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埋土種子による印旛沼の希少沈水植物の再生

秋吉 美穂*1・吉田 光毅*1・岡田 美穂*2・百原 新*3

The Regeneration of Rare Submerged Plants from Soil Seed Bank of Lake Inba

Miho AKIYOSHI, Kouki YOSHIDA, Miho OKADA and Arata MOMOHARA

研究の目的

湖沼をはじめとする水辺は,陸地から水中へと移行する植生帯が見られ,抽水植物,浮葉植物,沈水植物等が生育しています。これらの水生植物は水質の浄化に寄与すると共に,多くの生物の住みかとなっています。これらの水生植物は,水質汚濁や湖岸の護岸整備等による環境変化に伴い,その3分の1が絶滅の危機に瀕しているといわれ,中でも水中に植物体を没して生活する沈水植物への影響は深刻です。本研究では,多様な生物の生息する水辺の植生帯を取り戻すために,干拓地地下の土壌(かつての湖底)に含まれている埋土種子(シードバンク)からの沈水植物の発芽を試みました。

技術の説明

千葉県の印旛沼を対象として,以下の手順で行いました。
・干拓地の地下土壌を採取(植物遺体や種子の多く含有する層の採取)
・採取土壌の一部から含有する種子の分析(埋土種子の確認)
・屋外水槽による発芽実験(発芽した植物種の確認)

主な結論

採取した湖底土壌から,環境省のレッドデータリストで絶滅危惧種に相当する希少種を含む沈水植物の発芽に成功しました。種子の含まれていた土壌は今から50年前の湖底(底泥)と推定され,印旛沼の干拓以前に生育していた水生植物の埋土種子から水草が再生することが明らかとなりました。今後,土木工学的な手法と合わせて,水辺の植生帯再生に取り組んでいきます。

*1 技術センター 土木技術研究所 水域・生物環境研究室
*2 東京支店 代々木シールド工事作業所
*3 千葉大学 園芸学部