リリース

内水氾濫による浸水発生状況の解析・表示システムを整備

3D都市モデルと重ね合わせ、浸水被害を直感的に把握可能に

2023年9月1日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、「サービス・ソリューションのDX」の一環として、都市型水害とされる内水氾濫による浸水被害の発生状況を事前に解析し、3D都市モデルデータと重ね合わせて立体的に表示することができるシステムを整備しました。本システムは、当社が2016年に開発した建物内部の浸水リスク評価・診断システム 「T-Flood® Analyzer」の機能を拡張・発展させたもので、近年多発傾向にある市街地における浸水被害を把握でき、効果的な軽減対策の検討などに活用することが可能です。

 近年、地球温暖化やヒートアイランド現象といった気候変動の影響により、予測困難な局地的大雨(ゲリラ豪雨)や短時間強雨、線状降水帯による大雨などが頻発し、河川の氾濫や洪水、これらに伴う土砂災害など甚大な被害が相次いで発生しています。都市部においては、川の水が堤防を越えてあふれ出す外水氾濫だけでなく、下水道等の排水施設の能力を上回る多量の降雨によって地表に水があふれる内水氾濫による浸水被害が多発する傾向にあります。こうした内水氾濫は、舗装など地表面の人工被覆率の増加と雨水等の地下浸透度の低下によってもたらされる都市特有の災害の一つで、都市部で発生する水害の多くが内水氾濫によるものとされています。
 このため地下鉄網や地下街など土地の高度利用が進む世界の大都市の共通課題として内水氾濫への対策の策定、実行が急務となっています。我が国においても国や地方自治体が治水施設や雨水貯留施設等の整備に加え、内水氾濫に関するハザードマップの策定などハード・ソフト両面での対策に積極的に取り組んでいます。
 これらの背景を踏まえ当社は、国土交通省が主導する3D都市モデル整備・活用・オープンデータ化プロジェクト「PLATEAU」※1を活用して、対象範囲の街区や特定敷地での内水氾濫による浸水発生状況(浸水深さ、浸水範囲など)を短時間で詳細に解析し、その結果を3次元で表示することができるシステムを新たに整備しました。

 本システムによる作業手順およびその特徴は以下のとおりです。(図1参照)

【作業手順】

  • 対象地域の標高と建物配置データをPLATEAUから自動取得する。

  • 自動取得したデータに下水道等の排水路や地形データを加え、対象地域に関する詳細情報を作成する。

  • 対象地域の詳細情報を基に、降雨条件(雨量や降雨の分布など)を入力し、対象地域における雨水の地表面での流れ方や内水氾濫による浸水の発生範囲を解析する。

  • 予想される浸水の解析結果をPLATEAUによる3D都市モデルデータと重ね合わせ、対象範囲の街区や特定敷地での建物情報を加味した浸水発生状況を3次元で表示する。

【特徴】

  1. 1

    対象範囲の標高や建物配置など解析に必要な情報の自動取得から、排水路などのデータ入力による地区詳細情報の作成、予想される浸水発生状況の解析および結果の可視化までの一連の作業を効率的に短時間で実施することができます。

  2. 2

    立体的な表現を用いて内水氾濫による浸水発生状況を直感的に把握可能
    対象範囲の街区や特定敷地での建物の配置に合わせて内水氾濫による浸水の深さや範囲を3次元で確認できるため、浸水被害の発生状況がイメージしやすく、関係者間で共通認識を容易に得られることから合意形成にも効果を発揮します。解析結果からは任意地点の浸水状況を拡大・縮小して表示できるほか、浸水の進行方向や刻々と変化する浸水深さなども目線の位置を変えながら確認することが可能です。

  3. 3

    適切な浸水対策の立案・検討やBCP対策の具現化に活用可能
    本システムを活用することで、対象範囲の建物情報を加味した内水氾濫に関するハザードマップの作成が可能となります。また、異なる浸水対策を講じた場合の被害軽減効果の比較などが効率よく短時間で行えるので、より適切な浸水対策の立案やBCP(事業継続計画)の検討および対策の具現化に活用することができます。

 今後当社は、防災・減災対策に取り組む自治体や市街地開発プロジェクトを進める事業者に対して内水氾濫による浸水被害の軽減策やBCP対策の具現化を支援するツールとして本システムの活用を積極的に提案し、各地で頻発する水害のリスク回避・低減に貢献してまいります。

図1 浸水発生状況の解析結果(浸水深)とPLATEAUデータの重ね合わせによる3D表示
  1. ※1

    PLATEAU:国土交通省が主導する日本全国の3D都市モデル整備・活用・オープンデータ化プロジェクト。3D都市モデルは今後Society5.0(現実空間と仮想空間が一体となり、さまざまな社会問題の解決と経済発展を実現する社会)の基盤となり、都市情報の統合・可視化によりこれからの社会にとってより有益な情報として活用を目指す。
    https://www.mlit.go.jp/plateau/

  2. ※2

    ハザード情報を3D化する取り組み:国土交通省では、気候変動の影響により、激甚化・頻発化する自然災害等から国民の命と暮らしを守るため、総力戦で挑む防災・減災プロジェクト」として施策をとりまとめ防災・減災に係る取り組みを推進している。
    https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/sosei_point_tk_000034.html