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堆積層が距離減衰式の予測誤差に与える影響

内山 泰生*1・糸井 達哉*2

Effects of Sediment Depth on Ground Motion Prediction Equations

Yasuo UCHIYAMA*1 and Tatsuya ITOI*2

研究の目的

東海・東南海・南海地震などのマグニチュード8クラスの地震による長周期地震動が高層建物に大きな影響を与えることが懸念されています。そのため,長周期地震動を精度良く評価するための地震動評価技術の開発が求められています。本研究では,地震動評価技術の一つである距離減衰式による長周期地震動の評価精度向上を目的として,地震観測記録を用いた検討を行いました。

技術の説明

距離減衰式は,地震のマグニチュードや震源からの距離など少ないパラメータで地震動強さを予測することができる方法です。しかし,必要となるパラメータが少ない分,地震動の複雑な特徴を評価できないことが指摘されています。そこで,地震観測記録を分析することにより,当社がこれまでに提案してきた応答スペクトルの距離減衰式に対する長周期成分の予測誤差が,堆積層厚さと相関があることが分かりました。

主な結論

日本で発生した7つの地震で得られた地震観測記録を分析し,堆積層厚さが2000(m)を越えるような地点では,既往の距離減衰式では過小評価になっていることが分かりました。この影響は,周期5秒で最大2.7倍程度の予測誤差となります。本研究では限られた地震観測記録の分析結果を用いて,距離減衰式の予測精度に与える堆積層厚さの影響を検討しました。今後は,数値シミュレーション等も実施し,より精度の高い長周期地震動の評価式について検討を行っていく予定です。

*1 技術センター 建築技術研究所 防災研究室
*2 元 技術センター 建築技術研究所 防災研究室(現 東京大学)