がしたい」と選ばれるということ、また学生に就職先として大成建設を選んでもらうことも非常に重要です。
その観点から考えて重要なのが、大成建設のグループ理念、「人がいきいきとする環境を創造する」です。なによりも、まず自分たちがいきいきと仕事をしていなければ、社会に貢献し人を幸福にはできません。日常の業務を通じて社会にも貢献できる。この意識を当社グループで働くすべての役職員と専門工事業者が共有したいと考えています。
また私どもの会社のグループ理念体系には「大成スピリット」(下図参照)があり、最初に掲げているのが「自由闊達」という言葉です。これは諸先輩方が築き上げてきたもので、私もこの会社で育っていく中で実感してきました。大成建設の一番の良さ、誇りであると考えています。

櫻本氏 そうですね。「自由闊達」の説明文の冒頭で「多様性を尊重し」と謳われており、ダイバーシティ推進に早くから取り組んでいると感じておりました。
投資家は、多くの企業を比較検討しています。その中で、やはり「大成スピリット」は厳然と存在するように感じています。それは大成建設が大成建設であり続けていく遺伝子のようなもので、働く人や場所、環境が変わったとしても、強く引き継がれていくのですね。

村田 将来に向けた布石を打つとすれば、「人がいきいきとする環境を創造する」という言葉により魂を吹き込んでいく、そして「自由闊達」「価値創造」「伝統進化」という3つの「大成スピリット」を磨いていく、それが実は大成建設の持続的な発展に、もっとも強く直結するように感じています。
少子高齢化や環境問題などの社会的課題と、それに対するSDGsやESGといった取り組みや貢献が求められる今、まさに時代が変わってきて、これらの言葉がより意味を持ってきたように思います。

櫻本氏 確かにそうですね。そのお考えでぜひ経営を推進していただければと思います。本日はありがとうございました。

大成スピリット