50

熱回収型太陽電池ルーバーに関する実験的研究

人工気象室実験と屋外実験による検討

梅田 和彦*1・生天目 泰*1

Experimental Study on a Hybrid Solar Louver Incorporating Photovoltaic Modules and a Solar Thermal Energy Recovery System

Study on Experiment in Artificial Climate Room and Outdoor Experiment

Kazuhiko UMEDA*1 and Yasushi NAMATAME*1

研究の目的

低炭素社会の実現に向けて,エネルギーの効率的な利用が促進されており,発電時に二酸化炭素(CO2)を排出しない太陽光発電が注目されています。しかしながら,太陽電池は太陽エネルギーの1割から2割程度を電気に変換するだけで残りを熱として捨てており,太陽エネルギーの利用率は太陽熱温水器より低いのが現状です。
そこで,エネルギーの効率的な利用の観点から,未利用の熱を回収して発電と熱回収を同時に行えば,太陽エネルギーの利用効率の向上が可能になります。
本研究では,太陽エネルギーの効率的な利用を目的として製作した熱回収型太陽電池ルーバー(以降,ルーバー)の熱回収性能を人工気象室実験で確認して屋外実験で検証しました。本報では,人工気象室実験の結果と屋外実験を開始した春季の結果について報告します。

技術の説明

本ルーバーは,従来のルーバーの表面に太陽電池を,内部の空洞部に熱回収用配管を敷設した構造です(図1)。
日射遮蔽をしながら太陽電池で発電し,同時に吸収された太陽熱を内蔵した配管で回収できます。そのため、日射遮蔽による冷房負荷の削減や発電した電気の使用の他に,回収熱の給湯補助熱源としての使用によって電気や重油等のエネルギーの使用量を削減することが可能になり,CO2排出量の削減が期待できます。
給湯需要の多い病院や共同住宅や宿泊施設等への適用を検討しています。

主な結論

ルーバーの熱回収性能を人工気象室実験で確認し屋外実験で検証した結果,得られた主な知見は以下のとおりです。
1)日射でルーバー全体の温度が上昇し,その結果ルーバー出入口水温差が大きくなるので熱回収量が増大します。
2)春季(昼間の気温10℃から20℃程度)の太陽エネルギーの約1割を発電に,約2割を熱回収に利用できます。
今後は屋外実験を継続して,年間の太陽エネルギー利用効率とCO2排出削減効果を評価する予定です。

*1 技術センター 建築技術開発部 建築生産技術開発室