湧水測定技術「T-DrillPacker」の機能を拡張

コア採取用ビットを用いて、湧水・地質調査を同時に実施

2021年1月12日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、大量湧水の発生が予測される山岳トンネル工事において、湧水帯の湧水量・水圧を安全かつ効率的に測定する既開発技術「T-DrillPacker」※1を岩石コア採取時にも適用できるように機能拡張しました。先端ビットにコア採用ビットを用い、大拡張パッカーを組み合わせることにより、調査ボーリング削孔中の湧水測定と併せてトンネル前方の地山強度や重金属の含有量などの評価に必要となる岩石コア採取が実施でき、多様な調査ニーズに迅速に対応できます。

 山岳トンネル工事では、工事の安全や工期、工費に重大な影響を及ぼす湧水の発生状況を事前に把握するため施工時に調査ボーリングを行い、前方に存在する複数の湧水帯の位置や湧水量・水圧を測定し、湧水対策を行う必要があります。当社は調査ボーリング削孔中に、削孔管を引抜かずにパッカー※2を挿入して、孔壁崩壊のリスクをなくし、湧水量と水圧を測定できる「T-DrillPacker」を2020年に開発しました。そして、このたび「T-DrillPacker」の機能を拡張し、先端にとりつける削孔ビットをノンコアボーリング※3用ビット(写真1参照)に加えて、コアの採取・格納に用いる鋼管(コアチューブ)を備えたコア採取用ビット(写真2参照)にも適用できるようにしました。これにより、地質調査を行うコアボーリング※4に対しても本技術を用いることが可能となりました。

【施工手順】(図1参照)

  1. 1

    ボーリング削孔・地質調査用コアサンプル採取

    内側にコアチューブを備えたコア採取用ビットをボーリング削孔管の先端に装着し、回転させながら地山を掘削。コアサンプルを採取。

  2. 2

    コアチューブ回収
    湧水帯に遭遇した場合、削孔管からコアチューブだけを引き抜いて回収。

  3. 3

    パッカーの設置
    ボーリング削孔管を湧水帯の手前まで後退させ、コアチューブを引き抜いた削孔管内に新たに開発したコアボーリング専用の大拡張パッカー(初期直径40mmから120mmまで拡張可能)を挿入。

  4. 4

    湧水量・水圧測定
    削孔管を引き抜くことなく、コアビット先端にパッカーを突き出し拡張させ、孔壁に密着させた状態で湧水量・水圧を測定。

  5. 5

    削孔再開
    パッカーを収縮・回収し、コアチューブを再セットし、削孔を再開する。

 今回の機能拡張により、既開発技術「T-DrillPacker」の“孔壁崩壊のリスクを回避”、“湧水量・水圧を迅速に測定”、“繰り返し測定が可能”という長所をそのままに、効率的な湧水測定とコア採取が同時に実施でき、湧水区間の詳細な地質を迅速に把握することが可能となりました。

 今後、当社では、高圧・大量湧水が予想される山岳トンネル工事でこの技術を積極的に活用し、安全で効果的な湧水対策に役立てて参ります。

写真1 ノンコアボーリング用ビット
写真1 ノンコアボーリング用ビット
写真2 コア採取用ビット
写真2 コア採取用ビット
図1 コアボーリングに適用した「T-DrillPacker」
図1 コアボーリングに適用した「T-DrillPacker」
  1. ※1

    2020年リリース トンネル前方の湧水測定技術 T-DrillPacker
    https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2020/200716_4956.html

  2. ※2

    パッカー:ゴム製の袋状の部材を加圧し膨張させて、孔壁に密着させることで孔内を
    水理的に隔離し、湧水区間の湧水量・水圧をピンポイントで測定するための装置。

  3. ※3

    ノンコアボーリング:岩石コアサンプルを採取しないで掘進するボーリング。削孔時に排出
    される削り屑で簡易な地質調査を行う。水抜き孔や各種原位置試験孔のために削孔される場合もある。

  4. ※4

    コアボーリング:岩石コアサンプルを採取しながら掘進するボーリング。コア観察やコアを
    用いた各種室内試験により詳細な地質調査が行える。