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Fc200N/mm2の超高強度コンクリートの実用化に関する研究

渡邉 悟士*1・黒岩 秀介*1・陣内 浩*1・山本 佳城*1・並木 哲*1・寺内 利恵子*2

Study on Practical Application of Ultra High Strength Concrete with a Design Strength of 200MPa

Satoshi WATANABE*1, Shusuke KUROIWA*1, Hiroshi JINNAI*1, Keiki YAMAMOTO*1, Satoru NAMIKI*1 and Rieko TERAUCHI*2

研究の目的

近年,お客様のニーズの多様化にともない,超高層鉄筋コンクリート造住宅などでは,柱間隔が大きく,自由度の高い空間が好まれるようになりました。これらの実現には,より小さい断面で大きな荷重を支える柱の構築を可能にする超高強度コンクリートの適用が有効です。そのため,当社では超高強度コンクリートの開発に注力し,設計基準強度(Fc)160N/mm2までの超高強度コンクリートの実施適用を実現してきました。ここでは,空間の自由度や意匠性のさらなる向上を実現するために,これまでに実施適用したFc160N/mm2を上回るFc200N/mm2級の超高強度プレキャストコンクリート柱部材を自社プレキャストコンクリート工場で安定的に製造する技術の開発を行いました。

技術の説明

Fc200N/mm2級の超高強度プレキャストコンクリート部材は,自社工場の蒸気養生設備を利用して90℃熱養生を施し,従来は十分に反応しきれていなかったセメントの反応を促進させることにより実現します。さらに,熱養生を施した場合のコンクリートの強度発現が良好なセメント(結合材)の開発など,製造条件に適したコンクリート調合の設定により,比較的早期(材齢7~14日程度)に構造体コンクリート強度200N/mm2以上が実現可能です。また,このようなきわめて高い強度を有するコンクリートを安定的に製造するために,今まで当社で開発,適用してきた単位水量管理や粗骨材(砕石)厳選技術といった独自の品質管理技術も活用します。

主な結論

試験室実験により,密実な充填を実現するための高い流動性と分離抵抗性,さらに優れた強度発現性を持つ超高強度コンクリートを開発しました。自社工場の製造設備を用いた実製造検討実験により,構造体コンクリート強度が200N/mm2を超える実大柱部材の製造を実現しました。また,蒸気養生が終了した時点(材齢7~14日程度)で,部材とともに蒸気養生した供試体により構造体コンクリート強度管理が行えるため,要求される強度特性を満足していることを確認したプレキャストコンクリート部材を早期に現場で取り付けることも可能になると考えられます。

*1 技術センター 建築技術研究所 建築構工法研究室
*2 建築本部 技術部 建築技術部