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地震動解析のための大規模FEMプログラムの開発

来るべき巨大地震の長周期地震動を予測する

吉村 智昭*1・山本 優*1・七井 慎一*2・長島 一郎*1

Development of Large-scale FEM Program for Seismic Wave Propagation Simulation

Prediction of Long-period Ground Motion Excited by Great Earthquakes in Near Future

Chiaki YOSHIMURA, Yu YAMAMOTO, Shinichi NANAI and Ichiro NAGASHIMA

研究の目的

21世紀中頃にも起こると考えられている東海地震・東南海地震・南海地震といった巨大地震では,長周期地震動が発生し,遠方の平野まで減衰せずに伝播し,平野の堆積地盤の三次元構造により複雑に増幅され,超高層ビル,長大橋,石油タンク等の固有周期の長い構造物を大きく揺らすと予測されます。本技術は,大都市が広がる平野規模の地盤をモデル化し,巨大地震の地震波が複雑に伝播する様子をスーパーコンピューターで数値シミュレーションし,構造物の安全性を検証するための精度の高い設計用地震動を計算します。

技術の説明

当社では,これまでカーネギーメロン大学の地震動解析プログラムを導入して,地震動シミュレーションを進めてきましたが,今回その次世代プログラムとして,当社独自の大規模FEMプログラムを開発しました。開発したプログラムは,次のような特徴があります。
 (1) 並列計算により,数億の要素数を有する巨大な地盤モデルを解くことができます。
 (2) 六面体・五面体要素を使うことができ,大幅に要素数を減らすことができます。
 (3) レイリー減衰を導入して,地盤減衰の設定の自由度が増しました。
 (4) 複数点震源のほか,領域縮小法による地震動入射が可能です。

主な結論

本論文では,新規開発したプログラムの概要を紹介します。単純なモデルで,理論解と比較して正しい結果が得られることを確認しました。さらに,適用例として,南海トラフ沿いの軟弱堆積層を考慮した紀伊半島南東沖地震のシミュレーションを行い,観測記録と対応する結果が得られることを示します。今後,本プログラムにより,関東から四国沖にいたる1000km程度の地盤をモデル化し,東海地震・東南海地震・南海地震が同時に発生した超巨大地震の評価などに適用していく予定です。

*1 技術センター 建築技術研究所 防災研究室
*2 技術センター 技術企画部 情報技術室