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液状化地盤上の盛土耐震補強技術の開発

藤原 斉郁*1・森川 義人*2・堀越 研一*1

Development of Embankment Reinforcement Method to Counter Earthquake-Induced Ground Liquefaction

Tadafumi FUJIWARA, Yoshito MORIKAWA and Kenichi HORIKOSHI

研究の目的

構造物の耐震設計では地震時における損傷の程度や変形量を予測する性能規定化が進められており,地盤の分野においてもその必要性が高まっています。この場合,従来の耐震補強は地盤の液状化や変形を許さない考え方であるのに対し,ある程度の変形を許容しつつ地盤としての要求される機能確保が必要となります。このことは,道路や鉄道などの線状構造物ではネットワークとしての機能維持を重視した考え方であり,費用対効果の点でも合理的な手法と考えられます。本研究では,液状化地盤上の既設の盛土構造物を対象とし,コストパフォーマンスに優れた耐震補強法の開発を目的としました。

技術の説明

道路や鉄道など盛土構造物に要求される機能を維持するためには,ある程度の沈下は許容しつつ盛土体の形状を保ち,盛土天端部の破壊を防ぎ延長方向の平坦性を確保することが重要となります。そこで,本研究では地震時において盛土構造物が破壊に至る過程の挙動に着目し,さらに実施工での施工性や施工費用を考慮し,盛土法面の抑え部と基礎地盤内の改良体を接続した耐震補強法を考案しました。

主な結論

本補強法は,液状化地盤内に改良体を配するなど新規性が高く補強効果を確認する必要があることから,地盤の液状化分野で実績のある遠心力載荷模型実験を実施しました。その結果,無補強で盛土が破壊に至る実験モデルに対し補強を施すことにより,盛土天端部に損傷が見られないなど補強効果が確認されました。また,同時に設計法を確立する上で重要となるアンカー張力のデータも取得することができ,今後はこれらを含めた定量的な評価を行ない,本補強法の実用化を目指す予定です。

*1 技術センター 土木技術研究所 地盤・岩盤研究室
*2 土木本部 土木技術部