リリース

設備スリーブ検査のICT化アプリを開発

撮影画像に基づき位置計測・図面照合・検査記録を自動化し施工管理を大幅に効率化

2023年7月14日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、「生産プロセスのDX」の一環として、株式会社セック(社長:櫻井伸太郎)の協力を得て、iPadによる撮影画像を用いて建物の躯体工事における設備スリーブ(壁や床を貫通する設備配管用の孔)に係る検査のICT化を実現するアプリを開発しました。本アプリの導入により、スリーブ取付け状況を建設現場で撮影するだけで、スリーブの位置計測・図面照合・検査記録を自動で行い帳票として保存できるため、作業手間軽減や時間短縮により施工管理業務の大幅な効率化が可能となります。

 建物の躯体工事では、電気・空調などの設備工事のために壁や梁、床に配管・ダクトの通り道となる円形や四角形のスリーブと呼ばれる貫通枠を取付けます。建設現場では躯体工事の進捗状況に応じて、スリーブ取付け位置が施工図と合致しているかを確認するスリーブ検査が実施されますが、これまでは設備専門工事業者の検査担当者が施工図を見ながらスリーブの取付け位置や寸法を手作業で計測・記録し、施工状況写真を撮影した後、事務所に戻り検査記録から帳票を作成していました。このため建物用途や規模によっては一現場で膨大な箇所のスリーブ検査を実施することになり多大な手間と時間を要することから、ICT等の活用による検査業務の自動化・迅速化の早期実現が求められていました。
 そこで当社は、iPad内蔵カメラを用いて検査対象範囲のスリーブ取付け状況を撮影するだけで、スリーブの位置等を自動計測し、施工図と照合して合否判定を行い、その検査記録も自動で作成・保存できるアプリを開発するとともに、建設現場への試行導入により有効性を実証しました。

 本アプリの特徴は以下の通りです。

  1. 1

    iPad内蔵カメラで撮影するだけでスリーブ位置・距離を自動計測(写真1、2、3参照)
    本アプリを活用したスリーブ検査では、iPad内蔵カメラの画面に写り込むように2本の基準尺※1(ARマーカーを取付けたアルミバー)を縦と横に配置して2m以内の距離からスリーブ取付け状況を撮影します。撮影画像からスリーブ蓋に赤印で描かれたスリーブとスリーブ芯(スリーブ孔の中心)の位置情報および基準尺からの縦・横それぞれの基準距離の情報が同時に認識されます。位置と距離の認識情報を基に、画面上で選択したスリーブ芯間の距離を算出し、その結果を撮影画像上に表示します。

  2. 2

    スリーブ位置等の自動計測値と施工図を照合して合否判定(写真3、図1参照)
    iPadに取り込んだ施工図データ(CAD)に属性情報として登録されているスリーブ位置座標および通り芯(壁や柱の中心を通る線)情報を利用して、施工図でのスリーブ位置情報と実際の自動計測値※2を比較し、所定の許容誤差※3範囲内(±10mm以内)であるかを自動照合して合否判定を行います。

  3. 3

    検査記録を自動作成し、帳票として保存(図1参照)
    iPadでの撮影画像に基づくスリーブ検査の終了後、その検査記録を自動で作成し帳票として保存することができます。帳票にはiPadに予め登録しておいた検査場所、検査実施日、検査者、立会者に加え、施工図データから取り込んだ検査範囲図、検査結果図(施工図データによるスリーブ位置と撮影画像に基づく自動計測値)、合否判定、検査立会い写真の資料一式を検査表の1枚目に集約して表示します。また、追加の撮影画像等は、2枚目以降に写真台帳としてメモと併せて記録・帳票化されます。

  4. 4

    スリーブ検査のICT化により業務が効率化され生産性が向上
    ICTの活用により、従来のスリーブ検査における現場での位置計測から、その後の事務所での検査記録作成まで一連の施工管理業務が一元化でき大幅に効率化されるため、生産性向上が図れます。例えば、検査範囲内にスリーブが6個ある場合では、現場での計測・検査時間が約20%削減(10分⇒8分)、検査記録作成時間が約80%削減(30分⇒5分)されます。また、人による判断が介在しないため、人的な誤りを防ぎ正確な検査記録の保存・提供が可能となります。

 今後当社は、生産プロセスDX化に向けた取り組みの一つとして、本技術を設備スリーブ検査以外の各種工事にも拡大し、建設現場における生産性向上を推進してまいります。

写真1 スリーブ取付け状況撮影(アプリ画面)
写真1 スリーブ取付け状況撮影(アプリ画面)
写真2 スリーブ芯間寸法選択状況(アプリ画面)
写真2 スリーブ芯間寸法選択状況(アプリ画面)
写真3 スリーブ位置自動計測結果(アプリ画面)
写真3 スリーブ位置自動計測結果(アプリ画面)
図1 本システムを用いて帳票化されたスリーブ検査記録および合否判定(左:書式全体、右上段:検査結果、右下段:判定結果)
図1 本システムを用いて帳票化されたスリーブ検査記録および合否判定
(左:書式全体、右上段:検査結果、右下段:判定結果)
  1. ※1

    基準尺: AprilTagと呼ばれるARマーカーを表面に3つ取付けた長さ510mm、幅60mm、厚さ5mmのアルミバー。このARマーカー間の距離を基準寸法として、撮影画像上の距離を自動算出するために使用。

  2. ※2

    計測値:通り芯とスリーブの距離はカメラの撮影範囲に入らないため、基準スリーブを1つ選定し、基準スリーブと通り芯との距離をXY方向1ヶ所ずつ現地実測し、その結果をアプリに登録

  3. ※3

    許容誤差:施工図と自動計測によるスリーブ位置等の差に関して施工要領書等で定められた数値

DX認定
  • DX認定とは「情報処理の促進に関する法律」に基づき、「デジタルガバナンス・コード」の基本的事項に対応する企業を国が認定する制度です。