ごあいさつ
河村 壮一

ここに大成建設技術センター報第41号をお届けします。

本年7月に開催された北海道洞爺湖サミットでは,太陽光発電や氷蓄熱システムなど,様々な日本の環境技術・商品が紹介されました。日本は2度にわたる石油危機を乗り越え,世界最高水準のエネルギー効率を実現しています。このサミットを通じて,地球温暖化問題の解決に日本の技術が世界規模で普及し,展開する足掛かりができたのではないでしょうか。

当社でも,省エネルギーや新しいエネルギーの供給など,温暖化の進行を抑制する技術開発を推進しております。
2006年7月から運用を開始した大成札幌ビルは,スーパーエコビル第1号として様々な独自の先端技術を導入し,CASBEE(建築物総合環境性能評価システム)で最高評価のSランクを取得いたしました。エネルギー削減率は,2007年度の運用実績で41%を達成しております。同ビルに適用された省エネ技術など,CO2削減や地球温暖化対策に関連する技術を,本号でご紹介いたします。

建設業は構造物をはじめ人々が生活するための良好な環境を構築することが使命であり,建設活動で排出されるCO2量の把握・分析・削減対策は今後ますます重要となります。建設工事で発生するCO2は総排出量の約1%に過ぎませんが,住宅・ビル等に用いる建設材料の製造や供用時のエネルギーに由来するCO2は,全体の約30%を占めるとされています。これからの建設活動においては,構築物の省資源化・長寿命化・省エネルギー化と高い経済効率を目指した技術がより重要となることは自明です。

当社では,1990年代から,コンクリート及び鋼材の高強度化とその活用に取り組んでおります。マンションなどの高層化や長スパン化を実現する超高強度コンクリート,及び薄肉・軽量の道路橋などを実現する超高強度繊維補強コンクリート(ダクタル)はその代表例です。これらの技術は,まさに省資源化・長寿命化につながる技術であり,既に多くの施工実績を有しております。

近年,温暖化対策として,カーボンニュートラルなバイオマス資源に関する技術に関心が高まっています。当社では,従来の建設業の枠を越え,無加水方式によるメタン発酵法や,稲ワラやススキなどのセルロースバイオマスを原料としたバイオ燃料に関する研究などにも,積極的に取り組んでおります。

これらの新技術を活用して環境負荷を低減し,持続可能な社会資本を構築することは,私どもに課せられた大きな使命であると認識しております。

当技術センター報第41号では,「CO2削減・地球温暖化対策技術」と題した特集を組み,これに関連する18編の論文を掲載しています。また,それ以外にも,様々な当社の先進技術についても紹介させていただきます。

皆様におかれましては,この技術センター報をご高覧いただき,ご指導ご助言を賜りますとともに,ご活用いただくようお願い申しあげます。