リリース

病床毎にエアロゾル感染を防止する気流制御ユニット「T-Aerosol Guard」を開発

既存多床室の改修により感染防止対策が施された病室を実現

2023年7月31日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、病床毎の感染防止を目的とした気流制御ユニット「T-Aerosol Guard」を開発しました。またこの度、医療法人美心会黒沢病院(理事長:黒澤功)において、本技術を含む複数の自社開発技術を導入して既存多床室を改修することで、感染防止対策が施された病室を実現しました。

 昨今、新型コロナウィルス感染症の世界的な流行を背景に、感染防止技術の早急な確立と普及が求められています。また、現在開業中の病院などでは既存の多床室に感染防止技術を導入することで、感染症に対応できる病室に改修するなど、個別病床として恒久的な整備が検討されています。
 そこで当社は、これまでの感染対策に向けた取り組みを踏まえ、この度、従来の一般的な多床室の病床を対象にエアロゾル※1感染の防止を目的とした天井設置型の気流制御ユニット「T-Aerosol Guard」(図1参照)を開発し、既存病床を感染対応用に改修しました。
 また、当社開発技術である規則正しい体内リズム(サーカディアンリズム)を正常に保ち無線で調光調色可能な個別照明「T-Luminous Bed Light Ⅱ」、病室の前室等に深紫外線を利用した殺菌灯「T-LED DUV Light」を同時に導入することで、患者や病院スタッフの快適性と安全性をより高めた多床室を実現しました。

写真1 エアロゾル感染対応多床室

写真1 エアロゾル感染対応多床室

 多床室での導入技術の特徴は以下のとおりです。

気流制御ユニット「T-Aerosol Guard」

各病床に設置し、個別にエアロゾル感染を防止(図1参照)

個々の病床を取り囲むカーテン内の天井に設置した本機器により患者から排出された エアロゾルを効果的に吸い込み病床毎に感染を防止します。本機器は病院設備設計ガイドライン(空調設備編)HEAS-02-2022に準拠し、省エネ性に配慮した循環換気装置などを組込み、感染症病床に必要とされる換気回数12回/時間を確保しています。吹き出し口の形状や位置については任意に設置することが可能なため、効果的な気流制御を行えます。また、室内空気の吸い込み口に設置されたHEPAフィルターにより機器内部の汚染を防ぐとともに、フィルター保持方法を改良し、汚染されたフィルターを安全に交換可能としました。

図1 気流制御ユニット「T-Aerosol Guard」の設置効果

図1 気流制御ユニット「T-Aerosol Guard」の設置効果

調光調色照明「T-Luminous Bed Light Ⅱ」

窓がない病床でも体内リズムの形成を促し、健康をサポート(図2、写真3、4参照)

日光を受けることができない窓のない病床では、サーカディアンリズムが乱れ、不眠症や生活習慣病を引き起こしてしまう可能性があります。本技術は、既開発の「T-Luminous Bed Light」に対して、新たに無線による調光調色および通信機能を追加し、タブレットなどを用いて操作でき、病院スタッフでも容易に病床毎に照明の調光・調色状況や明るさをフレキシブルに変更することが可能です。太陽の一日の色温度や明るさをスケジュール運転によって再現し、適切な時間に適切な量の光を提供します。患者・スタッフの体内リズムに配慮した照明により、健康維持に不可欠な「規則正しい一日のサーカディアンリズム」の形成を促し健康をサポートします。

図2サーカディアンリズムの概念

図2サーカディアンリズムの概念

写真3 ベッドライト外観 写真4 ベッドライト外観(上配光4000K,下配光4000K)  (上配光2700K,下配光4000K)
写真3 ベッドライト外観
(上配光4000K,下配光4000K)
写真3 ベッドライト外観 写真4 ベッドライト外観(上配光4000K,下配光4000K)  (上配光2700K,下配光4000K)
写真4 ベッドライト外観
(上配光2700K,下配光4000K)

深紫外線利用空間殺菌灯「T-LED DUV Light」

利用者の安全を確保しながら、接触感染を防止

本機器は、机などの表面に付着したウィルスに対し紫外線を照射することで殺菌を行います。一般的な紫外線殺菌灯に使用する蛍光灯に比べ長寿命なLED を採用し、人がいない状態で照射ができるよう当社開発の人検知センサー「T-Zone Saver」を設置しました。室内での人の在・不在や扉の開閉、使用中を表示する手元スイッチの点灯などから判断して、不在の場合にのみ室内全体に深紫外線照射することで、施設利用者の安全を確保した状態で運用でき、接触感染を防止します。

写真5「T-LED DUV Light」外観
写真5「T-LED DUV Light」外観

 また、上記の導入技術を用いた病床の改修項目および導入効果は以下のとおりです。

【導入技術の改修項目と導入効果】
改修項目

導入効果

気流制御ユニット「T-Aerosol Guard」を各病床に1台ずつ設置 病床毎および室内全体での換気能力を高め、エアロゾル感染を防止

無線で調光調色可能な照明「T-Luminous Bed Light Ⅱ」を各病床に1台ずつ設置

間接照明機能に加え、体内リズム(サーカディアンリズム)対応機能の付加により快適性を向上

深紫外線利用空間殺菌灯「T-LED DUV Light」を病室の前室等に設置

表面殺菌により接触感染を防止

既存建具、空調機、点検口、スイッチボックス等のすきまへのシール敷設

気密区画を形成し、陰圧空間を実現により、外部への空気流出を防止

陰圧管理に必要な前室および感染病床専用の汚物室、トイレを設置

エアロゾル感染、接触感染を防止

 今後当社は、病院施設の新築・改修において、これら開発技術の適用により、感染対策を施し快適性と安全性を併せ持った多床室の普及・展開を目指すとともに、オフィスや商業施設などに対しても提案を進め、感染防止技術として広く普及を図ってまいります。

  1. ※1

    エアロゾル:空気中に漂う微細粒子でくしゃみや咳の水分が蒸発してウィルスだけが残った状態。

参考資料

ニュースリリース:深紫外線を利用した空間殺菌灯「T-LED DUV Light」と安全制御システムを開発 https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2021/210427_8134.html