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ダクタルを用いたPC歩道橋の特徴と事例

日本初のダクタルによる連続桁橋「三兼池橋」を例として

武者 浩透*1・石田 有三*2・稲原 英彦*2

The Features and Application of Ductul PC Pedestrian Bridge

Japanese First Ductal Continuous Girder Bridge, Mikaneike Bridge.

Hiroyuki MUSHA, Yuzo ISHIDA and Hidehiko INAHARA

研究の目的

超高強度繊維補強コンクリートであるダクタルの構造物への適用においては,その超高強度や高耐久性により部材の大幅な薄肉化と軽量化が実現できます。また,桁高の低減や長スパン化も可能であるため,重厚なコンクリート構造物のイメージを払拭した軽快な構造物が可能となり,景観設計時にも有効な材料です。これら利点により,ダクタルの適用においては橋梁分野,特に歩道橋分野での適用が先行しており,ダクタルの特性を有効に活用するための新しい設計手法や,部材の製作技術,施工方法の開発を行ってまいりました。

技術の説明

プレストレストコンクリート歩道橋(PC歩道橋)では,利用者の利便性を確保するだけではなく,その地域への憩いの場の提供や,周辺景観への調和が求められる場合が多くあります。今回事例とした「三兼池橋」では,シンプル&シンボリックをデザインコンセプトとし,桁高の抑制や長スパン化,高欄や照明の工夫などにより,周囲の景観を乱すことなく,新住宅街区の象徴的な橋に仕上げています。橋桁の計画では,軽量化を活用して橋軸方向に10mといった大型ブロックが可能となり,部材の製作のみならず架設においても合理化が図られました。また,上床版と主桁を分離製作し,架設現場で孔開き鋼板を用いて結合するなど,新しい部材の結合技術も導入致しました。

主な結論

ダクタルをPC歩道橋へ適用することにより,8~20cmと従来の1/2~1/4の部材厚や,40mを超えるスパンを有する橋など,従来のコンクリートでは達成できなかった構造の実現が可能です。それには単に新しい材料を用いるだけではなく,その材料の特性を活かした新しい設計・製作・施工技術が伴ってのみ,実現が可能となります。ダクタルを用いることにより,軽快で景観性に優れたPC歩道橋を実現できるとともに,高耐久性を兼ね備え,近隣住民に末永く親しんでもらえる橋を提案いたします。

*1 技術センター 土木技術開発部 土木技術開発プロジェクト室
*2 土木本部 土木設計部