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高性能上下免震床システム(TASS floor-3D)の開発

上下免震床システムのラインアップ拡充

欄木 龍大*1・長島 一郎*1・新居 藍子*1・勝田 庄二*2・木村 雄一*3・中島 徹*2・山﨑 英一*2

Development of High-performance Vertical Isolation Floor System

Lineup of Vertical Isolation Floor System

Ryota MASEKI*1, Ichiro NAGASHIMA*1, Aiko NII*1, Shoji KATSUTA*2, Yuichi KIMURA*3, Tohru NAKAJIMA*2 and Eiichi YAMAZAKI*2

研究の目的

近年,事業継続計画の観点から,地震時の重要機器類の損傷防止および早期復旧に対するニーズが高まっています。データセンターのサーバールームでは,サーバーを正常に稼動させるために,地震時の上下動を低減させる技術への要望が高まっていますが,従来の床免震構法(固有周期0.7秒程度)では,1995年兵庫県南部地震の様な直下型地震の上下動に対する免震効果は不十分でした。そこで,独自の高性能の上下免震床システムを開発し,本システムを要求性能や予算に応じて選択できるよう,3タイプのラインアップをそろえました。

技術の説明

本システムは,①鉛直支持と長周期化の機能をもつ空気ばね,②長周期化と入力低減の効果をもつ回転慣性機構,③歩行感改善とダンパーの機能をもつブレーキ機構から構成されます。補助タンクをもうけることで,空気ばね単体で免震周期を1.2秒まで,さらに回転慣性質量を併用した場合は1.8秒程度までの長周期化が可能です。これにより,兵庫県南部地震の様な直下型地震に対しても高い免震効果が得られます。また,ブレーキ機構により,人の歩行振動を抑制し,OAフロア上での高い作業性を確保します。S-TYPEは,回転慣性機構,ブレーキ機構を独立して設置した高性能タイプです。C-TYPEは,回転慣性機構とブレーキ機構を一体化して設置したコストパフォーマンスタイプです。B-TYPEは,ブレーキ機構のみを設置したローコストタイプです。また,本システムを水平免震床システムと組み合わせることで,3次元免震床システムを実現します。

主な結論

地震時の上下動に対する免震効果をシミュレーション解析により確認しました。いずれのタイプでも,直下型地震の1995年兵庫県南部地震に対する免震効果を確認でき,それ以外の地震に対しても従来の免震床に比べて最大45%程度に応答加速度を低減できました。また,弊社技術センターの3軸振動台において性能確認実験を実施し,想定どおりの免震性能を有することを実証しました。実施適用の際には,要求性能や予算に応じて最適なシステムを選択することが可能となり,幅広いニーズに対応可能な上下床免震システムが構築できました。

*1 技術センター 建築技術研究所 防災研究室
*2 設計本部 構造グループ
*3 設計本部 構造計画グループ