ごあいさつ

常務執行役員 技術センター長 長島一郎

常務執行役員
技術センター長
長島 一郎

ここに,大成建設技術センター報第57号をお送りします。

2024年1月1日に石川県能登半島で最大震度7の揺れを観測する大地震が発生し,建物の倒壊や津波の被害などで死者は400人以上に達しました。
被災された方々やそのご関係者の皆様に心よりお見舞い申し上げます。
当社は発災後,直ちに本支店社員が現地に乗り込み,ドローンによる写真測量やT-iDigital Field(現場管理データ連携プラットフォーム)など高度なデジタル技術を導入し,二次災害の防止と速やかな災害復旧に取り組み,1月4日から国道249号線などの道路啓開を開始しました。また,8月8日には日向灘を震源とする地震が発生し,この地震の発生に伴い,制度ができた2017年以来初めて南海トラフ地震臨時情報「巨大地震注意」が発表されました。この様な大規模災害を想定して,11月1日には南海トラフ地震の発生形態の一つである「半割れケース」の発生を想定した「大規模災害対策訓練」を全社で実施し,「臨機応変の対応力の強化」を図っています。
2021年6月に定めた【TAISEIVISION 2030】では,「人々が豊かで文化的に暮らせるレジリエントな社会づくりに貢献する先駆的な企業グループ」を目指しています。引き続き,弊社はインフラ整備や災害に強い安全・安心なまちづくり,高品質な建物と生活環境の提供に取り組んで参ります。

2024年度から,新たな中期経営計画(2024-2026)をスタートさせました。財務政策,人的資本,技術開発を経営の基本方針として設定しました。技術開発の基本方針では,取り組むべき技術領域を4つの領域(社会・環境問題,社会基盤強化,地方創生,フロンティア対応)に特定し,ZEBやT-e Concrete®等の環境・社会基盤強化技術等の強みを生かし,当社グループに社会が求める技術力を追求し,ブラッシュアップで差別化を行います。また喫緊の課題である担い手不足の解消に向け,生成AI・自動化・遠隔化等の技術を活用し,生産性を向上,生産プロセスの革新を推進します。これまでの成果として,生成AIと検索システムを融合し,建築施工に関する専門的な質問に対して正確な回答を迅速に提供できる建築施工技術探索システムや360度カメラで撮影した動画を基に工事の進捗状況や工事用資機材の保管場所をAIで自動認識させ,図面に描画するシステムを開発し,現業での活用を開始しています。

また,事業の多様化による収益機会を増やし,将来の新たな事業の柱を創り出すために,新規事業創出支援プログラムを開始しました。これは,保有する技術や社員のアイデアを従来の建設事業とは異なる形態で事業化し,アライアンス等を通じて様々な外部リソースも活用しながら将来のビジネスを育成することを目的としています。このプログラムを通して,様々な事業アイデアが自由闊達に産み出される企業風土の醸成も目指しています。

本号の特集テーマは「技術開発と事業領域の拡大」としました。特集は「対談」と「特集論文」として構成し,その他の研究開発論文を「一般論文」とする二部構成としました。「対談」では,イノベーション研究,戦略論および組織論などがご専門で,大学での研究・教育活動の他,中間管理職および経営トップへの助言も日々行われている一橋大学 イノベーション研究セン ター長 軽部大教授をお招きし,『技術開発を核とした事業領域の拡大』をテーマに今後の技術開発の方向性やこれに取り組む姿勢について議論させていただき,示唆に富んだご意見をいただきました。特集論文のほか,材料,構工法,防災,環境,AI/ICTの分野別に,技術開発成果を56編の論文としてご報告いたします。各論文にはSDGsの17目標との関連を表記しています。

皆様におかれましては,この大成建設技術センター報をご高覧頂き,ご指導ご助言を賜りますとともに,ご活用いただきますようお願い申し上げます。

2024年12月