リリース

クラウドを活用した測量支援アプリケーション「Field Checker」を開発

施工管理システム「T-iDigital® Field」の機能を拡張し生産性が更に向上

2023年11月10日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、「生産プロセスのDX」の一環として、建設現場で得られる様々なデジタルデータを活用して施工管理業務を支援する統合システム「T-iDigital Field※1」の機能を拡張し、これまで二人一組で行っていた簡易測量作業を一人で効率よく行えるクラウドを活用した測量支援アプリケーション「Field Checker」を開発しました。(図1参照)

 建設現場では、トータルステーションやGNSS(衛星測位システム)測量機を用いた基準点測量や墨出し等の詳細な測量作業のほか、施工場所の現況把握や構造物の位置出し、出来形・高さ等の確認、距離・面積・体積を算出するための測量などといった多種多様な「簡易測量作業」が行われます。これまでの簡易測量作業は、測量者が二人一組となり、大型で重量のある測量用機器を運搬・設置しながら作業を行ってきました。これらの測量結果等の記録は現場で野帳や図面などに記入し、事務所に戻って書き写すような場合が多く、多大な労力と時間を要していました。また工事関係者間での計測データなどの情報共有にも課題がありました。
 そこで当社は、2020年に開発し全社で運用している建設現場の施工管理システム「T-iDigital Field」の新たな拡張機能として、衛星を利用して測位可能な明かり工事※2での簡易測量作業を支援するアプリケーション「Field Checker」を開発しました。(図1参照)本アプリケーションの適用により、測位機器およびクラウドなどを活用して測量作業の大幅な効率化を実現できます。また、工事関係者間での円滑な情報共有が図れ、品質トラブルなどを未然に防止することが可能となります。これまでに全国約30件の建設現場に試験導入して効果検証を行い、施工時の品質を確保しつつ生産性の向上が図れることを確認しました。

 「Field Checker」の測位機器・アプリ構成、測量機能および特徴は以下の通りです。(図2、3参照)

【測位機器・アプリ構成】

「GNSS測量機※3」、「ウェブアプリ」、「クラウド」、「位置補正情報サービス」等を組合せて構築

【測量機能】

・測位(現況把握、貼付けた図面からの位置出し、高さの確認など)
・測量チェック(座標からの位置出し、芯出し、測点誘導、杭芯確認など)
・距離計算(測量テープの代わりやその長さ以上の距離を測る場合など)
・面積計算(施工計画や施工出来形のために面積を測る場合など)
・体積計算(ストックパイルの土量や掘削出来形、ピットの容量を測る場合など)

【特徴】
  1. 1

    小型・軽量で安価なGNSS測量機やタブレット端末等を活用して測量作業を効率化
    本アプリケーションによる測量では、GNSS測量機およびスマートフォン、タブレット端末等の小型・軽量で安価な機材を一体化した測位機器とクラウドほかのアプリケーションを活用することで、従来の二人一組での作業が一人で可能となり、作業時間と作業人員が削減できます。

  2. 2

    測量機器の操作とデータ管理をオンラインで実施可能
    本アプリケーションは、「T-iDigital Field」を基盤として活用しているため、GNSS測量機の操作や測量・計算結果などの計測データの表示がオンラインで可能です。測量結果はクラウドに記録されるため、現場で野帳などに記入する手間がなく、作業時間を削減できます。また、いつどこでだれが測量作業を実施したのかなどの情報もクラウドで共有することができます。

  3. 3

    端末機器の画面上で設計図面と測量結果を高精度に表示し比較可能
    端末機器の画面に表示した地図上に、設計図面を精度よく貼り付けて表示可能なため、従来のように設計図面から事前に座標値を取得することなく、位置出しや測量チェックなどが行え、設計図面と測量結果を容易に比較することができます。

 今後当社は、本システムの建設現場への適用・拡大を図り、現場導入で取得されるデータの検証・分析および蓄積データを基に、新たな施工支援アプリケーションの開発や現場の施工と安全に関する管理機能の拡張などにより「T-iDigital Field」の基盤整備を推進し、DX技術の導入による建設現場の変革を目指してまいります。

図1 T-iDigital Fieldの機能拡張概要
図2 Field Checkerの機器・アプリ構成、測量機能
図3  Field Checkerの画面表示例
  1. ※1

    T-iDigital Field:CPS(Cyber-Physical Systems) の概念に基づき、施工中に得られる膨大な各種映像やセンサによるデジタルデータなどを仮想空間上に集積・統合して、デジタルツインを形成するなど高付加価値な情報として工事関係者間へフィードバックするとともに、蓄積したデータをAIや多変量分析などにより、最適な解決策を導き出すことで、現場管理の支援、生産性の向上を目的として技術開発を進めている統合プラットフォーム。
    この技術の適用により、工事関係者は現場管理の煩雑さから解放され、建設機械の遠隔操作や自動化が効果的に機能することで、さらなる施工効率や安全性の向上などの付加価値が創出され、これまでの建設業における『常識』の著しい変革につながることが期待される。

  2. ※2

    明かり工事:トンネル工事や地下空間工事以外の工事。

  3. ※3

    GNSS測量機は、条件を満たせば詳細測量作業に適用可能な高精度の測位を行う「RTK-GNSS方式」を採用しているが、ここでは簡易測量作業用としての運用を推奨している。

DX認定
  • DX認定とは「情報処理の促進に関する法律」に基づき、「デジタルガバナンス・コード」の基本的事項に対応する企業を国が認定する制度です。