リリース

土砂ホッパーの土量計測・可視化技術「ホッパースキャナ」を開発

-ニューマチックケーソン工事の掘削土搬出作業を効率化-

2024年1月22日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、「生産プロセスのDX」の一環として、橋梁や構造物の基礎部構築などに活用されるニューマチックケーソン※1工法による土砂掘削工事において、掘削土を一時的に蓄えておく土砂ホッパー内の土量をセンサで計測・可視化する技術「ホッパースキャナ」を開発しました。本技術の適用により、複数基の土砂ホッパー内の土量状態を瞬時かつ正確に把握し、掘削土を場外に搬出するダンプトラックの的確な配車・誘導が可能となり、搬出作業の効率化と生産性の向上が図れます。

 ニューマチックケーソン工法による掘削工事では、掘削土をバケットで吊り上げ、土砂ホッパー内に投入し、満杯になった時点でホッパー下部からダンプトラックに移し替えて場外へ搬出します。(写真1参照)従来は作業員が土砂ホッパー上部から目視確認した土量状態の情報を基に、掘削計画のほかホッパーへの投入順序や土砂を搬出するダンプトラックの配車などを立案していました。しかし、この方法ではホッパー内の土量を正確には把握できず、ダンプトラック台数の過不足が生じ、作業効率の低下が課題となっていました。
 そこで当社は、土砂ホッパーの櫓に設置した土量センサを用いて、ホッパー内の土量を瞬時かつ正確に計測し、タブレット端末などに表示するとともに、変化する土量状態を三色回転灯で可視化することで、効率的な掘削土の搬出作業を可能とする「ホッパースキャナ」を開発しました。

本技術の特徴は以下の通りです。(写真2~4参照)

  1. 1

    土砂ホッパー内の土量を高精度センサにより常時計測・可視化
    土砂ホッパー上部に設置した高精度土量センサを用いて、ホッパー容量50m3に対して±1.0m3未満の誤差で土砂ホッパー内の土量を常時計測し、タブレット端末等に表示します。これにより、工事関係者間で情報共有が図れ、ケーソン内の正確な掘削計画や土砂搬出計画の立案が可能となります。

  2. 2

    回転灯でダンプトラックを誘導し土砂搬出作業を効率化
    土砂ホッパー内の土量に応じて土砂搬出のタイミングを三色回転灯により自動的に表示するため、オペレーターは搬出の優先順位を視覚的に判断し、的確にダンプトラックを誘導することで搬出作業の効率化が図れます。

 本技術は2022年度末から開発を進め、現在、東京都水道局発注の王子給水所(仮称)配水池築造工事(大成・岩田地崎・関電工JV)に導入し、その性能を確認しました。本工事は約1万m2の敷地面積内に延べ3500m2の躯体を構築する工事で、常時8基の土砂ホッパーが稼働しています。掘削作業は土砂ホッパー1基につきバケット2台および掘削機械3台により実施されており、このような作業状況のもとで良好な結果が得られました。(図1参照)

 今後当社は、ニューマチックケーソン工事の効率化と安全な施工管理を行うため、土砂を搬出する多数のダンプトラックを効率的に運用できる本技術の普及・展開を進めてまいります。また、本システムによって蓄積されたデータを基にAIを活用したダンプトラック配車計画作成にも着手する予定です。

写真1 ニューマチックケーソン工事における掘削土の流れ
図1 王子給水所(仮称)配水池築造工事の概要
  1. ※1

    ニューマチックケーソン:ニューマチックケーソンは、コップを逆さにして平らに水中に押し込むと、空気の圧力により水の浸入を防ぐことができるという原理(風呂での実験状況)を応用した施工法です。地上で鉄筋コンクリートの函体(ケーソン)を築造し、ケーソン下部の刃口部内側に設けた掘削作業を行う空間(作業室)に外周の地下水圧に見合う圧縮空気を送り込んで地下水の浸入を防ぎ、常にドライな状態を確保しながら、作業室内で掘削・排土・沈下を繰り返して所定の深さまでケーソンを沈設し、本体構造物として設置する施工法で、橋梁の基礎、シールドトンネル立坑、地下構造物などに幅広く用いられています。

    ニューマチックケーソンの原理 ニューマチックケーソン施工イメージ
DX認定
  • DX認定とは「情報処理の促進に関する法律」に基づき、「デジタルガバナンス・コード」の基本的事項に対応する企業を国が認定する制度です。