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ICTを活用した現場支援のための流況予報システムの開発

ボスポラス海峡沈埋トンネルにおける活用事例

織田 幸伸*1・伊藤 一教*1・本田 隆英*2

Current Forecast System Utilizing ICT for Marine Construction Operations

Applied to the Bosphorus Immersed Tunnel Project

Yukinobu ODA*1, Kazunori ITO*1 and Takahide HONDA*2

研究の目的

トルコのボスポラス海峡は,日単位で不規則に変化する速い流速,塩水の逆流入による二層流など,複雑な流況を示すことが知られています。2008年9月に全11函の函体沈設が完了したボスポラス海峡沈埋トンネルでは,工事の安全性や施工精度を確保する上で,この複雑な流況を予測することが不可欠でした。そこで本研究では,現地観測の結果を逐次取り込んで流況を予測し,施工現場へ流況情報を配信する流況予報システムを開発しました。

技術の説明

流況予報システムには,速報性,堅牢性が求められました。そこで複雑な数値計算ではなく,1年間の長期観測の結果から気象と流況の関係をモデル化した応答モデルを開発しました。このモデルでは,最新のモニタリングデータを入力値として取り込むことが予測結果の精度向上に繋がるため,ICT(情報通信技術)を活用してオンラインでデータを取り込み,またインターネットを通じていつでも予測結果が参照可能なシステムとしました。これにより,24時間の連続稼働が可能となり,また日本とトルコという遠隔地でのシステム開発・保守が可能となりました。

主な結論

本システムでは,現地の観測データ,気象予報結果,予測の配信データなど,取り扱うデータの形式が多岐にわたり,またこれらのデータを24時間連続的に取得・配信する必要がありました。そこで無線,VPN,E-mail,Webサーバーなど,複数の通信技術の組み合わせにより情報伝達を自動化し,システムの連続稼働を可能としました。実際の函体沈設作業では,沈設作業継続時間(36時間)の間に流況が施工可能限界を超えないことを,施工開始前に本システムにより確認しており,本システムは施工の安全性・精度を確保する上で重要な役割を果たしました。

*1 技術センター 土木技術研究所 水域・環境研究室
*2 東北支店