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ネットへの給水による施工段階での暑熱緩和に関する研究

仮設事務所における二酸化炭素排出削減の検討

梅田 和彦*1

Research on Mitigation of Hot Climatic Environment under Construction by using Net with Capability of Water Supply for Cooling

Investigation on Reduction of Carbon Dioxide Emissions in a Temporary Field Office

Kazuhiko UMEDA

研究の目的

近年、地球温暖化が大きな社会問題となっています。建築や土木の施工段階においても、温暖化抑制を目的として、二酸化炭素の排出削減が重要となっています。
本研究では、濡れた工事用ネットによる施工段階の暑熱緩和を目的として、工事用ネットの最上部から給水して全体を濡らした状態の蒸発冷却効果を屋外実験で確認して、建設工事現場の仮設事務所における冷房に起因する二酸化炭素(CO2)排出削減について検討を行いました。

技術の説明

工事用のネットを水分蒸発媒体としてより糸に導水して流下させれば、流下する過程で水分が蒸発してネットが気化熱で冷却されることや、ネットの目合いを通して風が通過すると水分蒸発が促進されて冷却性能を向上させることが可能です。
検討した対策は、仮設事務所に併設した枠組足場の外側に張ったネットの上端から、枠組足場の高さにあわせた上下方向の均等間隔に給水管を設置してネットに給水する方法です。この方法は、通常の仮設工事作業と同様に構築から解体撤去までが容易で、繰り返して使用が可能です。また、施工時の枠組足場と工事用ネットが構成部材なので、通常の仮設工事と同様のネット張り作業で構築できます。

主な結論

本研究では、ネットへ給水して全体を濡れた状態にした場合の熱特性を屋外実験で確認しました。さらに、仮設事務所に適用した場合の冷房負荷とCO2排出量の削減効果を計算で評価しました。主な知見は、以下のとおりです。
1)ネット全体が濡れた状態になると、ネット近傍の気温を約1.5℃下げます。
2)ネット給水で仮設事務所の冷房負荷を約1割削減できます。
3)単位床面積あたり約2kg-CO2/m2の二酸化炭素の排出削減が可能です。

*1 技術センター 建築技術研究所 環境研究室