リリース

AI画像認識技術を活用した粒度管理システム「T-iTsubumil」を開発

-大型特殊計測設備を構築せずにリアルタイムで高精度な材料品質管理を実現-

2024年1月18日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、「生産プロセスのDX」の一環として、連続撮影した画像からAI画像認識技術を活用した粒度解析に基づき、コンクリート骨材やダム堤体材料の粒度をリアルタイムかつ高精度に把握することができる粒度管理システム「T-iTsubumil」を開発しました。本技術の適用により、大型の特殊な計測設備を構築せずに使用材料の粒度分布が高精度で測定できるとともに、その実施結果はクラウド上に保存され遠隔からも即時に確認できるため、品質管理の省人化・省力化が図れ、建設工事の更なる生産性向上が可能となります。

 ロックフィルダムや台形CSGダムなどに用いる堤体材料は、ダムサイト近傍の原石山や河床からの現地発生材で調達されるため、品質のばらつきが大きく、材料性状の経時変化をリアルタイムに監視する必要があります。当社では、画像解析技術を活用して粒度試験の所要時間を大幅に短縮できる粒度解析システムを開発し、2016年よりダム建設現場で使用材料の品質管理の省人化・省力化を進めてきました。しかし、従来の画像解析にはストロボ撮影用機器や暗室などの大型で特殊な計測設備を現地に構築する必要があり、また解析結果も現地での確認に限られるため情報共有に遅れが生じるなどの課題がありました(図1参照)。
 そこで当社は、デジタルカメラで連続撮影した土質材料の画像からAI画像認識技術を使い、粒度分布を即時に算出する粒度管理システム「T-iTsubumil」を開発し、この度、ダム建設現場において堤体材料の品質管理に導入しその効果を確認しました。

本システムの測定手順および特徴は以下のとおりです。(図1参照)

【測定手順】

  • ベルトコンベヤなどで搬送される対象材料を上部からデジタルカメラで撮影し、材料画像を取得。

  • AI画像認識により、材料画像に映る各材料粒子を認識し、輪郭を識別。

  • 材料の管理粒径(例:80mm、40mm、20mm、10mm、5mm)ごとに重量換算することで、通過質量百分率※1を求めて粒度分布を算出。

  • 算出結果はリアルタイムにクラウドに保存され、いつでもどこでも端末等の画面上に表示して確認・情報共有。

【特徴】

  1. 1

    特殊計測設備なしで材料品質管理の省人化・省力化が図れ、あらゆる粒度測定に適用可能
    本システムはベルトコンベヤなどの直上にデジタルカメラと支持架台を設置するだけで測定が可能なため、暗室でストロボ撮影を行う必要があった従来の解析用特殊計測設備が不要となります。そのため、システム運用に掛かる手間とコストを大幅に削減することができ、ダム工事以外のあらゆる工種の粒度測定にも適用が可能です。

  2. 2

    クラウドを活用して品質管理をオンラインで実施し、迅速に情報共有可能
    AIによる認識画像や解析値などの各種データはクラウドに保存され、試験状況や解析結果、材料性状の確認などの品質管理をリアルタイムで遠隔からも行えるため、迅速な情報共有が可能になります。

  3. 3

    AI活用により試験時間を大幅に短縮し、高精度な粒度管理を実現
    AI画像認識技術を活用した粒度解析結果の精度は±5%以内に収まり、JIS法による試験値の精度と同等であることが確認されました。さらに、本システムは画像撮影から通過質量百分率の算出までを5秒程度で完了させることができるため、試験時間を大幅に短縮して高精度な粒度管理を行えます。

 今後当社は、ダム建設現場で本技術の実証を継続し、得られた試験データの蓄積やシステムの機能改善により更なる生産性向上を進めていきます。さらに、当社が2020年に自社開発した建設現場の施工管理システム「T-iDigital Field※2」と連携を図り、生産プロセスのDXの取り組みを推進し、建設現場における働き方の変革を目指してまいります。

図1 従来システムと本システムによる粒度分布算出フロー
  1. ※1

    通過質量百分率:
    通過質量百分率とは、ある粒径より細かい土粒子の質量がどれくらいあるかを百分率で表したもので、粒度分布の算出に適用する。

  2. ※2

    T-iDigital Field:
    T-iDigital Fieldは、CPS(Cyber-Physical Systems) の概念に基づき、施工中に得られる膨大な各種映像やセンサによるデジタルデータなどを仮想空間上に集積・統合して、デジタルツインを形成するなど高付加価値な情報として工事関係者間へフィードバックするとともに、蓄積したデータをAIや多変量分析などにより、最適な解決策を導き出すことで、現場管理の支援、生産性の向上を目的として技術開発を進めている統合プラットフォーム。
    この技術の適用により、工事関係者は現場管理の煩雑さから解放され、建設作業の遠隔操作や自動化が効果的に機能することでさらなる施工効率や安全性の向上などの新たな付加価値の創出により、これまでの建設業における常識の著しい変革につながることが期待される。

DX認定
  • DX認定とは「情報処理の促進に関する法律」に基づき、「デジタルガバナンス・コード」の基本的事項に対応する企業を国が認定する制度です。