ごあいさつ

常務執行役員 技術センター長 長島一郎

常務執行役員
技術センター長
長島 一郎

ここに,大成建設技術センター報第55号をお送りいたします。

2020年10月26日の菅前総理の2050年カーボンニュートラル宣言を受けて,経済・社会・環境・技術は目まぐるしいスピードで変化しています。SDGsやESGへの関心の高まりを肌で感じています。当社は【TAISEIVISION 2030】を定め,「人々が豊かで文化的に暮らせるレジリエントな社会づくりに貢献する先駆的な企業グループ」を目指して,インフラ整備や災害に強いまちづくり,高品質な建物の提供に取り組んでいます。昨年7月の熱海市の土石流災害では,当社は災害復旧対策工事を担当いたしました。工事でも活用した現場管理デジタル技術「T-iDigital® Field」は,優れたDXとして評価していただき,中部地方整備局の中部DX大賞を受賞いたしました。

当社は建物の建設から解体までライフサイクル全体で排出されるCO2をゼロにするゼロカーボンビル「T-ZCB」の概念を提案して,実現のための様々な技術開発に取り組んでいます。コンクリート中にCO2を固定し,CO2排出量がマイナスとなるカーボンリサイクルコンクリートを昨年12月に技術センター実験施設の壁と外構に建築物として初めて適用し,その後自社施設以外への適用も進めています。北海道古平町の庁舎「かなえ~る」では,新築公共建築物として北海道初のZEB Ready認証取得に協力させていただきました。一次エネルギー収支ゼロの工場「ZEF(Zero Energy Factory)」の概念を提案し,OKI本庄工場では大規模生産施設で国内初のZEB認証の取得に協力させていただきました。リニューアルによるZEBを普及するために,当社関西支店ビル・横浜支店ビル,大成ユーレック川越工場では改修工事によってZEB認証を取得しています。木造・木質化技術「T-WOOD®」では,構造,耐震,防耐火,遮音,耐久性など幅広い技術開発に取り組み,実物件への適用を推進しています。

地下に圧入した後のCO2の流れや化学反応などの数値解析技術に当社は古くから取り組み,環境省の二酸化炭素地中貯留実証事業などに参画しています。また,昨年から(独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構から委託を受け,CO2を地熱貯留層に圧入し,熱源として高温のCO2を回収するカーボンリサイクルCO2地熱発電の研究開発も行っています。屋内のロボットに無線で給電できる内装床「T-iPower® Floor」を開発し,実証実験を行っています。本年9月からは走行中の電気自動車に給電できる無線給電道路「T-iPower® Road」の実証実験を開始しました。

本号の特集テーマは「レジリエンス社会へ貢献する技術開発」としました。特集は「座談会」と「特集論文」として構成し,その他の研究開発論文を「一般論文」とする二部構成としました。「座談会」では,内閣官房の「ナショナル・レジリエンス(防災・減災)懇談会」の座長を務める京都大学大学院 藤井聡教授,防災や地域づくり・温暖化対策に対してレジリエンスを高めるための考え方や事例について研究されている大学院大学至善館 枝廣淳子教授をお招きし,レジリエンス社会実現に向けてあるべき今後の技術開発の方向性やこれに取り組む姿勢について議論させていただき,示唆に富んだご意見をいただきました。特集論文のほか,材料,構工法,防災,環境,ICT,AIの分野別に,技術開発成果を50編の論文としてご報告いたします。各論文にはSDGsの17目標との関連を表記しています。

皆様におかれましては,この大成建設技術センター報をご高覧いただき,ご指導ご助言を賜りますとともに,ご活用いただきますようお願い申し上げます。

2022年12月