ごあいさつ

常務執行役員
技術センター長長島 一郎-
ここに,大成建設技術センター報第58号をお送りします。
当社グループでは,グループ理念「人がいきいきとする環境を創造する」のもと,2021年に策定した【TAISEI VISION 2030】の中で,「人々が豊かで文化的に暮らせるレジリエントな社会づくりに貢献する先駆的な企業グループ」を,目指す姿として掲げています。これを達成するため,2024年度からスタートした中期経営計画では,取り組むべき技術開発領域を,「社会・環境問題」,「社会基盤強化」,「地方創生」,「フロンティア対応」の4つに特定しました。
本年4月に開幕した大阪・関西万博では,社会・環境問題に対応した当社の技術として,シグネチャーパビリオン「EARTH MART」の床仕上げ材に,CO2排出量の収支マイナスを達成した「T-eConcrete/Carbon-Recycle」を提供し,またEXPOアリーナには,海洋プラスチックをアップサイクルした材料を外装材に使用した物販棟※1を提供しました。
本年は,八潮市で発生した道路陥没事故や,各地の大雨被害など,インフラ設備の老朽化や,自然災害に対する都市の脆弱性が顕在化した年でもありました。八潮市の陥没事故では,当社も調査段階から対応に協力し,現在も復旧工事の一部を担っていますが,人命や財産を守る社会基盤の整備は当社の重要な使命の一つであり,インフラ設備の保全・補修技術や浸水対策技術など,引き続き災害に強い安全・安心なまちづくりと生活環境の提供に取り組んで参ります。
地方創生は,日本を元気にするために必須と考えています。雲仙市と「観光・防災・まちづくり包括連携協定」を締結し,観光客の交流促進や賑わいの創出と,災害時の安全・安心の確保に貢献する,AI・ARを活用したサービスの実用化を目指しています。加えて長崎県とは,「デジタル技術活用によるまちづくりに関する連携協定」を締結し,地域活性化に取り組みます。埼玉県とは「埼玉県森林づくり協定」を締結し,建設に使用した秩父杉の伐採地で植林活動を行う,「森林の循環モデル」を実践しています。また地域課題解決のための自動運転技術の実証を,(株)ティアフォー他との社外連携により進めているところです。
幸手市に新たに開設する「大成建設グループ次世代技術研究所」では,建物のライフサイクルCO2排出量をゼロとする「ゼロカーボンビル」を実現します。調達・施工・運用の各段階において,木質及び低炭素建設資材の活用,施工時の脱炭素燃料の採用や先進的な省エネルギー・創エネルギー技術の導入など,CO2排出量削減に向けた様々な取り組みを進めています。
本号の特集テーマは,当社のグループ理念でもある「人がいきいきとする環境を創造する技術開発」としました。「対談」では,世界に先駆けて“ミニ肝臓”の開発に成功し,「新しい医療の再定義」の概念である「ストリートメディカル」を提唱する,横浜市立大学 先端医科学研究センター コミュニケーション・デザイン・センター長の武部貴則特別教授をお招きし,建設と医療が連携したまちづくりが拓く未来について議論させて頂きました。ウェルビーイングを実現する都市「イネーブリングシティ」の取り組みなど,多くの示唆に富むご意見を頂きました。本号では,7編の「特集論文」のほか,各分野別に51編の技術開発成果を,論文としてご報告いたします。皆様におかれましては,この大成建設技術センター報をご高覧頂き,ご指導ご助言を賜りますとともに,ご活用いただきますようお願い申し上げます。
2025年12月
