ごあいさつ

常務執行役員 技術センター長 長島一郎

常務執行役員
技術センター長
長島 一郎

ここに,大成建設技術センター報第56号をお送りいたします。

お陰様で,2023年当社は創業150周年を迎えました。現在はVUCAの時代と言われます。不確実で変化の激しい社会の中で,【TAISEI VISION 2030】《進化し続ける The CDE3(キューブ)カンパニー》で掲げた,「人々が豊かで文化的に暮らせるレジリエントな社会」を実現するために,様々な技術開発を通して,お客様の期待と想像を超える価値と満足と感動を創造し続ける所存です。

最近の技術開発の一端をご紹介します。
近年の重要課題として「持続可能な環境配慮型社会の実現」に注力しています。2014年に「都市型ZEB」の実証棟を建築して技術実証を開始し,最近ではエネルギー自立型ビルやゼロウォータービルの技術実証も進めています。2023年には既存建築のZEB化を実現するリニューアルZEB技術を,当社関西支店と横浜支店に開発・適用しました。埼玉県幸手に新設する大成建設グループ次世代技術研究所では,建物のライフサイクル全体でのカーボンニュートラルを実現するZCB(Zero Carbon Building)の建設と実証を進めています。カーボンネガティブに貢献できる環境配慮コンクリートを,2023年8月に技術センター内建築物基礎部に適用しました。建築構造体への適用は国内初です。 CO2を回収して地下に貯留する技術「CCS」については,2023年6月に選定された先進的CCS事業調査に建設会社として唯一参加しています。
ネイチャーポジティブの実現も重要な課題です。富士山南陵工業団地や大手町の森など自然共生技術に加え,環境DNAを用いた生物の生息状況評価や,植物の遺伝子解析による遺伝的多様性の保全・復元技術などの更に先進的な技術開発も進めています。
社会課題解決を目指した「地域連携の推進」にも取り組んでいます。長崎県立大学「NAGASAKIセキュリティベース」では,情報セキュリティに関わる産学共同研究を2023年4月より開始しました。横浜市立大学の武部貴則教授と,人のウェルビーイングを実現する都市像「Enabling City」の実現に向けて,住民参加型ウェルビーイング探索活動「Enabling CityWalk!」を横浜,大阪,札幌で実施しました。また,山梨県と連携し再生可能エネルギーから水素を製造する「やまなしモデル」と呼ばれるP2G(パワー・ツー・ガス)システムをコンクリート工場に導入しています。また,室蘭市や三笠市とのカーボンニュートラルに向けた連携も進めており,今後もより幅広く積極的に地域への貢献に取り組んでまいります。

創業150周年の節目に,建設技術の未来への貢献を考えるために,「テクノロジーが創る持続可能な未来に向けて」を特集テーマとしました。特集は「座談会」と「特集論文」から構成し,その他の論文を「一般論文」とする二部構成としました。「座談会」では,化学工学会の地域連携カーボンニュートラル推進委員会委員長である東京大学環境安全研究センター長 辻佳子教授,ジャーナリストで東北大学グリーン未来創造機構において教鞭をとられる藤田香教授をお招きし,持続可能な環境配慮型社会の実現に向けた課題について議論させて頂きました。新たな社会システム構築のために建設業が果たせる役割について,多くの示唆に富むご意見を頂きました。一般論文には基盤的建設技術,ICTやAI導入による生産性向上技術も紹介しています。生産性向上はワークライフハーモニー,エンゲージメント向上に関わる重要な課題です。
特集論文10編と一般論文を合わせて計54編の論文としてご報告いたします。皆様におかれましては,この大成建設技術センター報をご高覧頂き,ご指導ご助言を賜りますとともに,ご活用頂きますようお願い申し上げます。

2023年12月