46

臨海施設の津波に対するBCPのための解析技術の開発

津波時の遡上解析と内水氾濫解析

伊藤 一教*1・織田 幸伸*1・古田 敦史*1・高山 百合子*1

Development of Tsunami Inundation Analysis Methods for BCP of Coastal Facilities

Simulation of Tsunami Run-up and Overflow via Underground Drainage

Kazunori ITO*1, Yukinobu ODA*1, Atsushi Furuta*1 and Yuriko TAKAYAMA*1

研究の目的

東海,東南海,南海地震をはじめとした大規模地震が懸念されており,それに伴う津波被害の想定は事業継続性確保の観点から重要な課題です。本研究では,臨海部に位置する産業施設規模を対象とし,津波による浸水被害の解析手法の開発を目的としています。解析の対象は,岸壁を越流して陸域に遡上する遡上解析と,岸壁からの越流はないものの地下の排水管等を介して立坑(マンホールやピット)から溢水する内水氾濫です。

技術の説明

岸壁を越流して陸域に遡上する遡上解析は,ポーラスモデルを用いて拡張した3次元非圧縮性粘性流体を対象とした連続式およびNavier-Stokes方程式を基礎式とし,VOF法により自由表面を解析する手法です。その適用性を水理模型実験結果と比較することで検討しました。内水氾濫については,水理模型実験により溢水を伴わないサージング現象と溢水現象の相違点を明確にした上で,溢水を考慮できるよう運動量収支に基づいた一次元管路モデルを導出し,水理模型実験結果と比較することでモデルの検証を定量的に行ないました。

主な結論

遡上解析,内水氾濫ともに再現性の高い解析結果が確認できました。特に内水氾濫は,防波堤で津波の越流を防御しても,排水路を介して陸域に海水が浸入します。その規模が大きいと浸水被害や避難経路の喪失といったBCPに直結する問題につながります。今後,より現実的な施設を対象に検討を進める予定です。

*1 技術センター 土木技術研究所 水域・環境研究室