リリース

医療介護施設向けIoTデータプラットフォーム「T-Hospital‎‎Ⓡ Connect」を開発

医療従事者の管理業務効率化と患者の安全・医療サービス向上に寄与

2023年12月27日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、「サービス・ソリューションのDX」の一環として、株式会社インフォキューブLAFLA(社長:田中健吾)と共同で、患者や要介護者の生体・環境データに加え、位置・映像データなどの情報を一元管理し、有効活用できる医療介護施設向けIoTデータプラットフォーム「T-Hospital‎‎ Connect」を開発しました。本プラットフォームは、ウェアラブルデバイス、環境センサー、Beacon等のIoT機器から得られる人・物・環境の情報を集約し可視化して一元的に管理できることから、医療従事者の管理業務を効率化し、患者や要介護者の安全、医療サービス向上に寄与します。

 昨今の急速な少子高齢化に伴い高齢患者が増加する一方で、医療従事者や介護職員不足が深刻化しています。そのため、患者や要介護者を見守るための仕組みの整備が必ずしも十分とはいえない医療介護施設も少なくなく、患者らの無断外出や目の届かない場所での転倒など重大事故につながるリスクが潜在しています。こうしたリスクへの対策として、患者などのバイタル情報収集や移動検知、施設に出入りする人・物の所在を把握できる仕組みやシステムが既に運用されています。しかし、これらの情報は個々のシステムで個別に管理されていることが多く、デジタル化されていても他システムとの連携には細かな調整が必要になるなど、これまで人・物・環境の情報を効率的かつ一元的に管理できる仕組みが求められていました。

 そこで当社は、建設現場や工場等で働く作業員の所在や生体データ、車両や資機材に関する情報などを収集して一元管理する当社独自開発システムの導入・運用で得られたノウハウを活かし、医療関連の様々なIoT機器の情報を一元管理でき、ナースコールや医療機器管理システムなどの医療情報システムとも連携可能な医療介護施設向けIoTデータプラットフォーム「T-Hospital‎‎ Connect」を開発しました。(図1、図2参照)

図1 ダッシュボード画面
図2 個人のバイタル画面表示例

 本プラットフォームの特徴・機能および導入により期待される効果は以下のとおりです。

【特徴・機能】(図3、4参照)

  1. 1

    適用環境に柔軟に対応可能
    本プラットフォームは、オンプレミス型(ソフトウェア・ハードウェアを自社で保有・管理し、システムを自前で構築・運用する方式)、クラウド型(インターネットを介して各種サービスを提供・利用する方式)のどちらの適用環境でも対応できます。

  2. 2

    生体・環境データを効率的に取得可能
    リストバンド型ウェアラブルデバイス装着者の心拍、歩数、活動量などのデータを個人または複数対象者の画面表示で確認できます。併せて、環境センサーから得られる温度、湿度、照度、騒音などのデータも画面表示し視覚的に確認できます。

  3. 3

    位置データを取得、可視化し視覚的に把握可能
    患者や医療機器などの位置情報が、スマートフォン、リストバンド型ウェアラブルデバイス、Beacon等を活用して画面上でリアルタイムに確認でき、GPSデータもスマホアプリを通じて取得できます。これにより、施設内での運用動線の見直しや配置検討、施設建替えや移設に伴う患者移送、機材管理に活用できるほか、事前に設定した危険エリアや出入り口付近への進入などの異常を検知しメールに通知できます。

  4. 4

    映像データを一元的に閲覧・管理可能
    WEBカメラを接続し、映像データも一元的に閲覧・管理することが可能で、さらにエリア内の定員数を設定すれば、密状態かどうかを視覚的に確認できます。

  5. 5

    様々な外部システムと連携可能
    既存の外部システムと連携し、各種機能を活用できます。

    • リストバンド型ウェアラブルデバイスで患者の心拍数や転倒などの異常を検知し、メール通知に加え、ナースコールにも通知できます。
    • 医療機器安全点検システム「MARIS」※1に登録済みの医療機器に関する位置情報を自動更新し、MARISの画面で表示できます。また、医療機器管理システム「ロケモニ!」※2に登録されている医療機器の所在と稼働率の情報を取得し、本プラットフォームの画面上で表示、確認できます。
    • オムロンヘルスケア株式会社の家庭用医療機器(血圧計、体重体組成計、活動量計等)で計測した体重や血圧、歩数などのバイタルデータを専用アプリのオムロンコネクト経由で連携し、本プラットフォームで確認できます。

図3 主な取得データと機能

【期待される効果】

  1. a

    医療介護施設内での患者の扱い、機器の探索に要する時間の短縮や人手不足の解消、業務効率化を実現し、施設内外での状況を位置情報とともにリアルタイムに確認でき、異常事態の早期発見に役立ちます。

  2. b

    施設内外における患者の日々の心拍・活動量・歩数等の変化が生活習慣データとして可視化され、外来透析、通院リハビリ等による歩行機能などの定量的評価、運動療法による負荷測定や活動量の変化などを視覚的に確認できます。

  3. c

    取得データは患者自身も閲覧可能で、運動目標の達成状況を共有できるため、患者に寄り添った適切な医療サービスが提供されているかを判断する患者経験価値(PX:Patient Experience)の向上なども期待できます。

図4 病院施設でのユースケース例

 本プラットフォームは、2022年10月から2023年3月にかけて愛知県新城市にある新城市民病院で実施した実証試験による評価を踏まえて各種機能の改善を行った上で、2023年度中に販売を開始する予定です。
 今後当社は、本プラットフォームについて、現場ニーズに合わせて機能拡張を図るとともに、医療業界が掲げるDXによる「スマートホスピタル構想」※3の実現に向け、医療介護施設内での様々な情報通信技術の普及・活用を想定し、業務効率化と安全・サービス向上のためのさらなる技術開発に取り組んでまいります。

  1. ※1

    「MARIS」:フクダ電子株式会社の医療機器安全点検システム。フクダ電子の登録商標

  2. ※2

    「ロケモニ!」:国立大学法人名古屋工業大学および国立大学法人東海国立大学機構が開発、株式会社ケアコムが提供する医療機器管理システム。名古屋工業大学および東海国立大学機構の登録商標

  3. ※3

    スマートホスピタル構想:医療業界が掲げる、デジタルトランスフォーメーションによる次世代型病院の実現に向けた革新的な取り組み。AIやIoT、ロボティクスなど先進的な情報通信技術を活用し、医療施設の運用や施設内の動線、物流を効率化・最適化させて医療施設自体の変革を目指す構想

DX認定
  • DX認定とは「情報処理の促進に関する法律」に基づき、「デジタルガバナンス・コード」の基本的事項に対応する企業を国が認定する制度です。