リリース

トンネル覆工コンクリート打設作業での配管切替装置「T-スライドバルブ」を開発

配管切替え時の脱着・洗浄作業が不要となり施工の迅速化と省力化を実現

2023年6月20日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、山岳トンネル工事の覆工コンクリート打設作業において従来の人力による配管切替作業を機械化した装置「T-スライドバルブ」を開発しました。(写真1参照)本装置を活用することで、これまでのコンクリート圧送配管切替時の脱着・洗浄作業が不要となることから作業時間を95%削減可能となり施工の迅速化と省力化を実現できます。また、配管脱着時に配管内に残置するコンクリート(残コン)の発生量がゼロとなるため、環境負荷の低減と作業環境の大幅な改善を図ることができます。

 トンネル覆工コンクリート打設作業では、コンクリートの打ち上がり高さに合わせて低い位置から高い位置へコンクリートの圧送経路を徐々に切替えて実施しており、切替えの際には人力で配管の脱着・洗浄作業を行ってきました。例えば2車線道路トンネルでの配管切替作業は、覆工コンクリート打設用の移動式型枠であるセントルに設けられた1断面当たり6カ所(左右3カ所ずつ)の検査窓を打設口として配管を設置して実施します。従来は配管を切替える都度、残コン処理と配管の脱着・洗浄作業が必要となるうえ、セントル型枠内の作業空間が狭隘なため、作業員は窮屈な姿勢での作業を強いられていました。(写真2参照)このような現状を踏まえてコンクリート打設時の良好な施工性の確保や作業環境の改善に加え、将来的な打設作業の自動化を目指す上で、まず配管切替作業を機械化することが望まれていました。

 そこで当社は、セントル型枠内での覆工コンクリート打設配管切替作業において、装置本体に内蔵した切替バルブを油圧でスライドさせることで配管の切替えが即座に行える装置「T-スライドバルブ」を開発しました。

 「T-スライドバルブ」の特徴は以下のとおりです。

  1. 1

    油圧スライド式のシンプルな機構により容易に配管切替が可能
    本装置は、セントル型枠の検査窓に打設口として取り付けたもので、油圧ジャッキで装置に内蔵された切替バルブをスライドさせるシンプルな機構を採用しています。そのため、コンクリートを圧送する経路を簡単に切替えることができ、下方の打設位置から次に打設する上方へと配管を接続すると同時に下方の検査窓を閉鎖する構造となっています。(図1参照)

  2. 2

    残コンの発生をなくし、配管洗浄作業を大幅軽減
    コンクリート圧送経路の切替えに伴う配管の脱着作業が不要となるため、従来は切替えの都度に行っていた残コン処理や配管洗浄の必要がありません。また、本装置を適用した配管経路は、従来のように分岐せず、一筆書きの経路となるため(図2参照)、コンクリート打設後に配管洗浄用のスポンジ(ピグ)を一度だけ圧縮空気で送り込むことで効率よく配管を洗浄できます。

  3. 3

    配管切替作業の機械化により作業時間削減と作業員の身体的負担軽減、省力化を実現
    本装置を用いた配管切替作業は、1カ所当たり15秒で完了することが可能で、従来の人力による同等作業と比較して作業時間を95%削減できます。(図3参照)また、切替作業に本装置を適用することで、狭隘な空間において窮屈な姿勢で重量物を取り扱う苦渋作業の削減が可能となり、作業員の身体的負担を軽減し省力化することができます。

 今後当社は、本装置を自社施工の山岳トンネル工事に積極的に適用し、覆工コンクリート打設時の配管脱着・洗浄作業が不要となることに伴う施工の迅速化・省力化を推進します。さらに、コンクリート締固め作業についても自動化を進め、本技術との組み合わせによる覆工コンクリート打設の完全自動化に向けて技術開発を継続してまいります。

写真1 T-スライドバルブ
写真1 T-スライドバルブ
図1 配管切替え装置の動作イメージ
図1 配管切替え装置の動作イメージ
"写真2

写真2 人力によるコンクリート配管盛替え作業

図2 配管ルートの比較事例

図2 配管ルートの比較

図3 配管切替え作業時間の比較

図3 配管切替え作業時間の比較