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床衝撃音対策用仕上げ床の研究開発

平松 友孝*1

Development of Floor Covering System for Floor Impact Sound Reduction

Tomotaka HIRAMATSU

研究の目的

近年の集合住宅では,床の仕上げに乾式二重床が多く採用されています。この仕上げ工法は,コンクリートスラブとの間に空気層を有しており,給水,給湯,ガス管などを配管できることから多く普及されています。しかしながら,子供の飛跳ね,駆け廻りなどにより発生する重量床衝撃音の乾式二重床施工による低減効果が設置するコンクリート床スラブの厚さ,平面寸法・寸法比によって異なるため,確実な対策が出来ないこと,また平均的には乾式二重床施工によりコンクリート床スラブの場合よりも重量床衝撃音が増幅してしまうため,その分を見込んでコンクリート床スラブを厚くしなければならないという現状があります。また,以上のことから,デベロッパーなどの発注者,設計事務所,住民とのトラブルの大きな原因となっています。このような不具合を回避することを目的に,重量床衝撃音を増幅させない新しい仕上げ床を開発しました。

技術の説明

開発床は,下地を根太とし上に合板を積層して構成したものであり,乾式二重床で構成されるようなゴム脚をばね,積層板を質量とする振動系は有しないので,増幅する要素としては板の曲げ振動系だけとなります。板の曲げ振動系の固有振動数は,板の厚さと根太の間隔などにより決定されますが,これが重量床衝撃音の一般的な決定周波数である63Hz帯域に入らないように板の厚さと根太の間隔を決定しています。結果として,63Hz帯域における床衝撃音は増幅しない画期的な床仕上げシステムとなっています。軽量床衝撃音は積層合板の上に張る直張りフローリングで低減します。

主な結論

開発床は,63Hz帯域における床衝撃音は増幅せず,また設置床スラブによらず一定の低減量が得られるため,予測精度の高い確実な対策を実施できます。したがって,デベロッパなどの発注者,設計事務所、住民とのトラブル回避に寄与できるものと想定されます。また,乾式二重床では重量床衝撃音の平均的な増幅量を見込むためコンクリート床スラブの厚さを17%程度(例えば300mm厚を350mm)厚くせざるをえなかったのに対して,開発床は見込む必要が無いため,コンクリート床スラブの厚さを従来より薄くすることが可能となります。したがって,構造躯体の低減,すなわちコストダウンに寄与できるものと判断されます。

*1 技術センター 建築技術研究所