既存倉庫の温熱環境改善用新型ファンユニット「T-Rack Fan」を開発

自動倉庫の運用を停止せずにローコストで施工が可能

2020年4月9日
大成建設株式会社
クリフ株式会社

 大成建設株式会社(社長:村田誉之)とクリフ株式会社(代表取締役:藤本大輔)は共同で、医薬品を保管する倉庫内の温度分布を平準化する新型ファンユニット「T-Rack Fan」を開発しました。本ユニットの導入により、大規模な改修工事を行わずに、ローコストかつ短工期で倉庫内の温度環境を改善することが可能となります。

 昨今、医薬品業界では、製薬や物流のグローバル化により、製造・流通過程において、国際基準(PIC/S※1)に基づき、医薬品を室温保管する場合は、倉庫内温度を15~25℃の範囲に維持することが、求められています。しかし、従来型の自動ラック倉庫では、倉庫内の天井高さが20~30m程度と高い場合が多く、気流の流れが滞り、年間を通じて国際基準に則った15~25℃の温度範囲を維持することは難しい状況でした。そのため、温度ムラの改善を目的として空調設備改修などが行われますが、その際、工事用足場を組むような大規模改修工事が必要となる上、倉庫の運用も長期間停止させなければなりませんでした。

 そこで両社は、自動搬送装置を利用して自由に移動でき、自動ラック倉庫内のどこにでも設置可能な新型ファンユニット「T-Rack Fan」(図1参照)を開発しました。

「T-Rack Fan」の特長は以下の通りです。

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    パレット上に設置可能なサイズのため、自動搬送装置で容易に移動可能
    ファンユニットの設置は、自動搬送装置で荷物を出入庫するのと同様の作業で完結します。ファンユニットを所定位置に移動した後は、電源を接続するだけで運転可能となります。また、季節に応じた設置位置の変更や空気が滞留しやすい箇所に移動させ、重点的に温度環境を改善することも可能です。(写真1、図1、図2参照)

  2. 2

    倉庫の運用を停止することなく、ローコスト、短期間で設置が可能
    ファンユニットは、自動搬送装置に据え付けて移動が可能であるため、倉庫の運用を停止することなく設備工事を行うことが可能になります。改修工事に際し、足場を組む費用や倉庫の運用停止期間の営業損失も考慮すると、従来よりもローコストで施工可能です。
    例えば、1,000m2程度の自動ラック倉庫内にT-Rack Fanを複数台設置する場合、従来のファンを設置する工事(空調・電気・建築工事含む)に比べて、約50%以上工事費を削減することが可能です。

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    ラック倉庫内の温度ムラを改善
    温熱ムラを可視化できる温熱環境シミュレーションによって、既存ラック倉庫の温度環境の再現や、ファンユニットの最適な台数や配置、吹出し方向や角度の改善提案をすることが可能です。また、設置後でも、それらを容易に変更することで、効率的な温熱環境の改善が可能となります。

 今後、大成建設とクリフは共同で、本ファンユニットにバッテリーを搭載したワイヤレスタイプの開発を検討するとともに、大成建設の温熱シミュレーションを活用し、倉庫内の温熱環境改善を計画している医薬品の既存自動倉庫を対象に積極的に提案してまいります。

図1 T-Rack Fan 概要
図1 T-Rack Fan 概要
図-2 T-Rack Fan 設置稼働イメージ
図-2 T-Rack Fan 設置稼働イメージ
写真1 T-Rack Fan 外観
写真1 T-Rack Fan 外観
  1. ※1 PIC/S:
    Pharmaceutical Inspection Convention and Pharmaceutical Inspection Co-operation Scheme(医薬品査察協定及び医薬品査察共同スキーム)の略称。医薬分野における国際的に調和されたGMP基準及び査察当局の品質システムの開発・実施・保守を目的とした査察当局間の協力組織。GMPとは、Good Manufacturing Practiceの略称で、医薬品等の製造管理及び品質管理に関する基準であり、各国の規制当局が策定している。