環境に優しい濁水処理と脱水ケーキの有効利用

キトサン凝集剤の活用による環境負荷低減技術“キトリート”の開発

川又 睦^＊１・大野 剛^＊１・木元 明日子^＊１・赤塚 真依子^＊１・大脇 英司^＊１・藤原 靖^＊１

Eco-friendly Technology for Turbid Water Treatment and Utilization of Dewatered Sludge Cakes

Development of "Chitoreat" System Using Chitosan Flocculant to Reduce the Environmental Impact

Mutsumi KAWAMATA^*1, Go OHNO^*1, Asuko KIMOTO^*1, Maiko AKATSUKA^*1, Eiji OWAKI^*1 and Yasushi FUJIWARA^*1

研究の目的

本研究ではトンネル建設工事において水生生物への影響の少ない濁水処理を行う目的で天然素材キトサン凝集剤を用いた環境に優しい濁水処理技術と，発生する脱水ケーキを有効に利用する目的で法面緑化等の生育基盤材（植栽土）への利用技術を複合した濁水処理システム“キトリート”を開発しました。

技術の説明

（1）天然素材で環境に優しい凝集剤
キトサンはカニ殻などの水産廃棄物より製造され，すでに食品や化粧品などにも使用されている安全かつ生分解性の高い天然成分です。
（2）高い濁水処理性能と経済性
キトサン凝集剤は処理性能，処理コストともに普及型凝集剤と同等です。通常は本剤のみの添加で効果があるため，従来の凝集剤（二剤添加）に比べて工程を少なくすることができます。
（3）法面緑化などの生育基盤材として有効利用
キトサン凝集剤で処理した脱水ケーキは植物の発芽・生長を促進するため，植栽土として脱水ケーキを高い混合率で使用することができます。
（4）建設汚泥の再資源化率の向上
建設汚泥である脱水ケーキを再資源化することで産業廃棄物としての処分量を削減できます。

主な結論

トンネル工事現場の濁水処理において，キトサン凝集剤を使って14ヶ月間に亘り24時間の連続運転に成功しました。従来の凝集剤と比べて，処理性能，処理コストともに遜色ないことを確認しました。また，法面緑化実証試験により，排出される脱水ケーキが生育基盤材として優れていることを確認しました。